在来線に乗って
掲載日:2026/08/29
ままならない日々だから夢のように笑ってみせて
桃色の薔薇がささやいた
紅色を淡く淡くさせた黄桃
深緑の葉は振り袖に似て
一輪に綻ぶ
桃色の薔薇
桃色の薔薇の娘よ
手紙を書きひとの気配に秘しながら
抱き締めるように約束をした
夢みる胸の燈火は
在来線に乗って
ゆっくりと運ばれてゆけばいい
瀬戸内の海岸線を通り
蒼白い煌めきを貝殻で描くようにして
胡粉を滲ませてゆく藍の空色
コンビナートの煙突からは
濾過された真っ白な煙
海辺の風と話をするように
愛しい腕へと寄り添うと
桃色の薔薇の寝顔が咲いた
小さな棘も育ってゆく
生きている その一輪として
葉振り袖の合間に秘めゆく瞼の中に
輝きを秘めた黒い瞳へと
閉じたまま融合するから
棘は痛くならない
ひとつの夢を誰かとみているような
桃色の寝息が咲いていた




