第7話 鈴の思い
「はぁ〜……」
「さっきからため息ばっかり。どうしたのよ、鈴」
「うん……私、優君に嫌われちゃったかも……」
私は、放課後、職員室に行っていた。
そこでの用が終わり、教室に戻った。優君と一緒に帰りたいと思って急いで戻ったんだけど……。
教室に優君はいなくて、優君と仲のいい畑谷君に聞いたら、バイトがあるから先に帰ったと聞いた。
「また後でも言えなかったし、バイトをしている事も知らなかった……」
「まぁ、今日会ったばっかりなんだから、知らなくて当然じゃない?」
「うん……でも、優君、私と深く関わるつもりはないって……」
「そっか……まぁ、まだ初日だから。そんな気を落とさなくても大丈夫よ。これから仲を深めて行けばいいんだから」
「うん……」
「ほら、紛失届を出すよ」
「うん……」
私達は警察署に来ていた。財布の紛失届を出すためだ。
落とし物として届いてはいなかったので、しっかりと説明を受けて、紛失届を出した。
☆ ♡ ☆
紛失届を出し終えた私達は、家──優君が一人暮らししている──に帰って来た。
「ただいま〜」
「ただいま……」
玄関を開けると、部屋は暗かった。声も聞こえない。
「あれ? 優君、まだ帰ってきてないのかな?」
お姉ちゃんがそう言いながらリビングへと向かう。私もその後についていく。
「あ、これ」
「ん? 何、お姉ちゃん」
お姉ちゃんがリビングのテーブルの所で立ち止まるので、私も止まり、テーブルの上を見ると──、
『お二人の夕飯です。俺はバイトで帰りが遅くなるので、先に食べて、先に寝ていてください。洗い物は水桶の中に。洗濯物は洗濯カゴの中に入れておいてください』
と、置き手紙と共にラップされたお皿が並んでいた。
「ハンバーグだね。すごく美味しそう♪」
「優君、料理上手……」
お姉ちゃんは美味しそうなハンバーグを見て、ウキウキしていた。
私はその反面、申し訳なさでいっぱいになっていた。
お昼に色々買ってもらって、料理まで作ってもらって、洗濯までしてもらう。
私達にできる事は何もないのかな……。
「鈴、先にご飯食べよう。その後、お風呂ね」
「うん」
私達は優君が作ってくれたご飯を、美味しく頂いた。
☆ ♡ ☆
「はぁ……」
私は今、湯船につかっている。
「優君、いつ帰って来るのかな……」
今は夜の8:00。優君はまだ帰ってきていない。
「はぁ〜……」
私はずっとため息ばっかりついている。
「優君……」
私は多分、優君に嫌われた。
大事な財布も落とすし、料理も掃除も洗濯もできない。教室ですぐに兄妹になった事もバラしてしまった。
「仲良く、なりたいんだけどな……」
優君は多分 ”あの子” だ。ママが再婚するって聞いた時、相手側にも子供がいると聞いて写真を見せてもらった。
その時にすぐに分かった。写真に写っているのは私がずっと探していた ”あの子” だと。
「はぁ〜……やっと会えて、仲良くなりたいと思ったのに……着替えくらい、優君になら見られてもいいのに……」
優君は、この家での事全て、私達を優先すると言った。
今朝のように着替えを見てしまったり、ばったり会ったりしないようにする為なのは分かる。分かるんだけど……。
「それじゃ、一緒に暮らしてるって感じがしないよ〜……それに、そういうハプニングがあれば、優君の裸だって……」
わ、私は何を考えてるの!?
確かに優君の裸は見たい。でも、優君を困らせたくはない。
今朝の事を沢山謝ってくれたけど、私は嬉しかった。
優君に私の事を見てもらえて。
あの時、私はパンツを穿こうとしていた。なので、ブラをしてなかった。
「おっぱい、見てもらえたのかな?」
私はおっぱいが大きい。Gカップある。
男子からの視線は常におっぱいに集まる。
それが私は嫌だった。でも、優君になら見てもらいたい。
見て、触ってほしいと思う。
「はぁ〜……優君は、大きいおっぱい、好きかな……?」
私はお湯に浮かぶおっぱいを持ち上げ、タプタプと揺らす。
「優君……優君……優君……」
この後、お風呂が長すぎだとお姉ちゃんに怒られた。
後、のぼせた。
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