目覚め
ある日、世界に異変が起った。各地の新生児に特異な能力が授けられている例が頻出したのだ。
人々は生まれたばかりの彼らを「呪われ人」と呼び、恐怖し、秘密の地下施設に閉じ込め、高科学冷凍保存装置に入れ、科学(人間)が彼らをコントロール可能になるまで、もしくは、世界の終わりまでのどちらかまで封印することにした。
男も「呪われ人」の一人だった。
名はつけられず、物心がついた頃には最低限の教育をされた後、高科学冷凍保存装置に入れられたのだ。
彼は生まれて初めての自由を感じていた。突如として彼は長い長い眠りから目覚め、装置の外に出たのだ。装置の機能停止の原因は彼にはわからなかった。
彼が出た場所にはたくさんの装置が並んでいたが、それのどれにも人の存在は確認できなかった。彼の眠る前最後の記憶は、多くの自分と同じ年頃の子どもたちが装置に入れられていく様子だった。彼の記憶が正しければ、少なくとも20人ほどの人間はこの部屋にいるはずだ。
「おかしいな…みんなはどこにいったんだろう?」
彼の喉は久しぶりに働いたため、彼のその声は非常にぎこちなく、弱いものだった。
「っ! 声がおかしいな…」
彼の声は低く、まるで青年のそれのようだった。彼は不思議に思った。冷凍保存装置のせいだろうか。
「もしかして!?」
彼の頭には非常に恐ろしい予想が並んだ。
彼はその妄想を否定するために自分の出てきた冷凍保存装置のガラス窓の露を手で払い、そこに映る自分の顔を見た。
「ウソでしょ!」
彼はたまげた。そこに写っていたのは自分の記憶していた可愛らしい子供の顔ではなく、明らかに15歳前後の青年の顔だったのだ。
「っ………!」
彼は驚きのあまり、声が出なかった。どうやら、高科学冷凍保存装置も完璧な代物ではないらしく、ゆっくりだが年を取るらしい。その結果が今の彼だ。
彼はショックを受け、その場にへたりこんだ。周りの金属やらの劣化具合で彼が眠っていた時間が3年や4年じゃないことが推測できた。どうやら、経年劣化により彼の入っていた冷凍保存装置は停止したらしい。
数分か後、彼はうなだれるのを止め、この施設を探索することにした。彼は立ち上がり、歩き出した。裸なので少し寒い。
彼は自分に名前がないことに気づいた。これから、もし、誰かにあったときに自己紹介をするだろう。そのときに名が無いとなると色々不便なんじゃないかと思った。なので、彼は自分の名前を入っていた冷凍保存装置の形式番号から取り、《ケイ・ファイヴ》と、することにした。
ケイは錆びて今にも抜けそうな金属の床を歩いた。
その部屋の出口付近に死体があった。白骨化した遺体は服装でこの施設の職員であるとわかった。ケイは彼(彼女)?から服を剥ぎ取り、自分の物とし、着た。それに加えてケイは遺体の握っていたピストルを奪い、それをぎこちなく構えながら自分の目覚めた部屋から出た。