プロモーションもいろいろおかしい
人物紹介:藍染春香
藍染財閥当主の一人娘。
本編のヒロインの一人。
子供の頃は体が弱く、入院中に主人公と知り合った、幼馴染。
即断即決が信条。
生徒会長でもあり複数習い事もしているため、かなり多忙。
長野から戻った翌登校日の放課後。
俺達は放送部の準備室で藍染たちに長野で起こったことを話していた。
藍染達には式場の手配でとても世話になった。
顛末を一通り知らせるのが礼儀だろう。
「わあっ! これも素敵〜!」
藍染はスマホで美月の花嫁姿を見せると、歓声を上げた。
「可憐です。広告に使いたいと言われるのも納得ですね」
藤原さんもしきりと頷いている。
見せているのは高見さんから送ってもらった美月の花嫁衣装写真だ。
結婚式場のカメラマンが撮っただけあり、どれも見事な仕上がりだった。
「改めてだと‥ちょっと恥ずかしいね」
美月は照れながら言った。
「りっくんも素敵〜」
「あ、ありがとう‥いや、確かに恥ずかしいな」
「お祖母様も喜ばれたのでしょう? 照れること無いよ」
「そうかな」
「うんうん。でも羨ましいな〜」
「ん?」
「私もりっくんと式あげたい〜」
藍染は身を乗り出して俺に迫る。
「いや、それは‥」
「モテモテですな、旦那!」
宏は脇から俺の事をからかった。
「言い方」
俺は手で宏を払い除け藍染と藤原さんにに向き直った。
「改めてだけど、本当に2人にはお礼を言いたい。おかげで何とかお祖母ちゃんに花嫁衣装を見せることができた。ありがとう」
「いえ、当然の事をしただけですよ」
「りっくん、お礼なんて水臭いよ」
「いや、言うべきことはちゃんと言わないと」
「うむ、苦しゅうない」
何故か偉そうに答える宏。
「お前には言ってない」
俺は突っ込みで返した。
宏は場の雰囲気が固くなったので、わざとボケてくれたのだろう。
「あ、じゃぁ一つ、お願いして良いかな」
そう言って藍染は藤原さんと視線を交わした。
「ん、どんな事?」
「これなんだけど‥」
藍染はそう言って鞄から古びた可愛いメモ帳を取り出した。
そこには‥
・花火を見る
・虫取りする
・海に行く
・お祭りで屋台
などなど、様々な遊びが子供っぽい字で書いてあった。
「これは‥小学生の夏休みのやる事?」
「そう、りっくんのね」
「俺?!」
言われて思い出した。
これは子供の頃、病院で藍染に俺が語った一緒に遊びたい事のリストだ。
「確かに‥俺が言ったことだ」
「これを、どれか一つ、したいな」
「もちろん、構わないけど‥」
「今日、にね」
「え、ああ、なるほど」
つまり、いつもは色々と多忙な藍染が、今日は予定が空いている、と言っているのだ。
「今日、これからだと‥」
俺はリストを改めて見直す。
と、そこへ美月が驚きの声を上げた。
「ええーーーっ、どうなってるの??」
「ん、どうした?」
「あ兄ぃ、これ‥」
美月が見せたのは自分のSNSアカウント画面だ。
友達と遊びに行った時の写真等がアップされている。
いつも通りの画面だ。
「これ‥?」
どこが問題なのかを聞こうとして、画面にある封筒アイコンの未開封メッセージの個数を示す数字が異常に多い事に気が付いた。
その数、500とちょっと。
見ている間にも、じわじわと数字が増えている。
「メッセージ、読んでないのか?」
「そんな訳無いよ。さっきまで未読0だったのに‥」
「イタズラ?」
念の為に自分のアカウントを確認すると、俺にもメッセージが100通近く。
「単なるイタズラじゃない‥?」
その時、宏が声をあげた。
「おっと、これが原因だろ」
言いながら、宏は自分のスマホの画面を見せる。
そこには‥
『結婚式場PVに大注目!』
『この美少女は誰?』
『大型新人デビュー?』
と書かれたキャッチコピーの下に、動画へのリンクが貼られていた。
動画をクリックして再生する。
結婚式場のロゴマークがふわりと表示され、そこから結婚式に臨む、女性のイメージカットが次々に表示される。
衣装を整え、メイクをし‥。
その表情は晴れの日を迎える喜びと、幸福感に満たされていた。
たまに、傍らに居る男性と談笑するカットが挟まれ、和やかな雰囲気を盛り上げる。
最後、式場に向かうカットから新郎の側に立つまでの表情を通して、徐々に緊張と喜びが増してゆく感情を上手く表す。
最後、ウェディングドレスをまとった女性が新郎を見つめ‥
『‥見惚れたに‥決まってるじゃん』
と、頬を染めながら嬉しそうに囁く所で動画は終わっていた。
「こ、これ‥」
俺と美月は言葉が出て来ず、動画を指差して口をパクパクさせた。
確かに、式場の広告に映像素材を使う、とは聞いていた。
でもそれは、パンフレットに小さく載せるとか、プロモーション映像に少し映るとか‥その程度の物だと勝手に思っていた。
何しろ俺も美月も全くの素人で、それほど扱う価値があるとは思っていなかった。
だが目前のこれはもはや‥美月のプロモーションPVとも呼べる内容だ。
式場の名前やロゴが表示されるのは最初の数秒だけで、後はひたすら式に臨む美月の多幸感を、綺麗な映像で丁寧に伝えている。
しかも、映像のクオリティがエラく高い。
BGMと連動した細かなカット割り、時折挟む印象的な映像等、見ている人を知らずに引き込む魅力がある。
写真を見せて貰った時も素晴らしいと思ったが、この動画は更にその上をいっていた。
何も知らずに見た人達が、力の入ったアイドルのデビューPVと思うのも無理はない。
よくあの短時間の撮影素材でこれだけの映像を作ったものだ。
式場支配人の梅澤さんの言葉を思い出す。
『アイドルが結婚式あげた様なものですよ』
と言っていた。
「やってくれたな、梅澤さん‥」
俺は溜め息をついた。
つまり、アイドルが居なければ作ればいい、と言う事なのだろう。
まさかこんな手を使って来るとは予想外だった。
あれだけのスタッフを集めたのは、これだけの物を作る自信が有ったからだろう。
確かにあの時の美月は俺でさえハッとするほど魅力的だった。
もちろん、梅澤さんは真摯にプロモーション映像を作ったのだろうし、俺達に迷惑を掛ける意図など無かったのだろう。
ただ、ネットでの反応が予想外だったと言うわけだ。
見ると先の記事には既に幾つもコメントが付いていた。
『誰?知らない娘だけど』
『この映像、よほどの大手がバックでは』
『嫁になってくれ!』
『名前位分からないのかー?』
『この娘、どこかで見た気がするんだが』
『気のせいだろ。こんな美少女居たら誰でも気がつく』
『必ずこう言う事言い出す奴居るよね〜』
そんな会話がいつくか続いた時。
『この娘、似てない?』
誰とも知れない人間が1枚の画像を貼った。
かなり画質の悪い拡大された画像だったが。
「あ、ヤバい」
俺は思わず呟いた。
それは美月のSNSから無断転載された写真だった。
『いや、ギャルじゃん』
『日焼けしてるけど、顔立ちは似てる‥』
『つまり、こうか?』
違う誰かが修正して肌色を調整した画像を上げる。
当然だが、映像の美月とよく似ていた。
『これ、ビンゴじゃね』
『どこの誰?』
『拾い物だから知らない‥』
『おいーーー』
『少なくとも実在する事は確定』
更に会話が熱を帯びて来る。
恐らく、こう言ったやりとりがネットのあちこちで始まっているのだろう。
「美月、マズい、アカウント閉めろ」
俺は慌てて美月に呼び掛けた。
「駄目、フリーズしちゃって‥」
美月は何度か操作を試みたが、次々と届くメッセージに処理が追い付いてないらしく、画面が反応しない。
「困ったな‥」
プロモーション映像には俺の姿も映っている。
俺のSNSにまでメッセージが届いていると言うことは、何人かは既に正解に到達している可能性がある。
「いや、もう大騒ぎじゃん」
言いながら宏は大手のニュースサイトを見せた。
そこには既に先の動画が転載され、各所で美少女の正体探しが始まっていること、何社かの芸能プロダクションが、獲得に動いているらしいことを伝えていた。
「あちゃー」
俺は頭を抱えた。
まさかこんな騒ぎになろうとは‥。
「りっくん、りっくん」
窓際から校外を見ていた藍染が俺を呼んだ。
窓の外、校門の方を指差す。
「あれ‥」
見ると校門の外に人だかりが出来ていた。
「え、まさか‥」
「ちょっと様子を見てきます」
藤原さんは部屋を出て行った。
「やはり美月さんを出待ちしているようです」
5分ほどして戻ってきた藤原さんは言った。
「もう学校まで知られてるのか」
「美月さんのお名前を知ってる方も多いようです」
「え、もう?」
「近隣の学校には美月さんをご存知の方もいらっしゃいますし」
もちろん、親しい知り合いがあの映像を見れば、美月だと気付くだろう。
これは‥交友関係が広いのが裏目に出たな。
「どうしよう‥」
美月は困惑した顔をする。
「よっちのお見舞いに行きたいのに‥」
どうやら友達が風邪で休んでいるらしい。
「何かで目を逸らせて、その隙に脱出するしかなさそうですね」
藤原さんは校門の様子をうかがいながら言った。
「どうしようか‥」
そうは言っても、目を逸らすにはどうすれば‥。
「そうだ、こんなのはどうかな?」
不意に藍染が口を開いた。
モチベーション維持のためにもぜひぜひ感想とか教えて下さいませ。
気に入った部分だけでは無く、ここが“読みにくかった”“分かりにくかった”も、とても参考に成ります。
感想書いて下さる人には本当に感謝です。
また、連載形式で数日ごとアップしますので、読み逃し無いようお気に入り登録も宜しくです。
他にも小説家になろうに色々作品アップしてますので、良かったら見てみて下さい。
ファンタジーからSFまで色々揃えてます。
ミステリー探偵物語「ファインド・アイズ」
https://ncode.syosetu.com/n3869lm/
ファンタジーラブコメ「ウチの弟が弟じゃない」
https://ncode.syosetu.com/n4758lk/
SF未来アイドル「えれくとろんあーく」
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ファンタジーバトル「冥界送人」
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