プロローグ「敗者」
「今回の年末試験未昇格者、降格は以下の通りである」
バイドロ学園長の直筆で書かれたリストの中に、俺の名前があった。
アッシュと書かれた文字は一番最初にあった。
この学園に入学して一年の時が経つ、入学試験ではギリギリの合格を貰い、中間試験は体調不良によって不参加、そして今回の大一番はアイツのせいで大怪我を負い初戦敗退。その後の敗者戦も怪我によって不戦敗。覚悟はしていたが現実を目の当たりにすると今にでも泣き出したいくらいに情けない。
そして俺をこんな姿にした奴は異例の飛び級、俺と彼女、セシリアの間には絶望的な大差がついた。
「謝らないわよ、この学園は弱肉強食、私は強かった……それだけだから」
セシリアは俺の顔を見ない、俺もセシリアの顔を一瞬見たがすぐに目を逸らした、だがその表情は勝負の土俵に立ったものがする顔じゃない。人を哀れむ顔だ。
「うるせぇ、んな事はわかってんだよ」
子供の頃は俺の後ろをずっと追いかけるくらい可愛げのある奴だったのに。このグレイド学園に来てから、俺は幼なじみとの差に裏切られた気分だった。いや、裏切らせたの俺自身の実力不足だ。
だが俺はここで諦めない、必ず追いついてこの借りを返す。
今度は俺がその背中を追いかける番だ。
一年経って昇格出来ない奴はクズ鉄と呼ばれる。なら俺は自分を鍛えて、鍛えて、鍛えて……そして最高に硬い鉄になってやる。
これは俺が這い上がる物語だ。