5話
頑丈そうな建物の中を確認すると、中は散乱していたが、家財道具等はそのまま残されているようで、まずは建物の中から確認してみることにした。
扉自体は壊れていて扉としては役には立っていないが、中に入るとリビング、その左奥に炊事場、右奥に入口があり入ってみると書斎らしかった。
「ここの本が読めれば何かとわかるかもしれんが、まぁ読めないだろうな」
床に落ちている本を手に取りタイトルらしきものを見てもさっぱり理解することはできない。
中をパラパラめくってみると、大半が文字らしきものだが、何かの図らしきものが見えた。
何冊か見てみたがさっぱりだ。
書斎らしき部屋を後にし、町の中を見て回ろうと外に出てお腹が鳴った・・・
「そういえばまだ食べてなかったな。ついでだからここを使わせてもらおう。」
朝作った味噌汁と焼き魚を食べながら書斎にあった本を見ている。
まぁ見てもさっぱりなんだけど。
食べ終わるとそのまま町の中を見て回る。
まだ建物として残っているものもあるが、崩れかかっているものが多い。
木が朽ちているものもあるので、少なくとも数年は経っているのだろう。
その中でもまだマシな建物を見つけ、中に入ってみると奥に誰かの像があった。
近づいて見てみるとどうやら女性をモデルにしているようで、右手には杖を持ち、その杖には濃い紫色をした丸い水晶のようなものが取り付けられていた。
きれいな水晶だなぁと思い触れてみると、急に水晶から眩い光が放たれた。
悠樹はまともに光を見てしまい、少しよろめくがなんとか耐え、恐る恐る目を開けると
先ほどいた場所とは違い、周囲には何もない場所と表現するしかない場所に立っていた。
「・・・へ?」
そんな間抜けた声しかだせなかったが、周囲を見てもとにかく白い靄としか言い表せない空間だった。
『おや、何年振りでしょうか。ここに訪れるものがいるのは。』
急に後ろのほうから声を掛けられ、ビクッとしてしまったが、声をかけられたほうを見てみると、やはりそこには何もない・・・いやなにも見えない空間といえば正しいのかはわからないが何もなく、誰もいない。
『ふむ。あなたはこの世界のものではありませんね。魔力の制御も何もできずただ体から駄々洩れの状態ですね。それに持っている質も量も桁違いです。少しストッパーをかけましょう。』
どこからか聞こえる声、と言ってもほぼ正面からなのだが、声がした直後に体のだるさを段階的に感じたあと、少しずつ周囲から靄が晴れてきた。
声の主からして女性なのはわかるが、体のだるさが勝ってしまい、考えることが億劫になっていた。40℃近い熱が出た時のインフルエンザ状態と似ているといえばわかってもらえるだろうか。
『ここまでストッパーをかけてもまだ漏れ出ますか。これ以上するとあなたの身がもちそうにありませんね。今は思考能力が落ちているはずです。少しおやすみなさい。じきに体がなれますよ。』
暖かな光が体を覆い、フワフワと体が舞うが何がどうなっているかも考える気力がない。
すぐに眠気に覆われ身を任せることにした。
『おや、目が覚めましたか?』
少しずつ覚醒し目を開けると見慣れぬ天井があった。
目を覚ましたばかりで整理がつかないがボーっとしながらあたりを見回していく。
大理石のような柱が数本立ち、中央の奥には机があって女性が座っていた。
「ここはどこなんだ?というかあなたは・・・誰?」
『ここはいわゆる時の間とでもいいましょうか。現世とは別の空間にあり、未来でもあり、今であり、過去でもある、そんな場所でしょうか。私はファルティマといいます。ここでは時間という概念はありませんが、人族が長くここにいることはできませんのでお話させていただいてもいいかしら?』
金色の長い髪にどちらかといえばかわいい系の顔、見た目的には二十歳前後だろうか。
一枚布を羽織っているような服装で、風になびくと色々見えてしまいそうだ。
まぁ見る限り、胸はぺったんこだが・・・
『なにか失礼なことを考えたようですが、まぁいいでしょう。まずは、あなたの現状を説明しましょう。あなた方の時間でいう2日ほど前に、地球とこの世界アークと一部がつながってしまい、そこにたまたまいたあなたがこちらの世界に来てしまったようです。本来、地球とアークは別の次元にあり、互いに干渉することはありません。それは次元の壁があるためですが、今回この次元の壁に穴が開き、地球とつながってしまったようです。今回はすぐに気が~・・・』
かれこれ30分近く話を聞いたので、端的に文章化するとこうか。
①次元に穴が開き、地球とアークがつながった。
②つながった先にたまたま俺がいて異世界にきてしまった。
③地球に帰ることは現実的に不可能。
④次元の壁を修復する際に神により修復されたが、その際に大量の魔素を使用したため、しばらくの間、この世界に干渉することができなくなった。
⑤地球と違い、魔法があるが、地球と比べて知識や技術レベルはかなり低い。
⑥こちらに来てしまい、帰ることもできないので、このアークで暮らせるように力をくれる。
こんなところか。
「それで、どんな力をくれるんだ?」