賭け
森の中に入って既に30分が経過した。だが、どれだけ歩いても魔物と会えない。どんどん雰囲気が悪くなる。
「……なぁ…―――――!」
「ゆ、悠真」
朝日、朱里と何かの異変を感じ取る。もう見慣れた森の雰囲気が変わり狂気に満ちていた。近くに魔物がいる、全員が戦闘モードに入る。
「………晴人先輩、二手に別れましょう」
「なるほど。分かりました!――――氷乃、朝日、忍。着いてきて下さい」
晴人がそう言うと素早く悠真達と反対側へ走って行く。これは賭けだ。魔物が晴人達の方へ行けば悠真達は他の魔物を倒しに行く。魔物を多く倒さなければいけない為、この賭けに出た。
「さすが兄貴です!…さて、魔物はどっちを追い掛ける?」
皐月は走りながら後ろを振り向く。カサカサと音は段々と遠ざかっていった。どうやら魔物は晴人達の方へ行ったようだ。
「ふぁ~。先輩達の方に行ったね」
「…休憩するのはまだ早いぞ。俺達も魔物を探す! このペースで行けば二体は倒せる」
「神崎君の言う通り、頑張ろう朱里ちゃん」
こうして悠真達も再び走る。
「へへん! 俺達の方に来た事、後悔させてやんよ」
一方、晴人達は邪魔が入らないように十分の距離を保ちようやく戦闘に入る。未だに魔物の姿は見えないが気配は感じる。
「…うるさいです、朝日君!……それで作戦はどうしますか」
「まずは相手に出てきて貰わないと意味がありません……朝日、あなたの魔法で引きずり出して下さい」
「おう! この俺に任せ――――」
「…その必要はありません」
朝日の言葉を遮って聞こえた少女の声。だが全く気配は無い。
「ふふっ……ここです、ここ」
間近に聞こえた少女の声に自然と視線は集まる。見ると、色黒の肌をした少女が一人、立っていた。




