自分が作った世界に来てしまった件について
「ふふふ。ここはやはり四天王を配置して、この大陸には六天と呼ばれる奴等を配置してーー」
「なに!?もうポイントないのか!?ック・・・課金だ!課金!!よし!こっちは砂漠にして、その砂漠は世界に5体しかいない龍の1匹、砂龍を配置!よし!裏設定でドラゴンは実は人間好きにして・・・」
「砂漠の向こうは氷の世界にしよう!ここにも氷龍を配置して・・・よし!こっちとこっちの大陸に人間を配置して、ここをラグナ帝国にしよう!」
「なに!?またポイントが足りないか・・・」
3ヶ月後・・・・
「めんどくさ!もう飽きた!課金したけど飽きるものは飽きる!しょうがない!やーめた!」
オレは袋田優 28歳だ。少し前に会社の後輩に面白いゲームがあるから一緒にやりましょう!と誘われて、紹介コードを書き、とりあえずダウンロードしてみた。
このゲームは自分で惑星を作り、色々設定を作ったり、裏設定を作ったりと自由度が高く、かなり有名なゲームらしい。
モブのキャラクターも被りなしで作られたり、建物も被りなし、魔法やなんかも自分で作ったり派生させたりと好きな事を好きなようにできる、MMOゲームのような感じだ。
3ヶ月程前に始めたゲーム・・・あぁ。ハマった。見事にハマった。だが、子供の時のようにゲームに熱中するという事はなくなった。ある程度のゲーム用語なんかは知ってたりするが、大人になると何故か自然とゲームはやらなくなってしまう。
このゲームもそうだ。最初はかなり熱中して初月から5万も課金して色々買い揃えた。
そもそものこのゲームの目標というかゴールはなんぞや?と聞かれるとゴールはない。ただ自分が好きなような世界を作り、それを眺めるゲームだ。
昨今ではゲームもアニメ、マンガ、映画でもsfファンタジーが何処もかしこも流行っている。
このゲームでもそうだ。魔法のある世界に自分が作ったキャラを投入して悪役になったり神紛いな遊びをしたり、住民と紛れて生活したり、国を作り王様になったりと色々できるゲームというのが売りだそうだ。
確かによくできたゲームだと思う。こんな育成ゲームは他にないと思う。特にAIが優秀だ。オレはよくあるファンタジーな世界を作りたく色々裏設定がある世界を作ってみた。人間が居て、魔物や魔族や魔王、人間界最強の四天王とか黒歴史いっぱいの設定なんかもやってみた。
そして、オレはなにか?オレは龍が住む砂漠、氷、森の大陸を更に進んだところにある、島に1人住んでいる魔法、武術を極めた孤高の原初の魔王という設定にしてみた。
魔法の名前やスキルの名前なんかも細かく自分で作れるゲームだがさすがにそこまで決めていると設定だけに時間がかかりすぎるため、魔法名やスキル名、大陸名なんかはこのゲームのAIに任せる事にした。
そうやって始めたゲーム。当初はリアルタイムと同じように進めていたが、いかんせん、そんなのじゃ中々進まないため、オレは50倍速オートプレイをしていた。後輩なんかは100倍速プレイらしい。
まぁプレイ速度はどうでもいい。オレは飽きた。色々とゲームをしながら新しく設定やストーリーを作れたりするがオレはAIに任せていた。男は面倒なゲームは嫌いなのだ。そして気付けばリアルマネー15万は入れたゲームをとうとうアンインストールした。
オートプレイにしていてもオレが作ったキャラは孤高の魔王にしたせいか何もしないのだ。そりゃ飽きるさ。
そして、ゲームを紹介された後輩ともいつしかゲームの話題すらでず、変わらぬ日常を過ごしていると・・・ある日の夜・・・仕事が終わり、1人で晩酌をして寝ようとした時の事だ。
急に魔法陣?のような紋様が浮かび上がりオレは慌ててしまうが身体が宙に浮き・・・
「どこだここは〜〜〜!?!?!?!?」
気付けば見知らぬところに、見知らぬ男といた。
いや、待て!ゆっくり考えろ!まずあの魔法陣はなにか!?これは夢か!?んなわけはない!そもそもこの男は・・・いや・・・この家にも見覚えがある。
「成功か」
スパコンッ
思わず、初対面の男に頭を叩いてしまった。
「成功か。じゃねーよ!!」
「創造神様!あなたが世界に手を加えなくなって1500年は経った。私はこの孤高の島で魔法を極め、武術を極め、巷の竜とも語り合い、正に創造神にしかなし得ない創造魔法を開発した。そして、見事それは成功した」
おいおい・・・叩いたのに無視かよ!?それに何か勝手に語り出したぞ!?しかも此奴が誰か分かった。それにここがどこかも分かった。少し前にアンインストールしたゲームの世界で、この男はオレが操作するキャラの原初の魔王だ・・・。
「いやいやいや・・・どういう事だよ!?何でゲームの世界に転移させられるんだよ!?どうやって帰るんだよ!?」
「やはり・・・。神は我等の世界の事を盤上のゲームというくらいの認識か。あなたは、この世界の歴史をご存知か?あなたが去って、どのようにヒューマンや獣人、精霊、魔族が歴史を紡いで来たかご存じなのか!?」
「いやそんなの知るかよ!!」
「無責任・・・創造神とは無責任なのか」
待て待て。これは悪い夢なのか!?こんな事が有り得るのか!?
「まずは聞いてほしい」
そして、この男・・・まぁオレが作ったキャラだが、この男が語り出した。凡そのこの世界の歴史だ。
ほぼほぼ、世界観はAIに任せていたわけだ。そもそものオレの方針としては確か・・・よくあるファンタジーな世界を目指すようにしていたような記憶がある。だからなのか、この世界もラノベや昨今のアニメであるような歴史だ。
元は全種族、知能がある種族は手を取り合い助け合いで生きて来た。だが、魔法がある故に科学は発展せず文明は停滞し、他の種族よりヒューマンは知能が高く、他の種族を使役するようになった。そのような国が色々出て来て、いつしかヒューマンは国同士で争うようになった。数多の国と国が戦争し、疲弊する関係のない種族。民。
科学が発展しなかった故の魔法大戦。魔法に長けた種族は刈り取られ、戦争に無理矢理参加させられる。
奴隷狩り、人身売買などいつしか、それを推奨する国まで出て来た。
「私はこんな世界を求めていなかった。私は創造神に最も近い存在。私が世界の敵となり、世界を一つに纏めようともした事がある」
「共通の巨大な敵が現れたら一枚岩になるみたいなあれか?」
気付けばオレはこのオレが作った男の話、この世界の歴史を真剣に聞いていた。
「その通り。だが、それは違っていた。確かに国同士の戦はなくなった。だが、奴隷は更に増え、ヒューマンと他種族が混じった新たな人種まで現れた。魔人だ」
魔人・・・オレがゲームで遊んでいた頃はそんな種族は居なかったと思うけど・・・。
「この魔人とはヒューマンの知恵、魔法に長けた種族・・・主にエルフ族やピクシーやサラマンダー、魔族と交わった種族だ」
「待ってくれ。そんな強い種族が居るなら何で人間に狩られてしまうんだ?」
「さっき言ったようにヒューマンは知能が高い。この首輪やミスリルクリスタル。この二つはヒューマン以外の種族の魔法を封じたり、嵌めた者に隷属させる装置だ。これを作ったのが魔人だ。いくら強い者が居ても幾千、幾万のヒューマンに襲われるといつかは負けてしまう。創造神・・・あなたが作った世界はヒューマンが1番繁栄するようになった。それがダメだとは言わない。だが、あなたは誰にでも平等でなくてはならない存在だ」
「その意味は?」
「ヒューマン以外の種族は中々子を成せない。だが、ヒューマンの雄は簡単に種を仕込める。そしてそれが実る。これはつまりヒューマンの繁栄を意味する。いつしかヒューマンの数が多くなり、その他を淘汰する。私はそんな世界が嫌いだ」
「そう言われてもオレはどうすればいいんだよ!」
こんなに熱くなったのはいつ振りだろうか。たかがゲームの事だと思っていたけど、転移?させられて、オレが作ったキャラに、転移させられた!帰れない!って事はどうでもよくなってきた。
プシュ〜〜〜〜〜
オレが少し考えていると、オレが作ったキャラ・・・原初の魔王から煙が出てきた。
「全てを私の口からは言うまい。私は疲れた。あなたが去って1500年の時を見守って来た。寿命のない私はあなたをもう一度この世界に顕現するよう魔法を考えた。これは私にしか成し得ない事だからだ。そしてその方法を見つけた。私の魂、存在、その全てを賭けた壮大な一代魔法だ」
「はい!?なんて!?なんの事だ!?」
「ふん。神とは斯くも気まぐれな存在なのだな。私が蓄積した全てを創造神・・・あなた様に受け渡しします。いや・・・お返ししますというのが正しいか」
「はぁ〜!?待って!待ってくれ!オレはどうすればいいんだよ!?」
「神がどのような世界であなたがどのような仕組みで生きているかは知らない。知りたくもない。あなたが神の世界に帰りたいと思うならば、私の存在が消えた後に、あなたを呼び出した魔法で帰られるでしょう。ただ願わくば・・・あなたが気まぐれに作ったこの世界の秩序を正して欲しい。私からの願いはこの一つ。時間が来たようだ。あなたが作った世界の理の外の魔法。私は無の存在になれる・・・」
ブォォン
男がそう言うと、丸い球体に変わった。
「後の事はあなたにお任せ致す。では永遠のお別れに・・・」
ポンッ
男がそう言うと、球体が消え、オレ1人となった。そして突如として襲われる頭痛・・・
「痛い!痛い!痛い!頭が・・・割れる・・・掻き回される・・・」
オレは1人で悶え、意識が遠のき・・・その場で倒れた。