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第7話 新たな仲間

「どゆこと?」

「そっちこそ、それってグレイド学園の地縛霊じゃん!」

「失礼だなマシャットさんはちゃんと生きてるドワーフだよ」

「そうなの? 良かったー俺ちんだけ幽霊が見えてるのかと思って毎日怖かったんだよぉ」


 顔合わせ一発目で失礼過ぎる発言、マシャットさん怒ってないといいけど。

 なんて思って横を見たらマシャットさんめちゃくちゃ笑顔、何この人、聖人? 聖ドワーフ? 怒りという感情を母の胎内に残してきたの? なんでこんな一遍も曇りがない笑顔でいられるのか不思議だよ。


「人と話せるって幸せだね」

「……なんか、ごめんなさい」

「どういう事?」


 これ以上悲しい過去に触れるのはやめておこう。


「それよりお前こそなんでエリナと一緒に居るんだ?」


 彼女は今年入学したての鉄組、クズ鉄組みたいな最悪の未来と一緒にいていい存在じゃないぞ。


「彼女ね、獣人なの」

「そうか……え、それが理由?」

「俺ちんね獣人が好きなの」

「はぁ……お前って奴は」


 ロンディよ、お前の言う通りクルーサは確かに強い、もしかして心がふたつあるんじゃないかって思えるくらいには強いぞ。


「昨日はありがとうございます! 私は、ホーンウルフの獣人でエリナです、あ、名前はもう知ってますね、えーっと……他に何を言えば」


 この子は基本的に落ち着きがない子なのか。

 それにしても希少種のホーンウルフ、更にその獣人ともなるとかなり珍しい種族だな。

 基本的に獣人は原種である獣と人間が契約を交わすことで生まれてくる、この世界でもかなり特殊な存在だ。

 よく見たらダークグレーの髪に隠れて耳が生えてる、脳天と額の間には小さな角もある。

 しっぽはスカートで隠してるのか。と言うか獣人の犬歯って本当にハッキリ突き出てるのな、初めて獣人に出会ったから発見が多いぞ。


「ゴホンッ! つまりは、獣人だからパーティーに入れたいと?」

「そゆこと、アッちんは? もしかしてその地縛――ドワーフさんをパーティーに入れるつもりだった?」

「僕は別に構わないよ、君たちは三人が得意なんだろ? 無理に仲間に入れてくれとは言わないさ」


 そんな寂しそうな顔をしないでくれ、俺の心が痛む。だからと言ってエリナを拒否するのも俺には出来ない。こんないたいけな少女にキツイ言葉を投げかけるなんて苦だ。


「いいじゃん四人パーティー! 正直言って一緒に戦う仲間は多い方が楽しいっしょ? 別に隠密作戦する訳じゃないんだし」


 クルーサのその言葉に俺は気づかされた。


「確かにそうか、主流パーティーが三人とか五人なだけで四人も悪くないな」

「人数多い方ができることも多いしね」

「じゃあ僕も仲間になっていいの?」

「いいよいいよ! 俺ちんドワーフも好きだよ」


 たまにはクルーサもいい事言うな、確かに俺は三人に拘りすぎてた、もっと頭を柔軟にしないといけないな。


「話し合いは終わったかい?」

「うおっ!? バイストン先生いつからそこに?」


 職員室の扉前でニコニコ立っているバイストン先生、本当に気配も何も感じなかった、もしかして元隠密戦士だったのか。


「ロンディくんの事はジャックス先生から聞いたよ、彼のフィジカルが抜けたのは確かに惜しいけど、だからこそもっと頑張ろうか」

「はい、早速今から――」

「――雑務の手伝いを頼むよ」


 なんでいつもバイストン先生はこんなに雑務を押し付けられるんだ、今度先生たちを調べて原因究明をしないといけないな。


 ――――――――


「クソジジイ! こちとらおめーより長生きしてんだよ! 見た目で子供扱いすんな! 山篭りで栄養足りてなかったんだよ! 人間みたいにいい飯食えてると思うなよ! うまい飯食って腹に栄養送る暇があったら頭に栄養送っとけ! 禿げてんだよ!」


 今日のバイストン先生一段とストレスが溜まってるな。それにしても禿げてて太ってる人間の先生か、ジャックス先生じゃないな、天パだしガリガリだし。


「あ、あの……毎日こんな激しい特訓をしてるんですか?」


 横で一緒に見ていたエリナとマシャットさんが目を丸くして口を開けている。

 普通の生徒からしたら先生の全力攻撃なんて滅多に見れるものじゃないから驚くのも無理はないな。


「そうだよ、まぁ俺たちは今日からもう一歩先に行くけど」

「も、もう一歩先!? 僕には想像できないな」


 ちょうどこのタイミングで砂時計が落ちきった。

 俺は中央に立ってる二人に声をかけ、終了を教える。


「まじ!? 初めて時間一杯逃げ切った! やったー!」

「流石だね、二日前にアッシュくんがクリアして、クルーサくんもここまで成長するとは」

「今日から僕とクルーサの二人がかりで先生へ接近します、先生は攻撃をしながら逃げてください、片手の手のひら全体が先生の体のどこかに触れるか、五発先生の攻撃を受けるかまで終わりません、それが成功したら次は一人で同じ事をします」


 魔法を避けるだけなら今の実力で十分だ、後は魔法を避けながら敵に接近する、対魔導師の戦いでは戦士科は距離を詰めないと話にならない、今の段階はやっと入口に立てた程度。


「今日はもういいっしょ? ヘトヘトだよ」

「なら俺だけでもやるよ、クルーサには別のきついメニューを一人でやってもらうけど」

「わかったよ、やるよ!」

「じゃあ今からマシャットさんに同じことやってもらうけど、大丈夫ですか?」

「が、頑張るよ」


 クルーサが端で寝転がり休憩を始めた、そしてまだ余裕そうな先生の前にマシャットさんが立つ。俺の予想ではこの第一段階、マシャットさんなら余裕でクリア出来るだろう。


「じゃあ初めてください!」


 砂時計をひっくり返した瞬間、先生の猛攻が始まった。


「死ねぇぇぇい!!」

「ヒィッ!?」


 基本不格好な逃げ腰だが、確実に避けてる。

 やっぱり長い間クズ鉄組にいるだけあって基礎体力や瞬発力はこの場にいる誰よりも高い。一発クリアも有り得るな。


「そういえばエリナは何科なんだ?」

「イヌ科です」

「……え?」

「あ、違いますか!? ヒト科です!」

「……え?」

「え、え? 私間違いました!?」


 この子は本気で言ってるのか、それとも全力のボケなのか? 天然ならこれからの意思伝達方法をしっかり考えないといけないぞ、作戦に支障が出かねない。


「学園での所属だ」

「あ、私は支援科です! 主に回復魔法を使います、攻撃魔法は回復魔法の応用として熱魔法を少し」

回復術士ヒーラーなのか!? それは嬉しい誤算だ! ただでさえ数が少ない回復術士がパーティーに居るなんてでかいアドバンテージだ……」


 なんて話しているうちに砂時計は落ちきっていた。俺は慌てて終了を教えると、二人は少し面食らった顔でこっちに歩いてきた。


「すごいね、マシャットくん」

「た、たまたまです」

「僕は……いや、俺は今確信しました、このパーティーなら多分勝てる! いや、絶対に勝てる! 改めてよろしくお願いします、マシャットさん、エリナ」

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