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はじめまして、猫様。  作者: 西藤
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18.王との対峙

エレン隊長に先導されて入った広い部屋は壁一面に金の装飾が施されていて、その壮麗な光景に僕は思わず息をのんでしまった。

部屋の中央には大きな長方形の机が据えられ、両サイドには豪華な身なりをした男達が座っている。おそらく彼らが国の中枢を担う大臣で、その一番奥、壁に掲げられた大きな紋章入りの旗の前に鎮座している男性がこの国の王という事になる。

すぐにその場に平伏するように言われたのではっきりとは見えなかったが、金色に輝く椅子に凭れるように座る様は、どことなく覇気がないように感じられた。

声を掛けられるまで何も喋るなよ、と小声で僕に伝えた後、エレン隊長は後方に下がっていった。

…ここからは、僕一人だけの戦いだ。


と意気込んでいた僕だが、すぐにその気合いは空回りに終わった事を悟る。

「え~…そしてその帰路…彼の者が魔物《デモ―ヌ》に出くわしたのはウイトを出発して1時間後の事だそうで…」

始まったのは、僕が今までに答えた証言を一人の官僚らしき男がひたすら読み上げるというイベントだった。列席している王や大臣へ報告する為なのだろうが、これがとにかく長い。いや、僕が一生懸命答えた結果だから仕方がないけど、全部読み上げるのに30分以上はかかっただろう。

「報告は以上となります。証人、内容に間違いは無いか?」

「…ご、ございません!」

不意に声を掛けられて少し慌てたが、僕ははっきりと答えた。

「それでは、証人に質問がある方はおられますか」

来た…!と僕は身構えたが、その場にいる誰もが沈黙してしまった。

…え?

ちょっと待って?

僕に聞きたい事、無いの??

どんな質問でも精一杯答えて、猫達の処分を回避させようと覚悟を決めてここに来たのに、これでは何の力にもなれないまま終わってしまう。

そこで気が付いた。そうか、この場にいる人間は、もう結論が出ているのだ。

実際に猫に出会って、今までの顛末を全て見てきた僕の証言などどうでも良いのだろう。

現に証言が読み上げられている途中、誰かが欠伸をかみ殺す音が聞こえた。

緊張感持てよと思ったが、既に結論が出ているのならこれほど無意味な時間も無いだろう。

磨き抜かれた美しい大理石の床を眺めながら、猛烈に僕は焦る。

焦って、焦って、沈黙に潰されそうになった時…


ふと、ハリー曹長の腕の中でへそ天をしているクロの姿が大理石の床に一瞬、映った。

はっとして我に返る。

完全に気のせいだ。だめだ、緊張しすぎて頭が変になっている。

でも、一瞬見えた記憶の欠片に、僕は気合をもう一度入れ直してもらった気がした。

…そうだ。そうだよな。

僕はここに、戦いに来たんだよな。

やっと僕は腹を括った。


「―どなたもございませんか。それでは証人、下がってよろしい」

「お待ちください」


やや被せ気味に僕は答えた。

「証言に間違いはございませんが、まだ申し上げていない事がございます」


ジャン、と窘めるように僕の名を呼ぶエレン隊長の声が小さく聞こえたが、僕は止まらない。

ずっと下げていたままだった頭を僕は上げた。

不敬だ、と声を上げる大臣達のその向こう、玉座に凭れるようにして座っている初老の白髪交じりの男性を僕は正面から見据えた。


「申してみよ」

大臣たちを手で制するようにしてから、しわがれた声で王は僕に答弁を許可してくれた。

その恩に深く感謝しながら、僕は話し始めた。


「申し上げます。猫という生き物は非常に縁起の良い生き物なのです。これが国に現れたという事は国家の安寧と繁栄を告げるものであり、素晴らしくめでたい吉兆の前触れである事を王様にお伝えしたいと思います」


僕の意外な告白に大臣達がどよめく中、生気を失っていた王の目が僅かに見開いたのを僕は見逃さなかった。

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