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第4話: ファルカス王国の陰影

ファルカス王国、首都アストレアの壮麗な王宮。その中央に位置する広大な玉座の間では、王と彼の臣下たちが緊迫した議論を繰り広げていた。




王座に座るのは、ファルカス王国の現国王、バルドル・ファルカス三世。中年ながらも鍛え抜かれた体格に威厳を漂わせる彼は、深い蒼色のマントを纏い、王国の象徴である黄金の冠を戴いていた。




「状況を報告せよ。」




その低く響く声に応じて、進み出たのは軍総司令官であるギルバート・クラウス。白髪混じりの髪を短く刈り揃え、鋭い目つきで王を見据える。




「陛下、隣国ガルドリアからの侵攻が現実のものとなりつつあります。国境地帯にはすでに数千の兵が展開しており、いくつかの村が焼かれる被害が出ています。」




「彼らの目的は何だ? 単なる威嚇ではあるまい。」




ギルバートは一瞬口ごもるが、意を決して言葉を続けた。


「ガルドリアの動きには一貫性が見られません。しかし、彼らが求めているのはおそらく……この地に眠る『エルドラ鉱石』かと。」




玉座の間に緊張が走る。エルドラ鉱石は、この王国にとって欠かせない資源であり、特に魔法道具の製造には不可欠とされている。




「やつらめ……そんなもののために民を犠牲にするというのか!」




憤慨するのは王の側近であり、王国最強の魔導士と名高いセリス・アルフェンだ。長い銀髪を揺らし、魔力の波動を周囲に放ちながら言葉を続けた。




「陛下、エルドラ鉱石の採掘場が狙われれば、我々の軍備も大きく削がれることになります。早急な対応が必要です。」




続いて声を上げたのは、戦術顧問のダリウス・フォーン。やや小柄な体格ながら、知略に長けた彼は冷静に状況を分析していた。




「ガルドリアの軍は一枚岩ではありません。内部には不満分子も存在しているとの情報があります。それを利用し、彼らの進軍を遅らせる策を講じるべきです。」




さらに、王の傍らに控えるリリィ・アストリアが口を開く。若き女性剣士でありながら、卓越した実力を持つ彼女は国王の親衛隊長を務めていた。




「陛下、私たち親衛隊を前線に派遣してください。ガルドリア軍の進軍を食い止めるため、先手を打ちます。」




その時、玉座の間の隅に控えていた二人の兵士が、小声で何やら言い争いを始めた。




「おいおい、リック。これって大変なことになってるんじゃないのか?」




「バカ言うなよ、ドン。俺たちみたいな下っ端にまで回ってくる頃には、もう全部終わってるだろうさ。」




「でもさ、もし戦争になったらどうする? 俺たち、まだ剣の稽古もロクにできてねえんだぞ。」




「だからって、いまさら逃げるわけにもいかねえだろ。とにかく、王様たちがなんとかしてくれるって!」




二人のやり取りを耳にしたリリィが微笑を浮かべながら振り返った。


「あなたたちも、いざというときは最前線で戦ってもらうのよ? 覚悟しておきなさい。」




「ひえっ、俺たち死んだな……。」




「おい、縁起でもないこと言うなよ!」




そのやり取りに、王座の間にわずかだが笑いが広がった。




一方、隣国ガルドリア王国の軍議も同じように熱を帯びていた。




長いテーブルを囲むのは、ガルドリア王オズワルドとその側近たち。オズワルドは薄い金髪と鋭い青い瞳を持つ美貌の持ち主だが、その瞳には冷徹な光が宿っている。




「ファルカス王国が誇るエルドラ鉱石の価値は計り知れない。我々がそれを手に入れることができれば、この大陸の覇権は我が国のものとなる。」




王の言葉に頷いたのは、彼の忠実な参謀であるラウル・グレイ。痩身で冷静な彼は、ガルドリア軍の戦術を練る役割を担っている。




「陛下、現在の我々の戦力は十分です。しかし、ファルカス王国の魔導士部隊が厄介です。セリス・アルフェンという人物には特に警戒が必要かと。」




さらに、戦場を指揮する若き将軍、カイン・ベルナールが声を上げた。


「魔導士部隊など恐れるに足りません。こちらの重装騎兵がいれば、あの程度の防衛線はすぐに突破できます。」




その横で控えていたエリナ・フロストが鋭い声を放つ。彼女はガルドリアの特殊部隊を率いる女性であり、冷静な判断力と優れた戦術眼を持つ。




「ベルナール将軍、軽率な行動は禁物です。ファルカスには我々の想像を超えた戦力が潜んでいる可能性もあります。」




オズワルドはその言葉に満足そうに頷き、最後に全員を見回した。


「全軍に告げよ。ファルカスへの進軍を始める準備を整えよ。ただし、油断は禁物だ。」




こうして、二つの王国は戦争という破滅への道を歩み始めた。

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