第21話 引っ越し初日のバタバタ
「失礼します」
「し、失礼しま〜す……」
私と鈴は、一軒家の家の玄関の鍵を開け、中に入る。
「これってさ、端から見たらかなり怪しいよね……?」
「うん。まぁ、鍵を持ってるからそこまで怪しまれないけど、ここにすでに人が住んでる事を知ってる人が見たら、かなり怪しいだろうね」
そう。私達が入室したこの家には、すでに人が住んでいる。
表札には『梁矢』と書かれている。
「意外と綺麗だね……」
「鈴、それ普通に失礼だよ?」
「い、いやだってさ、男の子の一人暮らしって散らかってるイメージがあるんだよ……ネットで調べてもそう出てきたし……」
「勝手なイメージと、ネットの不確定な情報に踊らされるのはやめなさい。鈴にそのつもりがなくたって、相手がそれを聞いたり知ったりしたら、深く傷つける事になるかもしれないんだから」
「は、は〜い……」
私は朝から鈴に喝を入れつつ、二階に上がる。
この家に住んでる人は、まだ寝ているだろうから起こさないようにそっとだ。
「鈴はどこ使う?」
「じゃあ〜……ここ」
「うん」
階段を上がると、真正面にクローゼットがあった。
そして、少し広い廊下があり、階段から見て左側に二部屋。そして、右側に三部屋ある。
トイレは右側の三部屋のさらに先にある。
この家に住む人は、左側にある二部屋の内の一つを使っているようだ。
鈴は右側の三部屋の内の階段に最も近い場所を選んだ。
「お姉ちゃんは?」
「私は……」
正直迷った。鈴の隣の部屋でもいいんだけど……。
「私はこっちにする」
「ん」
私は左側の部屋、つまりこの家に住む人の部屋の隣の部屋を選んだ。
どうしてなのかよく分からなかったが、隣にしたいと言う気持ちが溢れてきた。
「じゃあ、部屋も決めたから、とりあえずお風呂入っていい?」
「部屋に荷物を置いたら、入っていいよ。物音は立てずにね?」
「は〜い」
鈴は右側の部屋に向かった。
私も左側の部屋に向かい、細心の注意を払いながら部屋に入った。
大きな肩掛け鞄をそっと床に置き、中からTシャツを一枚取り出す。
「多分まだ起きないから、これでいっか」
私は着ている服(左肩とおへそを出したトップスと、タイトなミニスカート)を脱ぎ、下着姿になる。
そして、Tシャツだけを着て、部屋を出る。
鈴は……お風呂か。
「早いな」
一階に降りると、洗面所の方から気配を感じた。
少しするとシャワー音が聞こえてきたので、お風呂に入ってるのが分かった。
「トイレ行こう」
私は一階にあるトイレに向かう。
「ふぅ〜」
パンツを下ろし、便座に座る。
何気に荷物を持って移動って疲れるよね。
と言うか、再婚しようと思ってるって言った次の日に婚姻届出して、その次の日に引っ越しって展開早すぎでしょ。
今日持ってきた荷物以外の荷物は、後日届くらしい。
ベッドとか机とか無いから、それは必要だよね。
布団もないから、荷物が届くまでどうするか考えないと。
お母さんも一緒にこの家に来るのかと思ったら、再婚相手がいる海外に向かっちゃうんだもん。
行動力ありすぎだって……。
と、私がトイレで色々考えていると──、
ガチャ。
と、トイレのドアが開く音がした。
え? 鍵閉め忘れてた?
前を向くと──、
「あ……」←(私)
「んえ……?」
そこにはこの家に住んでいる人、梁矢 優君がいた。
優君の視線が、私の顔から胸、腰、下半身に流れていき、その次の瞬間、顔を真っ青にして──、
「う、うわぁあああああ! す、すんません!?」
と、叫びながらドアを閉めて、去って行った。
「……………………」
私はゆっくりと立ち上がり、パンツを穿く。
そして、トイレを流し廊下に出る。
「っっっっっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
私は顔を火が出るんじゃないかと言うくらい真っ赤にして、その場にしゃがみ込む。
「い、いいいいいいいいいい今、み、見られたよね……!? あの視線の動きからすると、絶対見られたよね……!?
顔を両手で覆う。
触れて分かる。顔が熱い……!
「な、なんで私鍵かけてないの……!? 変な所見せちゃって絶対引かれるよ……!?」
これから一緒に生活していくのに、初っ端からこんな所見せたら、気まずくなって壁作られちゃうよ……!
「しかも、着替えとかならまだしも、トイレを……しかも出し──」
そこまで口に出して私は口を押さえた。
それを口に出したら、恥ずかしさと申し訳なさでどうにかなってしまいそうだから。
「うぅ〜……どうしよう……優君の顔、上手く見れるかな……?」
とんでもない所を見せてしまった……本当にごめんなさい……優君……。
「後でちゃんと謝ろう」
そう決意したけど、その後にもっと謝罪しなければいけない事になるとは、この時の私は思ってもみなかった。




