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第2話 魔法の基礎を学べ

 クズ鉄組にはまだまだ特徴がある。

 ジャックス先生が第五修練所に集合と言ったが、そこで行われるのは授業ではない。


「おらおらおら、動きを止めるな! 青銅組ブロンズクラス以上はみんな余裕でこんなのこなしてくぞ」


 戦士科のクズ鉄組は毎日自分の武器の素振りや型の練習から入る、そしてその後すぐにランニング、明らかに無理な距離を無理な時間内に走らせようとしてくる。

 それが終われば残りは全部自由時間、もとい指導放任。これが最低限のサポートなのだ。


「ぜぇぜぇ……こ、この後どうする?」

「もう……動けないっしょ、寝ようぜ」


 ほとんどの生徒はこの時点で自分の寮に帰るだろう。

 だが俺は、自由時間内に与えられた特権を放棄することは無い。

 それは、全ての授業(鉄組、青銅組が行っているもの)に自由見学が出来るのだ。参加は出来ないが、授業を聞くことはできる。

 そしてもう一つ、全ての第五とつく施設が使えるのだ。設備はいいと言えないが自由に使える場所があるなら有効活用しなくては。


「今から魔導師科の授業に行くぞ」

「え、なんでよりによって魔導師科?」

「考えがあるんだな?」

「なかったら行かない」


 クズ鉄組が見学に行く、それ自体既に他の生徒の笑い物だが、今は恥を捨てて知識を取り入れるしかない。あの試験の屈辱に比べればこんなの屁でもないさ。


 グレイド学園は五つの校舎によって構成されている。中心の校舎が訓練棟で、様々な施設がある。訓練棟から十字にそれぞれのクラスの校舎があり、基本的にほかのクラスの生徒とは訓練棟以外では出会わない。

 鉄組アイアンクラス校舎の魔導師科が授業を受けている教室に行く。

 授業が始まる前なのか、ほとんどの生徒は談笑していた。

 同じ鉄組でも向こうには穢れを知らないピュアな光を感じてしまう。

 そして俺たちが教室に入ると視線が一気に集まる。


「やっべ、めっちゃ見られてるって、胃が痛いってこんな感じなんだね」

「一体どういうつもりだアッシュ」

「俺たちは魔法について改めて勉強しないといけない、その理論や構造を理解することで魔導師と対面した時の対処法を考えることができる」


 セシリアは戦士科に在籍しながら魔導師としての実力も一流だ、あの天才に勝つためにはただ鍛えるだけじゃ足りない。


「一理あるな」

「でもこのアウェー感は半端じゃないよ」


 なぜクズ鉄組に見学許可があるのか、それは反面教師という一面があるから、鉄組や青銅組は次の年末試験までに未昇格や降格処分を受ければ俺たちの仲間入りになる。

 見学者の姿を見せて、こうはなるなよと警告する目的もあるだろう。


 しばらく時間が経ち鐘の音が鳴る。目に大きなクマをつけた小柄なエルフの先生が教室に入り、早速魔法についての授業が始まった。


 魔法の基礎理論、人間には潜在的に魔法を扱うための力が個人差で備わっている。その力は魔力と呼ばれ、鍛えれば増やすことが出来るが、人によっては成長速度が天と地の差になる。俺は魔力が人並み以下で殆ど無い。

 そしてその魔力を外に出すための魔穴まけつがあり、その量や太さ(実際は肉眼で捉えられないほど小さい)に魔法の威力や精度が変わってくる。

 さらにこの世界には目に見えない力が空気中に滞在している。それを魔素と呼ぶ、文字通り魔法の素となる力で、体内で作り出された魔力と外の魔素が混ざり合うことによって魔法が生まれる。

 なので、魔法は地域によって貧弱にもなるし、強大な力にもなる。


 簡単にまとめると、人体の中で作り出し練り上げた魔力を魔穴から外に出し、外にある魔素と混ぜ合わせ魔法が発動する。

 魔法は本人の体調や外の環境に左右されやすい。だが、一流の魔導師は密度の高い魔力を作り出し、僅かな魔素のみで強大な魔法を作り出すことができるらしい。結局は才能が物を言う。


「ロンディは魔法の才があるのに鍛えないなんてもったいないねぇ〜」

「俺は親父に誓ったんだ、剣を鍛え、立派な戦士になると、次期村長は強い戦士でなくちゃ示しがつかない……今更魔導師に変われないさ」

「だが、戦士として魔法が使えるのはそれだけで武器になるぞ、正直言って羨ましい」

「確かに、せっかくの機会だ、学ぶのも悪くは無いな」


 どうやらロンディも前向きに検討しているようで安心した。しっかり自分を高める気持ちがある、それだけでこの学園で背中を預けられる。


「今日はこの授業が終わったら解散しよう、明日からはそれぞれの課題を出し合ってそれに向けて訓練だ……今月の最終日、その日までに出来ることをやろう」

「あぁ」

「了解だよん、でもアッちん自分を追い込みすぎちゃダメだよ、去年までの余裕あるアッちんの方が頼もしいってのが本音、今は苦しそうっしょ」

「……そうか、心配をかけたな、もっと気楽に気張るよ」

「それどっちかわかんないし!」


 この日はこのまま解散した。

 確かにクルーサの言う通りだ、今の俺に余裕なんてものは無い。焦ってる時こそいつも通りに、親父の言葉を忘れてたよ。

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