第20話 再婚の馴れ初め
今日は11月29日(土)。
珍しくお母さんがお仕事お休みで、お母さんと私、妹の鈴の三人でファミレスに来ていた。
「三人で外食なんて久しぶりだね〜! めっちゃ最高〜!」
私の隣で、鈴がメニューを見ながらウキウキしていた。
まぁ、無理もない。無理もないけどちょっと静かにしようか? ここ、お店だから。
「ねぇ、二人とも」
「ん?」「ん〜?」
お母さんが緊張した面持ちをしている。どうしたんだろう?
「あのね……ママ……再婚、しようかな〜って思ってるんだけど……」
私はテーブルの上に置いてあるスマホを持ち、鈴は視線をお母さんからメニューに戻す。
「ふ〜ん。すれば〜」
「おめ〜」
……………………………………………………………………
しばらくの無言が続いた後──、
「今、ママ結構覚悟決めて重大な事言ったんだけど、反応薄くないかな娘×2ぃぃぃぃぃ!?」
お母さんが叫んだ。
「ちょ、うるさ。ここお店だから静かにしてっ!」
突然大声出さないでよ〜……。ほら、お客さんも店員さんもこっち見てるじゃん……恥ずかしい……。
「大声出すでしょ。ママの重大発表をあなた達がそっけない態度で流したんだから〜」
「いやまぁ、そこまで驚く事ではなかったから」
「え?」
私はスマホをテーブルに置いて、お母さんを見る。
「最近、お母さん楽しそうだし、彼氏でもできたなか〜って思ってたから。再婚もそろそろかな〜って、鈴と話してたの。ね?」
「うん」
隣の鈴はずっとメニューを見ていた。
いつまで見てんの? さっさと決めなよ。ってか、さっきハンバーグ頼んでたような?
「そ、そうだったの……でも、いいの?」
「何が?」
「だって……再婚よ? 知らない人と急に家族になるのよ? 嫌じゃない?」
「ん〜……別にそこまで気にしないかな〜。確かに、急に知らない人と同居とか家族とか言われると戸惑うけど、嫌とか無理とか、そういうのはないかな」
「鈴は?」
「私は別に〜。ママが幸せならそれでいいんじゃん?」
鈴、たまにはいいこと言うね!
「私も同じ。お母さんが幸せになってくれるなら、彼氏でも再婚でもいいと思う」
「ふ、二人とも……! ありがとう……!」
「それで? その人とはどこで知り合ったの?」
「それ聞いちゃう?」
「うん。聞きたい」
「彼……誠さんって言うんだけどね。誠さんとは会社で出会ったの」
「社内恋愛だ」
「うん。誠さんが三年先輩で、私の教育指導係になって」
いつの間にか、隣でメニューとにらめっこしていた鈴も、お母さんの馴れ初めに興味津々で真剣に聞いている。
「仕事の時間だけじゃなくて、休憩時間やお昼休みも一緒に過ごしている時に、お互いの事を話したりするようになったの。そこで、お互いにバツイチで子持ちって事が分かって、一人で育てていく大変さとかを共感し合いながら話してたの」
なるほど。相手の人も子供がいるんだ。
「お相手の人は子供何人いるの?」
「二人だって。男の子と女の子。男の子の方は鈴と同い年よ〜」
「え! 弟って事!」
「ん〜ざんね〜ん。男の子の方が鈴より誕生日早いから鈴は妹で向こうがお兄ちゃんだな〜」
「え〜……」
鈴がテーブルの上に突っ伏して、頬を膨らませる。そんなに下に欲しい? あれ? でももう一人いるんだよね?
「女の子の方は?」
「確か……今は十二歳くらいだって言ってたかな」
「妹だーーーーー!」
「うっさい」
「でっ!?」
隣で両腕を上に上げながら叫ぶ鈴の頭に、げんこつを落とす。
だから、ここお店だっての!
「そう言えば、お母さんずっと息子がほしかったって言ってたよね」
「そうなのよ〜! 女の子を育てるのも楽しいけど、やっぱり男の子も育ててみたいな〜って思ってて〜! 女の子とは違う思春期の時期とか〜声変わりとか〜体験してみたくて!」
「じゃあ、よかったね」
「うん! 十五歳だから声変わりは終わっちゃってるだろうけど、やっぱり思春期の男の子と言えば……ね?」
お母さんの目がいやらしく光ってる……。
あ、そうか。
「なるほどね」
「ん〜? な〜に?」
「思春期の男の子って言えば、エッチなDVDとか本とか持ってるものでしょ? それを親に見つからないように隠したり、コソコソしたり〜。そのコソコソを見るのが息子を持つ母親の楽しみでしょ〜♪」
「そうなの〜?」
「まぁでも。分からなくはないかも」
「でしょでしょ!」
弟、か……結構いいかも♪
「それで〜お互いに共感し合ったり愚痴り合ったりしてる内に〜だんだんと気になり出して〜……」
「好きになって告白したと」
「な、なんでママが告白したって分かったの〜!?」
「分かるよ〜。だってお母さん、告白とかプロポーズとか全部自分からしたい派の人じゃん」
「さすがは娘! ママの事よく分かってる!」
お母さんは、男の方から告白するべきとか、プロポーズするべきとか、そういうのに囚われたりこだわったりしない。
むしろ、自分からできるならする。したいならする。と言う考えの人だ。
こういう人が増えれば、男女差別とかももっとなくなると思うんだけどね。
「ねぇ、ママ」
「ん〜?」
「写真とかないの〜?」
「あるわよ〜。えっとね〜……あった。はい」
「「ん〜?」」
お母さんがスマホの写真フォルダを開いて、写真を見せてくれる。
中学の入学式なのか、制服を着た男子とスーツを着た男性が写ってる。
お父さんだと思われるスーツの男性は、満面の笑みを浮かべてるのに対し、隣に立つ制服姿の男子は視線を右斜め下に流し、少し不貞腐れている。
ってあれ? この男の子、どこかで見たような……。
「あ……」
隣の鈴も、男の子に見覚えがあるようで目を見開いている。
「あれ? 妹さんのは?」
「え!? え、え〜っとね……それは、その……え〜……あった! はい!」
「「わぁ〜可愛い〜! ………………」」
お母さんが見せてくれた妹さんの写真。それは──、
「なぜに赤ちゃんっ!?」
鈴がそうツッコむ。
そう。お母さんが見せてくれた写真は、一歳くらいの女の子の写真だった。
「もしかして、大きくなった写真がない?」
「そ、そそそそそそそそそそうなのよ〜! 写真を撮られるのが嫌みたいで、撮らせてくれないんだって〜!」
なるほどね。そういう……。
「ママが再婚したら、この男の子と一緒に暮らしたりする事になるんだけど、平気……?」
「もち!」
「うん。大丈夫。ってか、私達の事は気にしないで、お母さんのしたいようにしてよ」
「で、でも……」
「私達ももう高校生なんだから、お母さんもそろそろ自分の幸せを考えてよ」
「湊……ありがとう……!」
「ちょ、泣かないでよ〜!?」
お母さんは泣き出してしまった。
もう〜この人は……涙もろいんだから……。
まぁ、そこがお母さんのいいところなんだけど。
鈴と湊の母(優の義理の母)と、優の父との馴れ初めが語られました。
詳しい設定も作ってあるので、いつかこの二人の馴れ初めをしっかりと書けたらなぁと思っています。
ですが、今は二人よりも、優やヒロイン達のお話優先です!
湊のお話を数話かけて書いていく予定ですので、楽しみにしていてください!
次話をお楽しみに!
(次話は時間を遡り、湊と鈴が優の家に引っ越して来た日の事を書かせていただきます! 湊視点です♪)




