皐月と涼
「……やる事は分かるな、浜野」
「はい」
皐月と涼は頷き合うと二人、左右に別れた。戸惑う時雨だが涼を狙ってきた。涼と時雨の戦いを見ているつもりはない。皐月は攻撃を仕掛ける。
「行くぜっ! ディ・リーザスト・ルメイク・フリザクト」
魔法陣から今までとは比べ物にならない程の巨大な氷の塊が時雨目掛けて飛ぶ。時雨は間一髪という所で避け、氷の塊は地面に突き刺さる。
「……フンッ」
「……まだまだ相手をして頂きます、時雨さん」
時雨を引き付けている間、皐月は再び走る。そして立ち止まると同じ魔法で攻撃を繰り返していった。何度も繰り返していくと地面には時雨を囲むように巨大な氷の塊が突き刺さっている。
「…あいつら、時雨を追い詰めたのか?」
「……そうみたいですが」
「……どういうつもりか分かりませんが、こんな物では僕を倒せません」
「それはどうでしょう…リ・ヴォルティス・ディ・レーシック」
浜野の雷魔法が時雨の頭上から落とされる。
「なっ、これは! グアアアアアアアッ」
氷の塊で逃げ場を失った雷はより強力な力になって時雨に遅い掛かる。爆風が視界を悪くする。だが、確かな手応えは感じていた。
「よし。決まったぜ」
「やりました! 皐月君」
涼は顔の横に手を持ってくる。察した皐月はうねりながら、顔を赤くさせながらハイタッチをした。
「ほー。やるな、あいつら」
「良い作戦です……ね、晴人君?」
「そうですね」
「ハッ! そうだ、兄貴」
皐月は思い出したように悠真に駆け寄る。立つのもやっとな悠真に皐月は肩を貸す。皐月の表情はどこか楽し気だ。
「兄貴、大丈夫っすか?」
「…あぁ。 それより油断するな…まだ、終わった訳じゃない」
急に風が騒ぎだす。風が渦を巻くように集まっていた。爆風が消え、時雨の様子が見えた。が、その光景は余りにも信じがたかった。
「………風が………震えている」
「えっ? 忍、それって」
「あ、あの攻撃でも倒せないのかよ!」
「……クッ」
冷や汗が頬を伝う。まるで絶対的恐怖がここにあるかのように。全身が震えて思考も鈍る。体験した事もないような恐怖が皐月達を襲う。
「………ダメですよ、そんな攻撃じゃ」
時雨を中心に狐火が踊り、時雨の尻尾は主を守るかのように覆っていた。無数の狐火と自在に三つの尻尾を揺らす時雨はもはや兵器だ。
「尻尾が…三本」
「甘いよ、悠真。 ここに居る者は全員殺す」
そう言って時雨は口角を上げた。
「り、龍王様! 時雨様が大変です」
一方。急いで帰って来たリンは龍王の姿を探していた。が、家の中を探しても見付からない。
「あうう。こんな時に一体どこへ……ん?」
ちゃぶ台に置かれていた紙を手に取るリン。読む内にリンの顔が青ざめていった。
「うわわわわ…た、大変だぁぁ! まさか。龍王様ったら……こんな時にナンパに行くなんてぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
龍王の助けは来ない。ここは悠真達が何とかするしかないのだ。




