惨事の後…
トーナメント襲撃から3日が過ぎようとしていた。襲撃された会場は無残にも瓦礫の山となり、立ち入り禁止となる。行方不明だった東堂含むBクラスの連中は無事に発見された。誰もがいつも通りの生活に戻っていく中、前園だけは違った。
「……あーあ。朱理ちゃん、今日も出て来ないな」
朝日先輩が発した言葉に誰もが静まり返る。
あの襲撃以来、前園は部屋に閉じこもるようになった。それは浜野の件だろう。前園と仲が良かった浜野が禍罪の者で裏切り者だった…それはショックだろう。
「…………おい、悠真。こういう時は男のお前が優しく寄り添ってやるもんだぜ」
「……どういう事だ?」
朝日先輩の言ってる事が理解出来ない。
男は俺の他にも居る。朝日先輩なんて前園と仲もいいから俺より向いてると思うが…。
「…ハァァァァ。お前なぁ、ニブ過ぎだぞ」
「これは生徒会長命令です! すぐに朱理さんを慰めて来なさい!」
「…? で、でもそんな事…」
「…………」
講義しようとするととてつもない形相で睨まれてしまった。これは反論しないで従った方が良さそうだ。
「分かりました」
仕方が無い。
そう自分に言い聞かすと前園の部屋へ向かう。
ーーーーーーーーーコン、コン
ドアをノックしてみる。
中からの反応はない。
「…………前園…いる、のか」
小さめに声を掛けてみた。
数秒待ってみるがやはり反応はない。このままここに居ても意味は無さそうだ。
(………戻るか…)
踵を返して踏み出すと背後からガチャという音が聞こえた。振り向くとドアの隙間から顔を覗かせる前園の姿があった。
「…ま、待って悠真……その…入って…」
「………あぁ」
前園の部屋は一度も入ったこは無いが、前に浜野が綺麗だと言ってた気がする。部屋の中は清潔に整えられていて少し安堵した。
「………いきなり悪いな。氷乃先輩の圧力で様子を見に来たんだ」
「あ、圧力って。あはは」
無理に笑っているような、違和感を感じる。あまり寝れてないのか目の下にはうっすらと隈ができ髪もボサボサだ。
「…………私、ね。まだ信じられないの…………涼ちゃんが私を、私達を裏切るなんて! きっとこれは悪い夢なんだって………でも…もう…3日も経っちゃった…」
「……………」
何故だか今の前園は見てられない。
出会った事から今まで笑顔を絶やさず、お節介で。だがそんな前園のお陰で俺は変われた…気がする。
「………っ!」
前園が身体をビクッとさせる。
無理もない、前園の頭に俺の手を乗せているのだから。
「ゆ、悠真?」
「……前園。確かに浜野は俺達を裏切った、だが一番仲が良かったお前が浜野を信じてやらないのか?」
「……っ! で、でも。涼ちゃんは裏切ったんだよ? 次会ったらきっと戦いになっちゃうよ」
「……浜野はあんな性格だ。何か事情があるのかもしれないと考えたか」
俺の言葉に前園は「あ…」と声を漏らす。
「…私、私…涼ちゃんの事、信じてなかったんだ。親友なのに…」
「…………」
「……ありがとう、悠真。悠真が居てくれなかったら私ずっと閉じこもってた……私、涼ちゃんを信じるよ!」
前園の瞳が俺を見据える。
真っ直ぐとした目……いつも通りの前園だ。
「……あぁ、そう言えば。その格好は恥ずかしくないのか?」
「………へ?」
目をキョトンとさせて自分を見て固まる。
「……イヤアアアアアアア!! ゆゆゆ悠真! ごめん、ちょっと出て行ってくれる!?」
「……あぁ」
部屋を出ると部屋の仲が良かったから慌ただしい音が聞こえた。
「……ハッ」
なんだこの感情は。
……ホッとしてるのか?
「あれ悠真? 何してるの」
「……あぁ、悠那か。氷乃先輩の命令で前園の様子を見に来ただけだ」
「あー、なるほど。朱理ちゃん元気になってくれたみたいで良かった~」
悠那も何だかんだで前園と仲が良い。だから心配だったのだろう。
「ねぇ……悠真?」
「……なんだ」
「……………あはは、何でもないよ~」
何だったんだろうか…。
悠那は笑顔で笑いながら自分の部屋へ帰って行った。
「………俺も戻るか」
ーーーーーーーーこの時はまだ分かってなかった。自分の存在の意味を…
「…………………みーーっけた」
第二章、完




