この感情は
昨日のこともあり、悠はずっと授業中ぼーっとしていた。
「…か、、?おい、、悠、、?」
悠の中学からの友達である横見 拓也に声をかけられているのにも気づかなかった。
「え、、、あ、拓也!どうしたの?」
「どうしたじゃねぇっつーの。どうすんの。今から昼。みんなで食うからよぉ、ほら一緒に食おうぜ!」
「あーごめん。今日は風当たってくるよ」
「またあの場所??好きやなーほんまに」
「うん、、また食べよ。」
「おう。また後で。」
拓也は中学からの同級生と言うだけでなく、困った時はいつも助けてくれる悠にとっての唯一の親友。
しかし、悠は大人数が嫌いなため、拓也からのお昼の誘いを断ることが多かった。
ーサッカー部のノリついていけないんだよな。無理に気を使わせたくもないし、。
教室のざわめきから少し離れて、悠は屋上にある小さなベンチに座っていた。
日差しがやわらかくて、風も気持ちいい。
誰もいないこの場所は、ちょっとしたお気に入りだった。
かばんからお弁当を取り出して、静かにふたを開ける。
買ってきたサンドイッチ1つと、小さな保冷バッグの中に入ったお茶。
「……いただきます。」
一口食べて、何気なく空を見上げたそのとき。
「……お前、こんなとこで何してんの。」
不意にかかった声に、悠はびくっと肩を揺らす。
振り返ると、手に焼きそばパンを持った雅哉が立っていた。
「……昼、ここで食べてんの?」
「……うーん、たまに。静かだし、風が気持ちいから。」
「へぇ。」
そう言って、雅哉は隣に腰を下ろした。
距離が近い。
いや、もともと狭い屋上だから仕方ないけど、それにしても…肌が触れ合うような距離。
「お前、いつも一人で飯食ってるん?」
「……たまに。サッカー部の子とも食べるけどね。」
「そっか。」
それ以上、何も聞いてこない。
ただ、雅哉は袋からパンを取り出して、黙ってかじる。
カリッ、という小さな音だけが響いた。
風が、二人の前髪をかすかに揺らす。
「……嫌やったか?」
「なにが?」
「俺と、ここで食うの。」
悠は少し驚いた。
そんなこと、雅哉の口から出るとは思わなかった。
「別に違うよ。……むしろ、なんか意外と落ち着くかも。」
そう答えると、雅哉はわずかに口元を緩めた。
「……そっか。なら、よかった。」
静かにそう言ったその声が、思ったよりもやさしくて。
悠の手が、ほんの一瞬だけ止まった。
こんなふうに誰かと一緒にごはんを食べたのは、いつぶりだろう。
気を遣わなくてよくて、黙ってても気まずくなくて。
しかも、その相手が――
「……お前のサンドイッチなんか、ちっちゃくないか?」
「ん?これ?うーん、、、これくらいで足りるんだよね俺。」
うそだ。
実は悠は最近金欠で、あまり買えずにいることが多く、それを心配させないためにも拓也と食べないようにしていたのだ。
「俺、もう一個買えばよかったな。」
「え?」
「半分やる。パン。」
「え、いいよ……」
「いいから。俺、誰かと分け合うん、けっこう好きやねん。」
ぽん、と差し出された焼きそばパン。
受け取った手が、ほんの少し震えた。
「ほら。美味いから、、な??」
些細な優しさに、キュンとしてしまった。
あ、まただ。
胸の奥が、また
熱くなった。
この感情、この胸の奥の痛みはなんなんだろう。
ばか。もっと考えちゃうじゃん。




