人間の姿の魔物
現れた少女は見た感じ普通の人間だ。だが、この森にいる以上は魔物。戦闘モードに入るがやりにくそうだ。
「……どういう事ですか! これは」
「…失礼な! 僕にはリンって名前があるんだ。それに僕は人間じゃなく、ワーウルフさ」
少女は胸を張って言う。だがおかしい。魔物だが魔物の姿をしていない。例えば、この少女なら狼だが少女は狼の姿をしていない。
「……あなたは半妖ですね」
「―――!」
晴人の言葉にリンは少し反応した。魔物=妖怪で人間と妖怪の子供である半妖は少なくない。だが半妖は完全な魔物に狙われやすい為、殺される事が多い。
「…半妖?」
「半妖とは人間と妖怪が結ばれ、子供を作るとその子供は稀に妖怪の血を受け継ぐんです……その子供は半妖となります。分かりましたか、朝日?」
晴人が説明するが朝日は首を傾げたままだ。そんな朝日にため息をつく晴人だが、すぐにリンへ視線を向ける。
「……お前が言った通り、僕は半妖だ。でもお前らみたいな人間に負けない。おい、そこのバカ顔のお前……掛かって来いよ」
リンが挑発したのは朝日だ。バカ顔と呼ばれ殺気立っている。
「だれがバカ顔だぁ! 後で無理矢理にでも謝らせてやるぜ。レ・ギィウス・ディ・エバージョン」
そう詠唱を叫ぶとリンの真上に黄色の魔法陣が浮かび上がる。浮かび上がると同時に構築も終わった。やっとリンは魔法陣に気付くが遅い。魔法は発動した。魔法陣から凄まじい雷が落ちる。砂煙が発生してリンの様子が見えない。
「や、やり過ぎです!」
「…そうかも」
いくら魔物相手でも強力な雷魔法はまずかったかもしれないと後悔していた。やがて、砂煙は収まりリンの姿が見える。
「……へへん」
「な、バカな!」
完全に当たった筈の雷魔法だが、リンには傷1つ無い。当たってないのかと思ったが違う。リンの足下の地面は大きく抉れていて雷の衝撃の強さがよく分かる。
「……人間よりは防御力が高いんですね」
「そうだ。えーっと、お前達の修業に手伝ってやらなくはないぞ! 皆して掛かって来い」
リンは両手を腰に当てて自信満々に言った。晴人達の修業はまだ始まったばかりだ。
◇◇◇
晴人達と反対の道を走る悠真達は後ろで聞こえる爆発音に焦りを感じていた。
「あっちは始まってんのか」
足を止める皐月はかなり汗だくだ。皐月だけじゃなく、他もだ。ただ悠真だけは涼しい顔をしていた。
「……焦るな。あっちは恐らくリンの可能性が高いがこっちは強敵だぞ」
「……え?」
「――――おやおや、さすがは悠真だ」
ここに居る者達以外の声がして声の主を探す。主は木の枝に立っていた。歳は悠真より年上で背も高い。それに美形だ。青年は涼しい顔で微笑んでいる。銀髪に左目が淡い碧で右目は黄色。服は修行着だ。
「あ…いつの間に!」
「気を付けろ。あいつは強い」
悠真の口から強いと言わせる相手が目の前にいる。青年はこれから始まる戦いに微笑む。悠真達の修業も始まってばかりだ。




