いつまでも君と共に居られたら
公園のベンチに腰掛ける。
冷ったとした感触がお尻に伝わり、思わず身体をビクつかせる。段々と木製の素材特有のじんわりとした温もりが伝わり、体の緊張が解け始める。
陽射しの暖かな気配を感じ、思わず空を見上げた。
その眩しさに目を閉じる。
瞼の向こうに確かにその存在を感じる事は出来る。
瞼越しに目を懲らす。光によって薄いピンクの色の瞼の裏を確認する事が出来るがその光を捉えることは叶わないだろう。
遮られた瞼の向こうにある存在はどんな時も世界を照らし、どんな時も人を優しさの光で暖かく包み込む。
「太陽ー!」
女性にしては少々低めのハスキー声が辺りを響かせる。
その声で近くに居た鳩が彼女の周りを飛び立つ。
白、茶色、黒、3色の羽を羽ばたかせ、自由と平和の象徴の鳥が晴天の曇りなき空に向かい、その青空に3色が混じり合う。
ショートで栗毛色の女性がピンク色のコートを着て、その大きな瞳を輝かせ、こちらを優しく見つめている。
木漏れ日から漏れた光を受けたその女性のある種の美術品、それも最上級品だ、美しさの中に気品が漂い、その美しさを陽の光の暖かな光で照らされた彼女はこの地の聖母だ。
男性がコートの裾から覗かせる手袋を外し、黒髪のパーマから覗かせる耳に装着したワイヤレスイヤホンの背をタップする。人気の若手歌手が歌う歌詞がイヤホンから少し漏れる。
今の僕の気持ちを表現した詩が風に乗り、その空気に溶け込む。彼女の耳に届いてしまっただろうか?
その歌詞は世界で一番大切な人に送る為に産まれた言葉だからだ。日本では一番最初に教えられる文字、二番目に習う文字、そしてきっとそれは、一番大切なモノ。
「I love you」