*ステージ-6*
───朝。
雲1つ無い青空から伝わる太陽の光が、愛璃の部屋から差し込む。照らし出された部屋の中では、すでに新しい芸能科の制服に身を包んだ愛璃が、鏡の前で自分の姿を吟味していた。
(服装OK!髪型OK!今日の私もBeautiful♪)
高く揺ったツインテールを揺らしながら、愛璃は微笑む。
1階に降りると、なれた手付きでトーストにマーガリンを塗り、頬張る。
愛璃の両親は、愛璃が幼い頃に交通事故で亡くなり、今は叔父と叔母からの仕送りでやりくりしている。そのため、この家には、愛璃以外の人が住んでいないのだ。
トーストを食べ終えた愛璃は、軽やかな足取りで2階へ上がりバッグを持つと、すぐさま外へ駆け出した。
ひだまり学園は、愛璃の家から徒歩15分の場所にあるため、愛璃は毎日徒歩で通学している。芸能科の校舎は、普通科の校舎と完全に分離しており、入る校門すら違うため、普通科の生徒が芸能科の生徒に会うなんてことは、ほぼほぼないに等しい。そのため、愛璃は、芸能科の生徒を見るのも、校舎に入るのも、これが初めてなのだ。
(ここが、芸能科の校舎……!)
愛璃は、校門前で足を止めた。白い壁に、銀で細かな装飾がほどこしてあり、なかなか気軽に入ることはできなそうな感じを漂わせている。
……が、いつまでも校門前に仁王立ちしているわけにはいかないため、愛璃は勇気を出して校門をくぐった。そして、左を見たり、右を見たりしながら、玄関へ進んでいった。
「おい、あの子誰だ?」
「昨日まで芸能科には、あんな子いなかったわよね……。」
「あの子、人形みたいでチョ~可愛い~!!」
芸能科の雰囲気に飲まれていた愛璃が、周りのそんな声に気付くことはなかった。
そして、愛璃は今、教室の前で、先生に呼ばれるのを待っている。
(き、きんちょーするー!!)
「澄原さん、そろそろ入ってくれる?」
「はっ、はいぃ!!」
そんな愛璃を、担任の先生が無慈悲にも教室へ招き入れた。
教室に入ると、室内が急にざわめきに包まれた。
(えっ!?愛璃何か変なことした!?)
「はーい、皆、静かに!!紹介するわね。彼女は、普通科から芸能科に編入してきた、澄は……」
ガタンッ
突如、教室の後ろの方で大きな音がした。
(えっ!?今度は何??)
愛璃が、音のした方へ顔を向けると、そこには、EITOが、驚いた顔をして立っていた。
「はっ……?澄原愛璃……!?」