君との出会い
悠は、高校の教室で一人静かに本を読んでいた。普段から目立たない性格で、クラスメートとの関わりも少なく、唯一の楽しみは読書と勉強だった。
その日も、放課後の静かな時間に一人、教室で本を開いていると、突然ガタッと大きな音がして、ドアが勢いよく開かれた。
「おい、どこや?」
声が響く中、悠は顔を上げると、そこに現れたのは学校でも有名な不良、雅哉だった。目立つことを嫌っていた悠は、正直、彼に興味を持ったことはなかった。しかし、初めて目が合った瞬間、彼の鋭い眼差しに圧倒された。
「お前、何してん?」
雅哉は悠に向かって歩み寄ると、目の前に立った。悠は慌てて本を閉じ、少し緊張しながらも答えた。
「え、えっと、本を読んでいただけですけど…?」
「へぇ、静かな奴やな。お前、クラスでは全然目立たんけど、こんなところで何してん?」
雅哉の言葉に、悠は少し戸惑いながらも答える。
「別に…特に何かしてるわけじゃないんです。ただ、読んでたっていうか…」
雅哉は不意に笑みを浮かべ、悠の手元にあった本を手に取った。
「『青春恋愛もの』か。可愛い趣味してるんやな、お前。」
その言葉に悠は少しだけ顔を赤くした。
「す、すみません、好きなんです。そういうの。」
「別に謝ることじゃないやろ。俺だって、たまには本くらい読むし」
雅哉は軽く肩をすくめて笑った。あまりにも自然に、悠の中にあった緊張感が少しずつほぐれていくのを感じた。
「じゃあ、今度一緒に図書館行こうや」
突然、雅哉がそう言い出した。悠は驚いて目を見開いた。
「え、でも…」
「お前、そんなに本が好きなら、図書館くらい行ったことあるやろ?」
「それはもちろん…ありますけど…」
悠は少し困ったように顔をしかめたが、雅哉の無邪気な笑顔に、なぜか心が温かくなった。
「じゃあ、行こう。俺が付き合ってやるからさ。お前、意外と面白い奴やなって思った。お前のこともっと知りたい」
雅哉の言葉に、悠は少し驚きながらも、どこか嬉しい気持ちになった。
「…それなら、よろしくお願いします。」
そう言って、悠は微笑んだ。