謎の黒騎士もいろいろおかしい
オンラインRPGゲーム、“ファンタズム・ワールド”のボ「一つ目巨人」を辛くも倒した俺達だったが、その巨人の中から不気味な黒騎士が現れた。
どうやらボス戦はまだ終わって居ない様だった。
目前の漆黒の騎士の異様さに、全員が息を呑んだ。
黒騎士がズルリと大剣を抜き、構えた。
『ヒュオッ』
「あうっ!」
風切音と美月の叫び声がほぼ同時に響いた。
見ると、美月のキャラは黒騎士に正面から大剣で腹を貫かれていた。
「なん‥?」
予想外の事に混乱する。
部屋の中央からここまでの数十メートルを一瞬で移動した?
あの重装備の黒騎士が?
とんでもない移動速度だ。
美月のキャラのHPメーターがいきなり0になった。
クリティカルヒット‥致命傷だ。
こうなると回復薬での復活は不可能。
徐々に光の粒子と化して消えてゆく。
「くっ」
その間に美月は素早くコントローラーを操作した。
同時に俺のキャラのHPが回復する。
美月が退場寸前に残りの回復アイテムを俺に使った。
「美月?!」
「やっぱ、あ兄ぃに勝って欲しいからさ」
そう言って光の粒子となって消える。
「我が敵を括り止めよ!」
はるちゃんが即効呪文を使うのと、黒騎士に袈裟斬りにされるのが同時だった。
一気にHPが0になる。
「あいつ、攻撃全部クリティカルか!」
はるちゃんの光呪縛が幾重にも黒騎士を絡め止める。
それでも黒騎士はゆっくりとだがこちらに向かって歩き始めた。
「あちゃー、あんまり効果無いね」
はるちゃんが悔しそうに呟いた。
その間に、はるちゃんのキャラも光の粒子となり消えた。
「精霊の守護っ!」
藤原さんの呪文が黒騎士と俺達の間に光の壁を作り出した。
「律斗さん、MPが残り少ししか有りません。早く!」
その間にも俺と黒騎士の間に立ち、呪文を詠唱し続け食い止めている。
「そ、そう言われても武器は‥」
俺は急いで装備品リストを開く。
愛用していた大刀は先程の攻撃で破壊してしまい、丸腰だった。
「駄目だ、ロクな武器が無い」
“ファンタズム・ワールド”でゲーム中に武器が破損する確率はかなり低い。
一応、予備の大刀も持っているが、レベルが低くてあの敵に通用するとは思えない。
『バシバシッ!』
遂に黒騎士は防壁ごと藤原さんのキャラを切り伏せた。
エルフも光となって消えてゆく。
「くっ、ここまでか」
藤原さんも悔しそうに呟いた。
黒騎士は大剣を振り下ろし切りかかってくる。
俺はダッシュで間一髪これを回避した。
再びこちらに向かって歩む黒騎士。
「ちくしょう! これまでか‥」
諦めかけた俺は、アイテムリストの最後に一つ武器が有るのに気が付いた。
武器名‥大刀+5
「あ兄ぃ、それは?」
「これは‥確かここに来る途中の隠し部屋で宝箱から入手したやつだ」
「使えないの?」
「未鑑定だからな‥」
イタリックで表示されたこれは、武器の正式の名称では無い。
未鑑定の武器に表示される仮の名前だ。
一度でも装備した事のある武器は、入手すると自動的に正式名が表示される。
かなりの種類の武器を装備した俺をして正式名が表示されないと言う事は、かなりレアな武器には違いない。
ただし、呪われた武器で無ければ。
当然だが、呪われたアイテムをわざわざ装備するはずが無く、それらは全て未鑑定で表示される事になる。
『ギュオッ』
唸りを上げて黒騎士の大剣が迫る。
アイテムを確認している間に黒騎士が横殴りに斬りつけて来た。
ギリギリで回避した俺は、遂に壁際に追い詰められる。
このままでは何もできずに倒される。
「一か八かだ」
俺は意を決してその未鑑定の大刀を選択した。
画面中央に確認のウィンドウが表示される。
『この武器を装備しますか?』
〉はい
いいえ
反射的に決定ボタンを押してから、俺は違和感に気が付いた。
‥今まで武器の装備に確認表示なんてあったか‥?
「しまった!」
慌てて装備画面を確認する。
表示された大刀の名称は‥。
『呪いの大剣+5』
‥やはり呪いのアイテムだった。
考えてみれば強力なボス手前の隠し部屋にあるアイテムなんて、見え見えのトラップに引っ掛かってしまった。
呪いのアイテムは使おうとすると逆に自分がダメージを受けたり、攻撃が当たらなかったり、ろくな事に成らない。
こんな物であの黒騎士を倒せる訳も無かった。
「あー、やっぱり駄目だったかぁ」
一か八かの賭けに負けてしまったようだ。
諦めてコントローラーを置こうとした。
「待って。りっくん、何か変だよ?」
はるちゃんが俺を制止した。
「画面が‥」
美月が画面を指差す。
「え? バグってる?」
アイテムを装備すれば、そのまま通常の画面に戻るはず。
だが、画面は装備画面から変化せず、チラチラとノイズが走り、不定期なブロックノイズも出ている。
こんなバグは初めて見た。
当然、操作不能で何もできない。
遂に盛大なノイズが入り、画面全体が砂嵐になってしまった。
「ボスに負けて更にフリーズか。運が悪いな」
俺はプレイ続行を諦め、ゲーム機の電源ボタンに手を伸ばそうとした。
『汝の魂を捧げよ‥』
突然ノイズの画面にメッセージテキストがデカデカと表示された。
「なんだ?」
「え、なにこれ?」
「メッセージ??」
慌てて美月の画面を確認する。
ゲーム画面は切りかかってきた黒騎士どころか、エフェクトも途中で停止しており、進行が完全に止まっている。
その中で俺の画面だけにはノイズの上にテキストメーセージが流れている。
『今より汝は我が同胞。夜魔の力持ちてその敵を倒さん』
「バグじゃ‥ない?」
「演出なの?これ」
「こんな演出、聞いたことも無いよ」
「何とも不気味な‥」
皆が戸惑いの声を上げる。
『バシュッ』
画面のノイズとメッセージが収束したかと思うと、装備画面が再び表示された。
その中央に表示された大剣は、先程とは桁違いの禍々しいエフェクトを纏っている。
その傍らに表示されている名称は‥。
『夜魔の大剣』
レアリティ:S+++++
レベル:120
攻撃力:?
防御力:?
★この武器は一度装備すると外すことが出来ません。
「な、なんだこれ」
「こ、これは‥」
「外すことが出来ないって‥」
口々に話す俺達を尻目に、はるちゃんは目前の装備画面を見つめていた。
「1、2、3‥5個ある」
「はるちゃん?」
「りっくん、“+”が5個あるよ‥」
はるちゃんは装備画面のSの後ろにある“+”マークを震える指先で差した。
「確かに5個あるな‥?」
「わ、分からない? これ、唯一無二の剣だよ」
「え、いや、待ってくれ‥そんな‥本当に?」
俺も改めて画面を見返す。
それを聞いた藤原さんが尋ねた。
「お嬢様、ソード・オブ・ワン、というのは?」
「えーと、つまり、この“ファンタズム・ワールド”の中にたった一つしか無い、特別で強力な剣の事だよ」
「はぁ‥なるほど?」
藤原さんはまだピンと来てない。
「つまり、世界中の“ファンタズム・ワールド”のプレイヤー何千万人居る中で、この剣を持っているのはりっくんただ一人って事」
「おお、確かにそれは凄い」
「剣、鎧、盾、弓‥各武器種毎にたった一つだけ存在する唯一無二のアイテム。世界中のプレイヤーの憧れだよ」
「え、それってもしかして凄い高く売れたり?」
それを聞いた美月が興味津々で聞いてくる。
はるちゃんは頷いて答えた。
「そうだね、“ファンタズム・ワールド”はアイテム売買できないんだけど、持ってるアカウントごと売ることはできちゃって‥」
「うんうん」
「5年ほど前に“シールド・オブ・ワン”を持ってるアカウントが競売された時は、大体20億円で落札されたよ」
「に、20億ーー?」
美月は素頓狂な声を上げた。
「それは凄い。ハワイのお屋敷と同じ位するのですか?!」
藤原さんも驚いた様子だ。
‥いや、俺はハワイに20億の屋敷持ってる方が凄いと思うぞ。
ちょっと驚きながら内心思った。
「まぁ、売らないけどな」
「まあ、そうだよね」
はるちゃんは頷く。
「え、20億だよ?」
美月は不思議そうに聞く。
「アカウントは俺自身と同義だ。アカウント売るってのは俺自身を売るのと同じだ」
「そんなもん?」
「そんなもんだ」
それを聞いてもまだ不満そうな美月だった。
「律斗さん、画面が動き始めますっ!」
藤原さんが声を上げた。
この呪いの大剣でどこまでやれるか‥試して見るか。
俺はコントローラーを握り直して身構えた。
モチベーション維持のためにもぜひぜひ感想とか教えて下さいませ。
気に入った部分だけでは無く、ここが“読みにくかった”“分かりにくかった”も、とても参考に成ります。
感想書いて下さる人には本当に感謝です。
また、連載形式で数日ごとアップしますので、読み逃し無いようお気に入り登録も宜しくです。
他にも小説家になろうに色々作品アップしてますので、良かったら見てみて下さい。
ファンタジーからSFまで色々揃えてます。
ミステリー探偵物語「ファインド・アイズ」
https://ncode.syosetu.com/n3869lm/
ファンタジーラブコメ「ウチの弟が弟じゃない」
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SF未来アイドル「えれくとろんあーく」
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ファンタジーバトル「冥界送人」
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