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プロローグ
「こいつ、柊一族なのに魔法も使えないんだってさ」
「だっせー。こんな奴、柊一族に要らないよな」
当時十歳だった俺は同世代の子供からいじめを受けていた。大体は言葉の暴力だが小さい頃の俺には辛い現実だった。死にたいと思う事もあった。だけど死ななかった、それは母さんが居るから…でも現実は甘くなかったんだ。
「……お母さんが……死んだ?」
それはあまりにも突然の事だった。柊一族は五本の指に入るような名の知れた名家。それ故に妬みも酷かった。噂では魔法使いに殺されたんじゃないかと囁かれていた。
そして悲しみが抜けないまま母さんの死から一年が経ったある日、死の宣告のような言葉を柊一族当主、源十郎から告げられた。
「………お前はもう要らん。どこでも好きな所へ行くがいい」
その時、頭が真っ白くなりどうしたかは覚えていない。ただ、俺は一人ぼっちになったんだ。