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片恋トライアングル  作者: 作花恋凪
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*ステージ-5*

デビューライブを終え、事務所の一室に戻ってきた愛璃。そこで待ち構えていたのは、マネージャーである中島からの称賛の嵐だった。


「ちょっと、なんだったの?さっきのライブ!!凄いじゃない!あのライブの後、数えきれないほど仕事が入ったのよ!?」


やる気に燃え、目を爛々と光らせている中島に、愛璃はついていくことができずにいた。


(『なんだったの?』……なんて聞かれてもなぁ~。歌い終わったらあんな状況になってたとしか、言いようがない、というか……。)


「え、え~っ……と……」


何を言えばわからず目を泳がせる愛璃を、中島は期待を込めた眼差しで見つめる。


すると突然、部屋の扉が開かれた。


「中島さん、何やってるんですか?廊下まで声響いてて、正直少しうるさいですよ……。──って、澄原愛璃……?」


そこから現れたのは、大人気アイドル、"EITO"だった。


突然のEITOの登場に驚く愛璃を尻目に、中島は言葉を紡いでいく。


「あら、ごめんなさいね~。ちょっと興奮しちゃって!」


「まぁ、中島さんらしいっていえば、中島さんらしいですけどね……」


そう話すEITOは、先程までとのアイドルモードとは違い、どこにでもいる中高生のような雰囲気で、柔らかい微笑をたたえていた。アイドルモードでなくともどことなく笑顔やオーラがキラキラしているのは、EITOの元からのカッコよさによるものだろう。


ふと、EITOは愛璃に目を向けた。


(えっ、今ちょっとこっち見た……?)


そう思っている間にも、EITOは愛璃から目をそらし、


「それじゃ、また他の人に注意されないように気を付けて下さいね……」


と、言い残して、その場を去っていった。


愛璃は、思わずEITOが出ていった後も、扉の方をじっと見つめる。そんな愛璃を見て、中島は少しいたずらっぽい顔をした。


「彼、凄くカッコいいでしょう?そういえば、彼もあなたと同じ学校の芸能科よ?確か、年も同じはず。……言っておくけれど、アイドルのスキャンダルはご法度だからね?」


「んなっ……そんなつもりじゃ!!」


思ってもいないことを言われ、真っ赤になりながら焦る愛璃。そんな愛璃を見て軽く微笑みながら、中島は話を続けた。


「わかってるわ、冗談よ。……っと、話がだいぶ逸れたわね。私があなたを呼んだのは、ドラマのオーディションのことを伝えたくて。まだデビューしたばかりだし、こういうのは受けておいた方がいいと思うの。……愛璃、あなたはどうしたい?」


話が進むにつれて、段々と顔付きが真面目になっていった中島。純粋に愛璃のことを思ってくれているのが伝わる。


もちろん愛璃には、そんな中島を見て、オーディションを断る理由なんてなかった。


(今は、中島さんの言う通り、色々なことに挑戦して、たくさん経験値を積まなきゃ……!)


「はい!もちろん受けます!オーディション!!」


愛璃は、中島の瞳を真っ直ぐ見据えながら、決意に満ちた声で答えた。その様子を見て、中島も大きくうなずいた。


「よし、わかったわ。後のことは私に任せておいて。日程が決まったら、連絡するわね。明日は学校に行きなさい?月曜日から3日間、レッスンで忙しくて行けなかったでしょう?」


そうなのだ。月曜日から芸能科に転入したのはいいものの、今日のライブのためのレッスンで忙しく、学校に行くことができずにいたのだ。


「わかりました。では、これで失礼します!」


軽やかに立ち上がり、扉を開く。事務所を出ると、愛璃は家に向かって歩き始めた。


──頭上には、一番星が輝き、愛璃を照らしていた。

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