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幼馴染がいろいろおかしい  作者: てんまる99


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7/30

懐刀もいろいろおかしい

俺は藍染春香を熱狂的に慕う連中、藍染親衛隊に、体育館へと呼び出された。

危機一髪のその時、体育館に見知らぬ女生徒が現れる。

昼休みの体育館。

校庭での生徒の歓声が遠く聞こえてくる。

日差しに差し込む室内は、やや蒸し暑い位だった。

普通なら部活や運動をする生徒が何名かは居るはずだが、今日は違った。

藍染親衛隊を名乗る物騒な連中が体育館を占拠している。


「藍染の名を語る暴漢共、この藤原が許しません」

体育館入口に立った女生徒はつかつかと体育館内に歩み入って来た。


女子にしては身長がある方だろう。

流れる漆黒の髪。

切り揃えた前髪から切れ長の目が覗く。

瞳はダークブルー。

一点を見据え、居合わす男達を気にする様子もない。


「おいおい、待てよ」

言いながら入り口近くの恰幅の良い親衛隊が女生徒に手を伸ばす。

その親衛隊は体格では女生徒より二回りほども大きい。

簡単に制圧できると思ったのだろう。

女生徒はそれを避けるように僅かに身を引いた。

と。

その恰幅の良い隊員は、ふわりと浮き上がり、背中から床に落ちた。

「あぐっ」

短い悲鳴を上げたまま身動きもしない。


「えっ?」

その場の全員が様々な意味で声を上げた。

あれは、合気道なのだろうか?

手を触れた素振りすら見えない。


「な、なんだ‥」

「大丈夫か??」

声をかけ数人の隊員が、慌てて倒れた隊員に駆け寄る。


その彼らも、女生徒に近付いた途端、ふわり、ふわり、とまるでぬいぐるみでも放る様に宙に浮いて地面に落ちた。

俺には魔法にしか見えなかった。


女生徒はそのまま俺の傍らへと歩を進める。通った後には倒れた隊員達が累々と横たわっていた。


「大丈夫ですか?」

俺の様子を見て、女生徒は尋ねる。

「“ふっ、これくらい何でもない”、と言いたいけど‥回復にはまだ少しかかりそうだ」

先ほどよりは大分マシにはなったものの、まだ世界がゆらゆらと揺れていた。


「そこで休んでいて下さい」

女生徒は俺とリーダーの間に立った。


「藍染家と事を構えるつもりは無いんだがな‥」

言いながらもリーダーはファイティングポーズを取る。

「おとなしくしていれば、見過ごした物を‥」

言いながら対する女生徒は半身に立ち、軽く片手を前に出した独特の構え。


「それは、できない相談‥だなっ」

言うと同時にリーダーは数発の鋭いジャブを飛ばす。

明らかに、俺の時に比べて格段に早い。

どうやら先程はあれでも手加減をしていたらしい。


女生徒は僅かに身体を滑らせて見事にそれをかわす。


だが、リーダーもそれは想定の事なのだろう。

一歩踏み込んだ鋭く短いステップから身体を捻り、女生徒のボディへアッパー気味のショートフックを放つ。

敵ながら流れる様な見事なコンビネーションだった。


女生徒は、何とその拳を後方に飛び下がりながらの回し蹴りで迎撃した。

“ズパアッン”

鋭い打撃音が響き、リーダーは壁際まで吹き飛ばされ、膝をついた。

弾かれた右手は麻痺しているのか、だらりと下げたままだ。


「藍染の懐刀‥これほどか‥」

リーダーは絞り出す様に呟いた。

高速のフックを後ろに飛び下がりながら蹴り落とすなんて並の技量では無い。

力量の差を悟ったリーダーが冷や汗を浮かべながら女生徒を見た。


「ま、まて、これを見ろ〜」

その時、俺の後方に居た細身の隊員が声をあげた。

手には自らのスマホを持ち、画面を示している。

そこには先程の女生徒の様子がややローアングルで映っていた。


「それが何か?」

怪訝な顔で問い返す女生徒。


「お前の派手なキックで下着丸見えだぞ〜」

隊員はニヤニヤと下卑た笑いを浮かべながら、ことさらスマホを振って見せた。


「そうですか?」

女生徒は意味が分からないと言った素振りで答えた。

「だ、だから、抵抗を止めて言うことを聞かないと、この映像を校内にばら撒くって言ってるんだ」

隊員は興奮気味に叫んだ。

対する女生徒は冷静に答える。

「人様に見せられない様な下着でも有りませんし、なぜ従わなければ??」

呆れた様に溜め息をついた。


「だっ、だから‥恥ずかしく‥ないのか?」

「別に?」


2人の会話にその場の全員が意識を奪われていた。

俺はその隙を見計らって、痺れる足に力を込め、スマホを持った隊員に飛びかかった。


隊員の持ったスマホを奪い取ると、そのまま床に叩きつける。

ガシャッと音がして画面が割れた。

そのまま何度も全力で床に叩きつける。

『ガシッバキッ』

スマホの壊れる鈍い音が体育館に響いた。


「お、おいっ!」

慌てた隊員が俺を止めようと掴みかかって殴打するのを振り祓い、更に数度打ち付ける。

隊員のスマホは既に曲った金属の屑に成っていた。


「この野郎っ!」

スマホを壊された隊員が怒りに震えながら俺を打ち付けようと腕を振り被った。


“ドガーーーン”

まるで爆弾が爆発した様な爆音とともに、その隊員の身体が天井近くまで跳ね上がった。

そのままぐしゃりと床に落ち、身動きしなくなる。


件の女生徒が一瞬で間を詰め、思いっ切り隊員を蹴り上げたのだ、と理解するまで僅かに時間が必要だった。

目前の女生徒は跳ね上げた足を俺の目前で優雅に下ろした。


「あんなもの、 平気だと言ったのに‥」

ボロボロの俺を見て、呆れた様に言った。

「でも。でも‥俺が嫌だったんだ」

女生徒は溜め息をつきながら俺の隣に膝をつき、腕や顔を素早くチェックする。


「ああ‥ボロボロじゃないですか」

言葉よりは優しく、俺の傷を撫でた。

「骨に異常は無いようですね。打撲が酷いので数日は痛みますが‥」

「湿布を沢山買うよ」

「それが良いです」


女生徒は立ち上がると再びリーダーの方を見た。

「まだ、やりますか?」


既に体育館で立っているのは彼女だけだった。

どうやら宏は隙を突いて体育館から脱出したらしく、姿が見えない。

とりあえずその事に俺は安堵した。


「‥」

リーダーは項垂れながら首を振る。

さすがにこれだけの力量差を見せられては抵抗する気も失った様だ。


“キーコーンカーン”

そこでちょうど午後の予鈴が鳴った。

宏が呼んで来たのか、何人かの人の話し声が入り口の方から聞こえて来る。


女生徒は俺に肩を貸し、立ち上がらせる。

「このまま教室に戻ったら大騒ぎですね。一旦、保健室に行きましょう」

「あいつらは‥」

「こちらで対処しておきます。ご安心下さい、“りっくん”」

そう言って少し表情を緩めた。


「え?! どうしてそれを?」

「貴方のことは春香お嬢様から沢山聞いて居たので」

「藍染の知り合い?」

女生徒は軽く頷いた。


「春香お嬢様の護衛兼後見役、“藤原みすず”と申します」

「なるほど護衛‥でもなんで藍染の護衛役が俺を?」

「藍染の名を語る輩を見過ごすことはできませんし‥ちょっと興味もあったので」

「俺に?」

「はい」

「カッコ悪くて恥ずかしいよ」

「悪くはありませんでしたよ。褒めるほどでも無いですが‥」

「き、厳しい‥」


俺達は話すうちに保健室へ到着した。

藤原さんは俺をベッドに横たえた。


「そこにいてください。保険の先生を呼んできます」

そう言ってドアを開け、出て行こうとして足を止めた。

一瞬、悩む素振りを見せる。


「んー‥」

振り返って俺を見る。


「あれ、忘れ物?」

「はい」

藤原さんはそう答えて俺のベッドの脇に戻ると、しゃがんで俺の耳元に唇を寄せた。


そして、

「ありがとうございます」

と、囁いた。


「えっ?」

聞き返そうとする俺を振り払って立ち上がる。


「それだけ、です」

そう言うと足早に保健室を出て行った。


やっぱり何も反応無いと寂しいので、モチベーション維持のためにもぜひぜひ感想とか教えて下さいませ。

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