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コントロール・アウト  作者: 柴門秀文
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坑道を下る3-2

「大丈夫か。最初に見つけたんな、葉菜のせいじゃなかからな」

 最初に、葉菜が死体を発見した。葉菜がお兄ちゃんと慕っていた法然(ほうねん)明憲(あきのり)だった。

 暗がりで顔は確認できなかった。だが、坑道に逃げ込んだ格好と経緯からも、間違いはなかった。

 法然と一緒に、暴力団風の男が倒れていた。

『銃声の聞こえたんちゃ。二発やったわ。坑道の崩れていて、下に二人の倒れとった。お互いに向かい合っちいたから、殺し合った結果ちゃ』

 陥没した穴の底を見ながら葉菜が説明した。スマホの淡い光が照らした光景を想像する。

 独り言のように、順平が呟いた。

「動転して深く考えられなかったばってん、二人の殺し合ったっちは、考え難いんじゃなかかいな」

「どげんいうこつやか。殺し合ったから、向かい合っち倒れとったんじゃなかちゃか」

 思いがけない発言に、健次は思わず引き込まれた。

「二人とも射殺しゃれとったんじゃ。後頭部に入射口の見えたから、お互いに殺しおうたんじゃなかちゃ」

「断定はしきらんちゃね。先輩は、何ば根拠に話しよるんですか」

 健次は素直に反応した。順平が、「ふん」と、自慢げに鼻を鳴らした。

「俺はサバイバル・ゲームに参加しちょる。神領域んリーダーにレクチャーばしてもろうておるけん、様々なケースな思い浮かべるこつのできるちゃ」

「そいや訊きますばってん。殺しゃれとった一人の明憲兄ちゃんだっちは、限らんやろうっち思います」

 健次の質問に、順平が口籠った。サバイバル・ゲームに関する話題以外は不得意だった。

「そいは訊く相手の違うとるな。最初に確認した葉菜しゃんに訊くべきだ」

 急に話を振られて、葉菜が慌てた。

「間違いないちゃ。確認したばい。確かに、本人やったもの」

 強く主張する葉菜の言葉を聞きながら、健次は首を傾げた。

「後頭部の入射口ば確認したから、顔は下ば向いとったはずたい。顔の確認は困難だっち思うんやが」

「確かに中坊ん言う通りちゃな。俺も、顔は確認しとらん」

 ようやく順平が納得した。理屈に間違いはないはずだ。

 極道に追われて坑道に逃げ込んだ。葉菜を護るために明憲が独りで坑道を戻って行った。銃声が聞こえて、死体を発見した。

 顔の確認をしないまま、明憲だと思い込んだ可能性がある。

〈だけん、顔ば確認しなかっただけで、死体の明憲兄ちゃんでなか証明にもならん〉


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