*おかえりなさい
「自分で探せるのなら構わんよ」
嫌味のない笑顔で発して玄関に向かった。
「!」
帰っちゃうの? もう少しいてほしいけど……そんなコト言えない。
「あの……父の納骨には……」
「参列を許されるのなら」
「是非、来て下さい」
「詳細はまた連絡してくれ」
上品な物腰で、傭兵と言われないと絶対に解らないその人は優しい微笑みを残して去っていった。
「……」
ソフィアは1人、ポツンとリビングテーブルに乗せられている木箱を見つめる。
溜息を漏らしフタを開いたその中には、白い陶器で出来た骨壺が納められていた。
「父さん……」
ここまで遺体を運ぶのは困難だったため、遺骨として父は冷たい陶器に入れられ還ってきた。ひんやりとする小さな壺を愛おしくなでたあと、隣に置かれているいくつかの物品に視線を移す。
「……」
遺骨と共に渡された父さんの遺品は携帯電話と小さな楕円形のプレート……兵士たちが首に下げるているやつだ。無事に死体だけでも還れるようにと、みんな下げているらしい。
軽い金属音は、元々の素材が汚れている事を物語っていた。
「父さん」
小さくつぶやいてプレートを両手でそっと包んだ。
「おかえり」