時雨の力2
本気になった時雨は凄まじい程の殺気を放っていた。近付けば殺気の刃が体に突き刺さるような痛みすら感じる。今まで笑顔だった分、笑顔が消えると恐ろしく怖い。
「………これが時雨の本気か」
「えっ…悠真すら時雨さんの本気を見た事がなかったの?」
朱里の言葉に悠真は黙り混む。悠真だけでは時雨の本気を引き出す事が出来なかった。その事が悠真にとって悔しかった。
「……ッ、時雨の本気は俺も知らない。まずはそれぞれ様子を見ながら距離をと――――」
「そんな事をしていたら、僕は倒せませんよ」
時雨は瞬間移動をしたように一瞬で悠真の後ろに回っていた。悠真は受け身を取るがそれより先に時雨の体術がモロに当たる。
「―――――ぐあっっ!」
吹き飛ばされた悠真は近くの木に直撃した。それをただ唖然と見ていた朱里、皐月、涼だがすぐにまた時雨を見据える。木に直撃した悠真はフラフラしながら立ち上がっていた。
「……よくも兄貴を! ディ・リーザス・ル・フリード」
「あっ…ダメよ、皐月君!」
朱里の制止を聞かずに詠唱を唱える皐月。だがすぐそこにいた時雨の姿は既になかった。
「ぐっ、“cancel”」
詠唱破棄をした皐月だが、またすぐには魔法を使えない。これで皐月を守る手段は消えた。攻撃がどこから来るか分からない恐怖で冷静さを失っていく。
「また考えも無しに突っ走るつもりですか?」
時雨の声が聞こえ、目の前に姿が見えた。このままでは悠真と同じく吹き飛ばされる。だがcancelでしばらく魔法は使えない。
諦めかけた時だった。目の前に小さな背中が見えた。その背中はすぐに朱里だと気付いた。
「…なっ!」
ヒュュュ…バァァァン!
朱里と皐月は木への衝突は避け、地面を何度も転がって止まった。体中がボロボロだが少し鍛えていた皐月は無事だった。すぐ体を起こして隣に倒れる朱里に視線を写す。朱里は気を失っているのか、動かない。
「………これも、貴方が招いた結果ですよ」
「…くっ」
「援護します、皐月君」
涼も戦闘体勢に入る。本気を出した時雨とまともに戦えるのは皐月と涼の二人だけだ。倒すとなれば、二人が協力しなければ勝てる可能性はゼロだ。
「…………フッ…………おい、浜野。気は乗らないがここは仕方なく協力だ」
皐月の口から協力という言葉が出て驚く涼だがすぐ縦に首を振る。
「……ようやく楽しめそうですね」
皐月と涼の連携は上手くいくのか、そして時雨の秘めた思いとは?




