第9話 買い物(一人)
今日は土曜日の朝7:30。
いつもなら、すぐに部屋を出て、顔を洗いに行ったりするのだが……。
「起きてたら、マズイもんな……連絡先くらい交換しとけば、確認できたのにな……」
俺は、部屋の中から外に聞き耳を立てる。
「ん〜……特に物音はしない……時間が早いから起きてないとは思うんだよな……」
よし。行くか。
俺は部屋を出て、リビングへと向かう。
「よし、いないな」
俺は、洗面所へは行かずに、キッチンで顔を洗う。
そして、二人の朝食を用意する。一応昼食も用意しておいて。
「外食するのであれば、これは夜でもいいな」
昼食用は、冷蔵庫に。
「さてと、行きますか」
俺は朝食をテーブルの上に置く。あ、もちろん、ラップはしてる。
そして、部屋に戻り、着替える。
「行ってきま〜す」
小声で挨拶をし、家を出た。
☆ ♡ ☆
『次は〜〜〜〜〜〜』
俺は今、電車に乗っている。
大型家電量販店に行くためだ。
「一日に洗濯機と掃除機が壊れるとは、思ってなかったな……」
そう。昨日の朝、洗濯機と掃除機が壊れてしまった。
だから俺はその二つを新調する為、買い物に出ているのだ。
「よいしょ。え〜っと……こっちか」
駅から店に向かう。
道中、コンビニにより飲み物を買ったりなんだりして、家電量販店に到着。
「まずは掃除機を見るか」
俺はまず、掃除機を見る事にした。
テレビとかで見るけど、最近の掃除機って機能がすごいらしいからなぁ〜。
何気に楽しみなんだよな〜。
「お〜。色々あるな〜」
掃除機コーナーには、沢山の掃除機が並んでいた。
軽いやつや、従来の掃除機、多機能のやつとか、分離するやつとか。
これ、いかんな。迷う。まぁ、予算は決まってるから、予算内に収まるのを買わなきゃなんだけどね。
「ん〜……」
「あの〜」
「え?」
声をかけられたので、店員だと思って見たら、そこにいたのは店員ではなかった。
そこにいたのは──、
「は、早口、さん?」
「ど、ども……」
そこにいたのは、身長が低く、小柄で、メガネをかけていて、右目を前髪で隠した、ショートカットの少女──早口 灯さんだった。
髪色は灰色と言う珍しい色で、その中に少しだけ紺色が混じっていて、綺麗な髪をしていると思う。
小柄で低身長なのに、服の上からでも分かるほどの巨乳で、男子人気は結構高かった。
「こんなところで会うなんて、偶然ですね」
「そ、そう、ですね……」
う〜ん……会話が終わってしまった……。
早口さんとは、そこまで話した事がない。というか全くないと言っても過言じゃない。
そんな人と何を話せばいいんだ……?
「お、お買い物の邪魔、しちゃって、ご、ごめん、なさい……」
「あ、いや。全然大丈夫ですよ。早口さん何を買いに来たの?」
「そ、それは……」
ほぼ初会話に近いのに、プライベートな事聞くとか気持ち悪すぎだろーーーーーー!
「あ、ご、ごめん……! 答えたくなかったら答えなくても大丈夫だから」
「ううん……きょ、今日は……き、キーボードを、か、買いに、きたの……」
「キーボード? もしかして、ゲームとか結構やる感じ?」
「は、はい……」
「そっか。しかもキーボードって事は、中々の玄人だよね。どういうゲームが好き……とかって聞いても大丈夫ですかね?」
「はい……あんまり大きな声じゃ言えないんですけど……」
「うん」
「(え、エッチなゲームが大好きなんです……)」
「………………」
俺は、耳を疑い、固まってしまった。
今、なんと言いました?
「や、やっぱりひ、引きます、よね……」
「え!? あ、いやいや! ひ、引いてなんてないよ!」
「ほ、本当……?」
「あ、あぁ! ちょっとビックリしただけで、引いたりなんてしないよ」
こんな可愛い子がエロゲやってるとか、人の趣味嗜好は本当にわかんないなぁ〜。
「俺もそういうゲームやるし」
「ほ、本当!」
「お、おう……」
急に距離を詰めてきた!? しかも、目がキラキラかが屋してるし!
「どういうジャンルが好きなの?! 私はね、男の子に尽くして尽くして尽くしまくるのが大好きなの! 上から目線で命令されたり、無理矢理されたりとか、そういうのがすっごく大好きなの!」
「は、早口さ〜ん……ちょっと落ち着こうか? ここ、お店だから……」
「あ……ご、ごめんなさい……! 私、好きな話になると、周りが見えなくなっちゃって……」
「大丈夫大丈夫。みんな大体そうだから。そうだ。買い物が終わったらどっか行こうか。ゆっくり話せる所に。ね」
「は、はい……! は、梁矢君と、沢山お話したい、です……!」
「っ!」
な、なんだ……今、鼓動が高鳴った……。
早口さんの笑顔が、可愛すぎる……。
「じゃあまずは、お互い買い物を済ませようか」
「はい!」
「じゃあ、また後で」
「はい! また後で♪」
俺達は一旦別れ、買い物に戻った。
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