終わりの恐怖
時刻は9時を回った。12月25日、駅前に置かれた巨大なクリスマスツリーを眺めながら、粟生月茜は一人、コンビニの安いチキンを食べていた。
彼の16年の人生は幸せには程遠いものだった。
男には似合わない名前に、緑色のくせ毛という奇抜な髪形。父親は緑髪の赤ん坊を気味悪がり、離婚。母親は茜を愛したが、交通事故で彼が幼少のころに他界。義父母が預かるが、そこでの扱いは酷く、今日のようなクリスマスの日でも1000円にも満たない金を渡され、邪魔だからと追い出される始末。
160㎝もない小柄の体を縮こませながら、どこか暇をつぶせる場所を探していた。
「初めてだけど、漫画喫茶にでも行ってみるか」
金もないので、徒歩で隣町にある漫画喫茶へと向かった。人気の少ない住宅街を抜け、軽トラックが通りそうな砂利道を歩き、町へと掛かる大きめの橋を渡っていた、その時だ。
何者かに誘われるように茜は橋から転落した。彼自身も訳が分からなかった。僕は何をしているんだ?柵はある程度高くなかったか?漫画喫茶、楽しみにしてたのに、このまま、死ぬのか?嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、と逆さまの街がスローモーションに映る最中、生きたいという感情が涙とともに溢れかえった。
生物とは不思議なもので、どれだけ呪った人生であっても、突然の死を恐れるものだ。そんな思いもむなしく、頭でも打ったのか、意識はぷつりと消えた。
享年16歳。粟生月茜、第一の人生のあっけない幕切れである。




