殺人
人を殺し、生き残る。それが私達に課せられた課題。
気を抜けばすぐに殺られる。今までの全てが崩れ去る。それだけは防がなければ。
私達に与えられた武器は銃であった。しかし、ただの銃ではない。
その名を【小型放射式粒化銃】。
命中すると、相手の体を血も残さず粒子レベルまで分解出来る。欧米で開発された物だが、まだ実験段階らしい。
「これで……戦う……」
手の中の確かな重さと、金属の無機質な冷たさがじんじんと波打つ。
悪い予感がする。何か、普通ではない何か………
『皆様、これより列車へと乗車して頂きます。尚、お乗り頂くのは真ん中のレールに来た列車です。両端の生き残ったお二方は移動して下さい。まもなくです、暫くお待ち下さい』
女の冷ややかな声が耳を通り抜ける。
女が全て言い終えると、ブチッと微かな音がして、アナウンスが途絶えた。
両端の生き残った人間二人が中央のプラットホームにやってきた。三人共、顔を合わせない。
始まりは近い……何としても……生き残る。必ず。私はそう心に誓った。
それから数分後、プラットホームに白い特急列車が滑り込んで来た。
甲高い音がプラットホーム内を満たす。
三人は無言で散り散りに乗り込んだ。
千里も暗黙の了解で二人より一番端の車両に入った。
列車のドアが閉まる直前、再びアナウンスが流れた。
『戦いのスタートは列車が走り出し、◎○駅を通過してからです。屋根の上にはその時に乗って頂きます。では…健闘を祈ります』
「発車します。ご注意下さい」
運転士の皆同じに聞こえる声が、プラットホームと車内の両方に流れた。それと同時にドアが素早く閉まる。
ゆっくりのっそりと列車が走り出す。滑らかな機会音が鼓膜を揺らし、集中力を途切れさせる。
うるさい。
「運転士……もしかすると今なら運転士を消して脱出という手もある……」
行ってみよう、と千里は先頭車両を目指した。
丁度良いことに、先頭車両と生き残る二人のいる方向は真逆なので、出会すことはない。
それに、まだ指定された駅も通過していないので安全だろう。
先頭車両に着いた。他の車両と何ら変わりは無い。千里は運転士のいるであろう場所を凝視する。しかし、運転士の姿は見当たらない。
「………? おかしいな……運転士さんがいるはずよ……?」
千里は不審に思い、無意識に銃を構えていた。そしていっきに運転席まで走る。
「え………?! 運転士が……いない?」
運転席は藻抜けの空。替わりに大きなコンピュータの様な物が操縦部に取り付けられている。
ということは、先程の声も機会音声で、運転しているのはこのAI(人工知能)のみ……人は乗車していない。
逃げ出すことは不可能なわけだ………
∞∞∞∞∞
その頃、別車両。
「へっ、さっさと全員ぶっ殺して、家に帰るか。あいつと付き合ったせいで、こんなろくでもねー目にあっちまったぜ。殺すとなると……やっぱり一番最初はあの弱そうな女だな。てっとり早いし、武器も二丁手に入る。軽いもんだな……」
「そうかよ、だったら今から死ぬならどうする? お前の作戦も失敗に終わる」
「な?!」
男は背後からの急な声に反応しきれなかった。
頭部を執拗に叩かれ、床に伏した。
「うげっ!」
顔面が床に激突し、鼻に濁った痛みが走る。
「これが、武器か? 大層なもんだ」
「うぐ……ちきしょ…うべ!」
男は、攻撃者の足を掴んで転かそうとしたが、直ぐ様顔面に一発見舞われた。
「大人しくしてろ、試し撃ちだ」
攻撃者は転がる男に銃口を向けた。
その時、男は見た。相手は、あの時生き残った二人以外の人物だということを。
「て……てめぇ……何者だ……?…う?!……うううあああああああああ……………………」




