*ステージ-9*
「次、29番の人!移動お願いしまーす!」
ついに、愛璃の番が来た。
「は、はいっ!!」
優に連れられ、審査室に向かう。控室から審査室までの距離はそんなに遠くないが、愛璃には途方もない距離に感じられた。
(あぁ、緊張する~!春野優の前で、いつも通りの演技なんてできるのかなぁ~……)
愛璃の不安そうな面持ちに気づいたのか、優が、愛璃に優しく声をかけてきた。
「澄原愛璃ちゃん……だったよね?この前のEITOとのライブ、見たよ。あのときみたいに、愛璃ちゃんの自然な輝きを審査委員の人たちに見せつければ、大丈夫!自信持って、頑張って!」
初めて優の笑顔を間近で見た愛璃は、優の笑顔を改めて綺麗だと感じた。いつも明るく、天真爛漫なキャラでいながらも、皆を包み込む暖かさを持っている。現に今も、愛璃は優の笑顔に勇気づけられた。
「ありがとう、ございます。……見ててください、優さんの言う通り、優さんに負けないぐらい輝いて見せますからっ!」
愛璃は、そういい、微笑んだ。そして、すぐに前を向いた。さすがに、大人気俳優、春野優の顔を至近距離で長い間直視するのは、恥ずかしかったからだ。
──だから、気づかなかった。愛璃に微笑みを向けられた瞬間、滅多に表情を崩さない優が、真っ赤に頬を染めたことに。
そうしているうちに、愛璃は審査室の前に着いた。
(ついに、来てしまった。もう、後戻りはできない……だけど、大丈夫!)
「すぅ……はぁ~…………、よし!」
大きく深呼吸をし、愛璃は顔を上げた。瞳は、前のライブのときのように輝き、明るい光をたたえている。
トントンッ ガチャッ
「失礼します!29番、澄原愛璃です。よろしくお願いします!!」
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