第4話 壊滅的な家事能力
「で、何か言う事は?」
「「何もありません……」」
湊さんと鈴さんは、リビングで正座をしていた。
別に俺がさせた訳じゃない。二人が自主的にしたのだ。
まぁ、したくなる気持ちも分からんでもない。
だって──、
「まさか、二人とも家事が全くできないとは……」
そう。二人は全く家事ができなかったのだ。
前話の最後に、元気よく「料理」と言っていたので、俺は冷蔵庫にある材料で簡単でいいから料理を作ってもらうことにした。
だが、湊さんは包丁の持ち方すら知らずに野菜を切って指を怪我するし、鈴さんは野菜を洗わずに、皮も剥かずにフライパンにぶっこみ、さらには肉を小さく切ったりもせずにフライパンにぶち込み、最大火力で焼き始めた。
しかも、油を大量に入れたのでフライパンから火柱が立ち上がり大騒ぎ。
料理は駄目だと、洗濯をやると言って、タグも見ずに適当に洗濯機にぶち込み、洗剤やら柔軟剤やらを大量にぶち込み、スタートボタンを押した。
まぁ、どうなるか予想はできるよね。泡が溢れ、洗濯機が壊れた。そして、俺の服も全滅した。
それならと掃除を始めようとしたのだが、湊さんが掃除機を起動させると、いきなり机の上を掃除しようとした。
慌てて止めると、鈴さんがバケツと雑巾を用意していたらしく、そのバケツをひっくり返し、リビング一面が水浸しに。
湊さんは、なぜかその水を掃除機で吸おうとして、水の上で掃除機を起動。
掃除機は御臨終になった。
たったの一日で、洗濯機と掃除機のツートップが壊れるという事件が起き、冒頭に至ると言うわけだ。
正座を進んでしたくなるのも、分かるよね。
「はぁ〜。とりあえず、普通に座って。女の子を正座させてるって、なんか精神的にキツいから」
「「は、はい……」」
俺がそう言うと、鈴さんは体育座りに。湊さんは女の子座りになった。
体育座りは、際どすぎるから止めてぇ〜!
ううん! んなことより。
「家事は俺が全部やります」
「え……!? でも、それだと優君に負担が……!」
「何かされる方が、負担になるんですけど」
「うっ……ごめんなさい……」
鈴さんは、シュンとした表情を浮かべ、項垂れてしまった。
なんか、ごめんなさい。
「お二人は、何も気せずに自由にしていてください。さて、そろそろ学校に行かないと遅刻しちゃいます」
「あっ! そうだね!」
「お昼は購買で買うことになりますが……大丈夫ですか?」
「「こう、ばい……?」」
え……。なんか、二人とも首を傾げてるんだけど。
購買を知らない……?
ま、まぁ、購買がない学校の方が多いから知らなくてもしょうがないか。
「はい。おにぎりとかパンとか、生徒でも買いやすい値段で色々売っている所です」
「「なるほど」」
「財布とかなければ俺が出しますが……」
「あ! それは大丈夫! ちゃんとカバンに入ってるから!」
「なら良かったです。じゃあ、着替えて行きましょう」
「はい!」「えぇ」
そうして俺達は、制服に着替えて出発の準備をし始めた。
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