不穏な影
辺りはすっかり静まり満月が照らす中、どこかの建物の屋上に人影が見える。男はスーツを着ていてサングラスを付けていた。
「…………」
男は無言でポケットから携帯を取り出すと電話を掛け始める。
『プルルルル……もしもし?』
何回かのコールでようやく相手が出た。相手の声はまだ幼い印象を受けるが、たった一声発しただけで男の周りがピリピリとまるで空気が震えているかのようだ。男は慎重に返事をする。
「もしもし、紅蓮様。目標の調査に関しての報告なのですが……今でもよろしいでしょうか?」
男は言い終わると相手の返事を待つ。相手は考えているのか、沈黙が続く。あまりの恐怖に勝手に汗が出てくる。まるで自分が処刑されるかのような、そんな恐怖が男を襲う。
『……今?今、何時だと思っているのかな』
相手の返事に恐怖のあまり言い返せずにいると再び相手が話し始めた。
『…まぁ良いや。それで報告は?』
「あ、はい!目標は紅蓮様の言った通り精霊王と契約しているようです。学園内はかなりガードが高く、入るのは難しそうです」
『ふぅん………へぇ、本当に契約したんだ』
「…っ」
相手の言葉に男は全身に鳥肌が立った。その場に居なくても分かる、相手は笑っている。
『…あ、ごめんごめん。ちょっと嬉しくてね、それで目標については今後も監視を続行という事でよろしくね』
「は、はいっ!こんな夜中に失礼致しました紅蓮様」
電話を切ると全身の力が抜けたように地面に座り込んだ。男はそのままの態勢で満月の月を見つめた。
「ハァァァ……危険な上司だ」
男の悲痛な叫びが空に響いた。
次の日
「……なんだ、今日はやけに機嫌が良いな」
今日は土曜日で学園は休みという事で悠真は少し遅めの起床だった。リビングルームに行くと明らかに上機嫌な朱里が立っていたのだ。
「あ、悠真!休みの日は外に出ないとね。私と涼ちゃんと氷乃先輩と買い物…いや、勉強しに行くんだけど悠真も行く?」
(…こいつ、今買い物って言ったぞ?)
「朱里ちゃん準備出来たよ…あ、神崎君も一緒に行くの?」
「いや俺は行かない」
そう言って悠真はスタスタと出て行ってしまった。そんな悠真を朱里は恨めしそうに見ていた。




