karma2
すいません、めちゃくちゃ遅くなりました!
ジ、ジョーカー……
望んでいた展開ではあるが、少し早い様にも思えた。
「翔ちゃん……」
千里が半泣きの顔を見せる。
狂おしい表情だ。
「大丈夫だ。安心しろ」
俺は周囲の者に悟られぬよう、小声で言った。
千里はぎこちなく頷くと、自分のカードに目を移した。
………しかし、待てよ?
今思えばこのルール、ややこしいところが多い。
一回のゲームの勝者が真の勝者になるのか。それとも、数回ゲームを繰り返し、それに勝ち残った者が真の勝者なのか……自分は今まで後者だと思っていたが、前者の場合、速攻で敗者が決まる……一回のゲームで全てが決まるのだ。
くそっ。どっちなんだ。
係員にでも尋ねようと思ったが、生憎ここには居ない。
……となると。
「皆さん、一度時間を取らせて頂いても宜しいですか?」
俺は真剣な表情でゲームに興じる人々全員を見回した。
良さそうなので、話すことにする。
「僕は今思いたったことなのですが。このゲームのルールについてです。このゲームの勝ち負けのルール、ババ抜きの勝者は生き残り、敗者には死を。このルール、皆さんはどちらを考えましたか? 一、ゲームを数回繰り返し、最終的な勝者が生き残る。二、一回のゲームで勝敗を決定する。僕は今さっきまで、前者だと考えていました。もし、一回なら我々が生き残れる確率はかなり低下します。皆さんは前者•後者、どちらですか?」
一度の沈黙。
そして直ぐに返答があった。
「俺は後者だと思っていた。この一回で全てが決まる。生きるも死ぬも」
家族連れの父親だろう。
「家族には生きてほしい……せめて娘だけでも。だから、俺は真剣にやってる」
俺は胸がじんと痛むのを感じた。
こんな理不尽な殺戮ゲームに……こんな温かい人々が巻き込まれているなんて。
「ありがとうございます。他の方々は?」
俺は他の人間にも目を移らせる。
「ん! そこの男の子」
俺は手を小さく挙げていた男の子を指名した。
男の子は自分が当てられたのに気づくと、にいっと笑顔を作り言った。
「みんな……みんな死ねば良いんだ。この地球に生きる愚図共は、み一
んな!!!!」
これには皆呆気にとられた。
こんな少年が危機的状況の中でこんなことを言うとは。
ひょっと気が狂っているのかもしれない。
しかし、隣に座る親は何も言おうとしない。
俺は我慢出来なくなってその親に問いた。
「あの……お子さんが…」
すると親は、悲しそうな顔をして口を開いた。
「この子は、私の姉の子供なんです。姉は、その夫と二年前他界していまして。殺人事件で死んだんです……それもこの子の目の前で。それ以来、様子がおかしくて……」
成る程……
「あの……そんな事情があったとは…」
「いえ、いいんです。だんまりしていた私にも否はありますし」
世の中が最近乱れているのかもしれない。でなければこんな精神状態の子供はそういない。
そして、そんな可愛そうな子供を更にどん底に陥れる様な真似をしたこのゲームを許さない。