濁流
ガードマンが取り出したのは鉄パイプの様なヌメッとした棒であった。
ガードマンはそれを改札とプラットホームの境目の何かの隙間に差し込んだ。
嫌な予感しかしない……
鉄を持っているガードマンが警備していたガードマンに何やら囁いた。すると警備ガードマンはすぐさまプラットホームからどいた。
「……何を…?」
プラットホームに残された人々は、不穏な空気を感じ取っている。
「ま……まさか……」
翔はあらかた想像していた……最悪の事態を。
それはつまり、閉じ込…ガララララララ!
……………………………………
プラットホームの人々は唖然とした。
何故なら、ガードマンが改札口の境目から鋼鉄のシヤッターを下ろしたからである。
事態をようやく飲み込めた人々が、一気にシヤッターへ押し寄せる。
翔は荒れ狂う人波から千里をかばった。
「お、おい! 開けろ!」
誰かがシャッターに向かって叫んでいる。
左右のプラットフォームでもシャッター前には、人だかりが造られる。
その時、不安と恐怖を抱える人々の耳に、機械的なアナウンスが流れて来た。
「皆様、本日は○○駅におこし下さいまして、誠にありがとうございます。これより、ゲーム説明に入りますのでお静かにお願いします。騒いだ場合、それ相応の罰、死んで頂きます」
最後の一文で、皆が静まり返る。
人々はこれから起こるであろう恐怖に身を震わせた。
「皆様にはこれより、生き残りを懸けてあるゲームを行って頂きます」
「ゲーム……だと?」
翔はぼそりと呟いた。
同じようにあちこちから困惑した声が上がる。
「お題ゲームは{ババ抜き}です」
「はぁ? ババ抜きって、あのトランプのか?!」
翔の隣に立つ家族連れの父親であろう人物が言う。
「マジ馬鹿げてる。時間を返せよ。どうせTVのドッキリか何かだろ?」
一組のカップルの彼氏だ。
「出られねーって言っても、ここからは出れるだろ?」
「シン君! 止めて!」
彼女が男を止める……が、男は言うことを聞かずに、線路を降り、フェンスを登り始めた。
翔は「なるほど」と相槌を打つ。
しかし、男の試みは呆気無く破られる。
男がフェンスのてっぺんに足を掛けたその時。
たたたたたと靴でアスファルトを叩いたような音がした。銃声だ。
途端に、フェンスを乗り越えようとした男の体から大量の鮮血が飛び出た。
そのまま仰向けに落下していく。
「キャーーーーーーー!!!」
誰かが叫ぶ声、胃の汚物を吐き出す音。パニックパニックパニックパニックパニックパニックパニックパニックパニックパニックパニック
プラットホームはパニックの嵐と化した。人々が逃げ惑うも、行く先がない。
あるものが線路へ飛び降りた。それに続く人だかり……だが、それを遮る者がいた。
それは、銃を持ったガードマン数十人であった。
「皆様、直ちに引き返して下さい。さもなければ、私共はあなた方を射殺しなければならなくなる。……構えろ」
真ん中にいたガードマンが話し終えると、数十人のガードマン達が一斉に銃を構えた。
すると、先程の騒ぎが嘘のように静まり返る人々。
再びアナウンスの声。
「皆様、落ち着いて自分のいた元の、元の乗り場へお戻り下さい」
淡々と述べるその口調は、最早常人の精神ではない。
翔と千里は、動くことが出来ずにその場に立ちすくんでいた。
「これはまた……物凄いことに……」
翔が緊張感の無い口調で言う…が、翔にすがりつく千里はしゃくりを上げて泣いていた。「千里、恐がらなくていい。俺がいる」
翔は先程からそればかり言っていた。それしか、言うことがなかった。
「皆様、落ち着きましたね?」
女の声のアナウンスがまた掛かる。
「なお、連帯責任として先程死亡した男性の彼女様も射殺させて頂きます」
「……………………………」一同が言葉を無くす。
ガードマンが現れ、女性にマシンガンを向けた。
「お許しを」ガードマンは女性に銃弾を放った。どちゅっと女性の脳を銃弾が貫通した。すると、女性の後頭部がガバッと開けてそこから脳味噌や骨が飛び出した。
「うわあああああああ」「きゃーーーーーーーー!!」またもやプラットホームは騒然とする。
当たり前であろう。人が一人、しかも射殺という手口で死んだのだから。
翔は思わず目を伏せた。見ていられなかった。
「ご安心下さい、皆様。ゲームが開始されますと、連帯責任のルールは無くなります。それまでに、いらぬことを犯した場合のみ有効となります。それではルール説明に移りましょう」