表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

前兆

何とか書かせてもらえました。

ショートストーリーです。

 {ババ抜き}:二名、またはそれ以上の人数で行うトランプゲームである。

 トランプを等分に配布し、同じ数字のカードは棄て、その手札で始める。

 時計回りもしくはその逆向きに、順に隣の人間の手札を引いていく。手札の数字が揃うと棄てても良い。

 最後に手札にババが残っていた者が敗者である。

諸君らの健闘を祈る……。

∞∞∞∞∞


 空には、うっすらと雲が残ってはいるものの、今日1日を過ごすのに支障はない。

 気温は9度と低く、薄着では外を出歩けない。

 この日、高校二年生の稲川(いねかわ)(しょう)は彼女と遊園地へ行くため、早起きをして、近場の駅で待ち合わせしていた。

 彼女の名前は大山(おおやま)千里(ちさと)

 翔と同じクラスで、高校一年の終わりから付き合い始め、今では学校内で知らない者はいない、カップルの一つだ。

 現在時刻は7時。待ち合わせは7時10分なので、少々早く来てしまったようだ。

 本来なら、電車に乗るのはもう少し遅くても問題無いのだが、今日は違った。

 今日は、<カップル•家族連れ優待デー>らしく、その名の通りカップルと家族連れは電車料金半額以下なのだ。

 しかし、当たり前なのかは分からないが、優待される本数や時間帯も決まっており、そのせいで今日はいつもより早く来なければいけないのである。

 

優待車両の発車が5分前のところで、千里が駅のホームにやってきた。随分眠そうだ。

 服装は、フード付きの白いジャンパーにフリフリのスカート。足にはピンク色のタイツを履いている。

 千里らしい、可愛らしい服装であった。

「おはよ、チサ。眠そうだな?」

 翔は苦笑しながら千里に話し掛けた。

「うー。おはよう」千里は目をゴシゴシこすりながら答えた。

 相変わらず可愛い、と翔は思いつつ千里の髪を撫でた。

 リンスの香りが仄に鼻をつつく。

いつもは恥ずかしくてしない、<手を繋ぐ>ということも、今日は周りがカップルだらけなので気にせず出来る。

 翔はそっと千里の手に自分の手を絡めた。

「! 翔ちゃん…」千里は一瞬驚いてから、赤くなって顔を伏せた。

 

翔は何気なく辺りを見回した。

殆ど……いや、全てがカップルと家族連れだ。

 優待がよっぽどおいしいのだろう。そして日曜日ということもあり、益々複数客が増えたのだろう。


「……それにしても遅いな……もう時間過ぎてるぞ?」

 翔は袖口を捲って腕時計を見た。

 既に二分以上のタイムオーバーであった。

「ダイヤが乱れてるんだね。休日だし、優待デーだしで」

千里が翔の腕時計を覗き込む。

「そっかー、そだな」

 翔はうんうん、と頷くと袖を元に戻した。しかし、それと同時に彼等の不穏な計画が実行された。


「お……おい! ここを通せよ! トイレ行きたいんだよ!」

プラットホームと改札口の丁度境目で起きた。

 金髪のカップルが改札口へ向かうのをガードマンらしき人物が足止めしている。

ガードマンの表情は堅く、口は真一文字にきゅっと結ばれている。

 そして更に後から数人のガードマンが現れ、何やらプラットホームと改札口の境目で作業し始めたではないか。

 家族連れやカップルがその様子を何事かと見守る。

 そしてそれは、ここだけではなかった。

この駅は、プラットホームが……乗り場が三つあり、翔逹のいる場所はその内の真ん中に位置する。

 左右でも、怒声が聴こえる。

どれも、ガードマンに向けられたものだ。

 それにしても、何故これほどの人数のガードマンがいるのだろうか?


 ついに、金髪の男がガードマンに殴り掛かった。

 誰もが、困惑の中でガードマンの安否を祈った……がそれは無駄に終わる。

 ガードマンはまるでボクサーの様に金髪の拳を避け、その腕を左手で掴むと自分の方へと引き寄せ、右拳の一撃を喰らわせた。

 それは正に一瞬の出来事であった。

「ぶぺっ!」と金髪は声を漏らすと、そのままプラットホームの中に転がっていった。

騒然とするホーム内。

ガードマンは金髪にこう吐き棄てた。

「死にたくなければ、大人しくしていろ」と。そう言うガードマンの眼はどこか悲しそうだった。

 「……し、翔ちゃん…」千里は怖いのか、翔に身を寄せてきた。

「大丈夫だよ、チサ。俺がチサに手出しはさせない」言うと翔は千里の肩をぐっと抱いた

しかし、どうなっているのだろうか。

ガードマンが一般人を殴り倒す。

普段なら有り得ないことだ。それに電車は一向に来ない。もう意味の分からないことだらけで頭はグチャグチャだ。


境目で作業していたガードマンに動きがあった。懐から鉄の棒のようなものを取り出したのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ