出会い
何十年か、何年か、とにかく長い年月を経て冷凍睡眠から目を冷ましたケイ・ファイヴは自分が目覚めた施設の中を探索しようとしていた…
遺体から取ったカードキーをかざすとドアは近未来的ではないきしんだ音を出しながらやっと人一人が通れるくらい開いた。これも長い年月のために劣化し、壊れかけているらしい。
色あせた服を着たケイは銃を構えながら慎重にそのドアの間から顔を出した。外に生物の気配はしない。長い廊下の照明はセンサでケイに気づき、弱い光をともした。
さびれた通路を通っているうちにケイはこの施設の内部に関して少しずつだが思い出してきた。
「たぶん、この先に中央制御室があったよね」
ケイは不安を独り言で消しながら先を進む。
通路の突き当りにはケイの言った通り、《中央制御室》と書かれた頑丈そうな扉があった。
「開くかなぁ…」
そう言った彼の不安は的中した。カードキーをかざす場所に彼が持っているキーをかざしても、『あなたはこのドアを開く権限はありません』とドアに映し出されるだけで、ドアはうんともすんとも言わないのだ。
「どうしよう…そうだ!」
そう言うと彼はドアのキーをかざす場所に持っていた拳銃をぶっ放した。するとドアについていた照明は落ち、ドアは手で開くことができるようになった。
「うまくいった」
彼は満足そうだった。彼や同じ施設の子供は反抗しないように暴力的な表現のある娯楽は禁じられていたが、彼は職員の談話室に忍び込んで職員が見ていたスパイ映画を隠れて一緒に見ていたのだ。その映画での知識が役立ったのだ。
彼が重いドアを開くとその奥にはエレベーターとその横には螺旋階段があった。
彼は久しぶりの運動で疲れたので、エレベーターに乗り込んだ。中はこれまた近未来的で銀を基調としている。ボタンは無く、中に入ると「中央制御室に向かいます、合言葉をどうぞ」と機械音声の女性の声が尋ねてきた。
「わかんないや」
彼は正直に返した。すると、「声紋認証に失敗しました。本人確認のために警備が向かいます」という音声と警報が流れた。
「えっ…」
彼ははじめは驚いた。しかし、よくよく考えてみると警備なんてものはこの施設にはいなさそうだと思い安心し、仕方がないので螺旋階段を使い上を目指すことにした。
さびれた螺旋階段をに足をかけると、何やら先程通ってきたドアの外の方から何かが移動する音が聞こえてきた。
その音の原因を見て彼は驚いた。
なんと機械仕掛けの犬のようなものが2体、彼をめがけて走ってきているのだ。おそらく警備ロボットだろう。
ケイは焦って螺旋階段を登ろうとした。しかし、彼はつまずいてしまい、その場に尻もちをついてしまった。
そんな彼を目指して機械犬はトップスピードで走る。距離はどんどん縮まり、5メートルをきるとそれらは足を止めた。それらの背中からはハイテクノロジーな銃が現れ、彼に銃口を向けた。
その銃口は黄緑色に光り、発射の準備を始めた。
「ひっ…!」
彼は目を閉じた。次の瞬間、彼は光線の発射音を聞きながら短かった自由が終わるのを悲しんだ。
彼は覚悟した。
…………。
何も起こらない。彼は不思議に思い目を開けた。
すると彼の目の前には彼をかばい機械犬に背を向けている男がいた。男はケイより年上だろう。フード付きのマントを着ているので顔は見えない。
「大丈夫か、ボウズ? 下がってろよ」
男はそう言うと電気犬に向き、ファイティングポーズをとった。犬からは「警備ロボットに対する反抗は禁じられています。ただちに投降しなさい」と音声が流れた。
「うるせぇ犬だ!」
男はそう言うと指の先が出ているグローブで殴りかかった。
男の拳は犬の装甲を破り、内部の配線が見えた。男はその配線を鷲掴みにするとそれを思い切り引きちぎった。
機械犬は顔の目に当たる位置に灯っていた光を消し、その場で動かなくなった。
男はもう一体の機械犬に向き直り、またファイティングポーズをとった。
次の瞬間、犬は背中のキャノンから光線を発射した。男は織っていた茶色のマントを翻し、それを受け止めた。光線はマントに当たると散り、消えてしまった。
男はその様子を見ると、両拳を握りそれを振り上げた。その後、それを犬の頭めがけて振り下ろした。犬の頭は半壊し、配線や回路か見えた。男はまたさっきの様に相手の配線を掴んで引きちぎろうとした。しかし、そうしようとした彼の腕に配線が生き物のように絡まりだした。配線はきつく締まり、彼は悶え、苦しそうな顔をした。
しかし、次の瞬間彼は「洒落臭ぇ!」と叫んだ。そして続けて彼が「レビン!」と叫ぶと彼の体から電撃が発せられた。電撃は腕をつたい電気犬に走った。すると電気犬は黒こげになり、動かなくなった。
機能を停止した犬を見ながら男は「まだこんなヤツが残ってるとは…。じぁあ、他の施設にも…」とつぶやいた。
その様子を見て、ケイは「あのっ!?」と言った。その声を聞くと男は「あぁ、そうだった。ボウズ、ケガはないか?」とフードから顔を出した。男は口元にスカーフを巻いていたが、目鼻立ちですぐに若者だとわかった。なかなかにいい男だ。
「あなたは!? いったい…」
ケイはお礼も言うのを忘れて彼に質問をした。
男はスカーフを下げ、口を出しながらこう話しだした。
「俺の名前は…」