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体育祭練習2

そして放課後。


「おい、悠。補習プリント、手伝えや」

「……先生に頼まれたの?」

「んなわけねぇだろ。お前がわかりやすいからって、俺が決めたんだよ」

「……強引だね」

「おい、悠」

「……なに?」

「今日、めっちゃ集中できた。お前の声、落ち着くっつーか」

「……なんかキスしてえ」


で、キスの流れになってしまったのだ。


もちろん悠はファーストキス。

お互い何が起こったのかも分からないまま、日をまたいだ。


次の日の放課後。校舎裏のグラウンドの隅っこ。

みんながリレーや大縄の練習をしている中、悠と雅哉は少し離れた場所で向かい合っていた。


「……左足から、ね。」


悠がやんわりと微笑んで言う。


「おう。」


二人三脚用の紐を持っていた悠は、しゃがみ込んで雅哉の足元に手を伸ばした。


「……結ぶね。」


静かに、慎重に、雅哉の足と自分の足をひとつに結ぶ。

その間、雅哉は視線を逸らしたまま、ずっと黙っていた。


「……痛くない?」


「……平気。」


立ち上がった悠は、少しだけ雅哉の顔を見上げた。

その目はいつものように穏やかで、でもどこか探るような優しさも混じっていた。


「……あの時のこと、さ。」


雅哉がぽつりと、ぽつりとこぼした。


「…あえて言うけど、あの昨日の放課後の…キス。あれ、なんか……自分でも意味わかんなくて」


悠は一瞬だけ目を見開いたけど、すぐに表情を戻す。


「うん……びっくりは、したけど。怒ってないよ。」


「……でも、俺、あんなの……無理やりでしかなかったな。すまん。」


言葉に詰まる雅哉の声は、普段のそれよりも少しだけ小さく、弱かった。

悠は、そんな彼の手にそっと自分の指を添えた。


「まぁ、驚いたけど、雅哉くんが、ちゃんと話してくれたから……それで十分。」


「…は、…優しすぎるんちゃうか、お前。」


「そっかな。……でも、無理して謝らなくてもいいよ。あの時雅哉くんちゃんといいか?って聞いてくれたし、俺断んなかったでしょ、大丈夫だから。」


ちょっと噛みながら言い直した悠に、雅哉はふっと小さく笑った。


「……お前、そういうとこ……ほんま、ずるいわ。またキスしたくなる。」


「え?」


「なんでもない。」


それ以上は何も言わず、雅哉は前を向いた。

「よし、やるか。」と、ほんの少しだけ力を入れて紐を確認する。


「せーの……左、右。」


「左、右。」


二人の声が重なる。

はじめはぎこちなかったけれど、何度か合わせるうちに、歩幅がぴたりと合ってきた。


「……あ、今のよかったかも。」


「まぁまぁやな。」


同じ方向を向いて、同じ速度で前に進む。

それが、こんなにも難しくて、でも楽しく感じるなんて――不思議だった。


風が二人の間を通り抜け、結ばれた足元の影が、夕日に伸びて揺れていた。

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