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運命を知る同士

「ふーん。まあまあ綺麗なほうじゃない?」


 新年を間近に控えた大晦日。荷物の黒いスーツケースを玄関に置いた少女は、俺の部屋を値踏みするように見回していた。


 少女は畳の上に革ジャンを脱ぎ捨て、勝手にコタツのスイッチを入れ猫のような素早さで中に両足を滑り込ませる。


「あーぬくい。ぬくい。私ってコタツ大好きなの。この中でうたた寝する以上の快楽なんて無いわ」


 少女はそう言うと、コタツの上に置いてあったミカンを断りもせずにむき始める。俺が少女を自分のアパートに招いたのは、彼女を買ったからでは無かった。


「さっそく聞かせて貰えるかな? 君のその一年前に起こった事を」


 俺は羽織っていたダウンジャケットを脱ぎもせず膝を折り少女と向き合う。俺は少女からある事を聞く為に一晩の宿を提供したのだった。


 それは、少女が自分と同じ自分の運命を知る者かもしれなかったからだ。


「一年前。突然神様が私の前に現れたの。姿形はまるっきり覚えてないんだけどね。一つたけ鮮明に記憶に残っている特徴があったわ」


 少女はみかんを頬張りながら俺に人差し指を立てて見せた。


「······特徴って?」    


「八重歯よ。笑う口の中に見えた八重歯だけは覚えているの」


 少女は続ける。二年前、少女は原因不明の意識不明の危篤状態に陥った。幸い峠を越して夜中に意識を取り戻した少女は、ベットの脇に立つ八重歯の不審者を見た。


 その不審者は少女に信じ難い話を始めた。少女は本来、危篤状態に陥る予定では無かったらしい。神様の手違いで死に瀕した少女に詫びる為に、その八重歯の不審者は現れたと言う。


「いやあ。こっちの不手際で君には悪いことしたねえ。うちらも人手不足でねえ。忙してくてねえ。ブラックでねえ」


 八重歯の不審者は自分の事を神と名乗った後、軽薄その物の口調で喋り始めた。


「お詫びに君にいい事を教えてあげようか! ずばり自分の運命なんてどう? 刺激的だねえ。ドキドキだねえ。胸アツだねえ!」


 八重歯の自称神様は、嬉しそうに少女の運命とやらを語り始めた。それは、彼女の寿命が尽きる時は失恋した日だと言う。


「お兄さんは? やっぱり八重歯の神様に教えて貰ったの? 自分の死ぬ日を」


 少女は更にみかんを食べる為に半身をコタツに入れたままミカン箱に手を伸ばしていた。その時衣服が伸び、少女の腰元から彼女の白い肌が一瞬見えた。


 俺は、少女の白い肌を見て何故か雪を連想していた。

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