第43話 獣ノ通リ過ギタ地デ
シュンコウ率いる虎爪師団との戦いから2日。
カナタ達一行は今もフラープの街に留まっていた。
本来であれば次の街へと移動しているはずの彼等だったが、
今回、シュンコウ達が起こした殺戮の影響で街を離れる事が出来ないでいた。
館での戦いの後、橋を渡って街に戻った時、街は騒然となっていた。
それも当然だろう。なにせこの国の重鎮で自分達の領主の住む館が吹っ飛んだのだから。
橋の周囲には人だかりが出来ており、館に家族のいる者等は不安に駆られ何があったのかと詰め寄ってきた。
その後、集まった街の人々へはリシッドが説明を行い、カナタは傷の具合が酷かった事もあってコンブルと共にそのまま宿屋に運び込まれた。
瓦礫の中からなんとか発見した領主コンブル・ベシュナーは精神と肉体に受けたダメージが大きく。
聖女2人による治療で何とか一命を取り留めたが、傷が癒えた今も意識は戻っていない。
しかも町を守る兵士の悉くが戦いで命を落とした為に、今フラープの街には統治者が不在の上、
外敵から街を守る者がいなくなった為、街の防御が手薄になっていた。
そのような状況で放って行く事は出来ないというレティスの言葉に、珍しくリルルも同調した結果、一行は王都への旅の足を止め、こうして街にいる。
「・・・・・」
頭上の青空を睨むように見上げるカナタ。彼は今、フラープの街の中にある1軒の宿屋の屋上にいた。
腕には先日の戦いで負った傷が今も残っており、包帯が巻かれている。
本来ならば今頃は聖女の持つ治癒の術で傷一つなく完治しているのだが、今回は領主コンブルの治癒を優先させた為にカナタの腕の治癒は後回しになった。
とはいえ動かせないといざという時に役に立たないので、戦闘になっても戦える程度のレベルには治してもらっている。
「・・・はぁ」
思わず口をついて溜息が漏れる。別にヘコんでいる訳ではない。
ただ、視線の先にあるものを見ていて陰鬱な気分になっただけだ。
(2日経ってもこの場所から見える景色は変わらないな)
カナタの視線の先には街の中央にある島、その上には半壊した領主の館。
館の周囲には多くの人の姿があり、皆が一様に俯いている。
涙を流す者、憤る者、呆然と立ち尽す者、悲しみに暮れる人々の姿。
離れた位置から見ているにも関わらず、彼らの纏う悲しみはここまで伝わってくる様だ。
(今回の犠牲者達のほとんどが言わば俺達への復讐のとばっちりで死んだ訳だしな。真実を知ったら遺族達からは間違いなく恨まれるだろうな)
今回の1件、現場責任者であるリシッドの判断で金銭目当ての襲撃だと街の者達へは伝えている。
いかに被害が大きかったとはいえ、国家機密扱いである聖女や貴族が暗殺されているという事実を伝えることは出来ない。
国家の平穏の為とはいえ、家族を失った者達に嘘を伝えなくてはならない事にレティスやリルル、リシッド隊の面々には苦悩の色が見えた。
虚偽の情報を遺族達に伝えた後、遺族達から彼らに送られた言葉が強く彼らの心を締め付けた。
「家族の仇を討ってくれてありがとう」
多少の違いこそあれ、多くの者から掛けられた感謝の言葉は彼らの心に深い悔恨の念を刻み付ける事になった。
確かに今回館を襲撃した虎爪師団の者はシュンコウを除いて全員を討ち取ったとはいえ、そんなものはなんの足しにもなりはしない。
皆がその事を理解しており、己の無力と不甲斐なさを痛感させられた。
おかげで現在に至っても宿の中にいるリシッド隊の雰囲気は戦いの日から今日までずっと暗いままだ。
(まぁ、皆の気持ちも分からないではないんだけどね)
カナタだって少なからず思うところはある。
今回の事件を起こした張本人も結果として取り逃がしてしまった負い目も感じている。
それでも、仲間達の様にナーバスになる程ではない。
幸いというべきか、戦場が日常だったカナタにとってはこういった場面は今まで幾度となく見てきた光景。嫌な話だが慣れている。
今更、新鮮な気持ちで向き合えと言われたとしても無理な話だ。
(今回ばかりは仕方ないかな。アイツらの気持ちの整理が着くまではそっとしといてやらないとな)
カナタなりに皆の事を考え、こうして1人で見張りの様な事をしている。
「にしても、あっちと比べるとこっちは随分と騒々しいな」
そう言って島の方から目線を宿の近くへと向けると、街の者達が騒々しく動き回っている。
街に来ていた行商人たちが荷物をまとめて街から逃げ出していく。
街の人の多くも、同じように逃げ出すか、留まるべきかとあちこちで話し合っている。
「今逃げ出してもあまり意味はないと思うけどな~」
不安に包まれる街の人々を見ながらそんな言葉を漏らす。
あの戦いの後、獣人達はもう街を去ったし、シリウスの残した言葉通りならば再び仕掛けてくる可能性は低い。
だが、その事を知らない街の人達が再襲撃の可能性を懸念するのはもっともな事だ。
(確かに獣人がこなくても野盗が乗り込んできたり、魔獣が来たりする可能性があるからな。その可能性を考えれば、こんな守りの薄い街から逃げ出したくもなるか)
話では街から少し行った場所にある森には魔獣が多数生息しているとか、もっともリシッド達が確認した所、中々森の外に出てこない為、人が被害にあう様な事はほとんどないという話らしい。
むしろ、今回の話を聞きつけた野盗の方が街に押し入ってくる可能性もある。
混乱の下にある街で略奪するというのは彼等の得意とするところだろう。
「まぁ、俺達が滞在している間に仕掛けて来る様な事があっても俺1人で十分対処可能だろうけど」
1人呟いたカナタは、そう言ってその場に寝そべる。
もし、街で何か異常があったとしても、その時はすぐに知らせに来るよう街の人間にはリシッドから伝えてあるので問題ないだろう。
「にしても後一歩で仕留めきれなかったな~」
あれから2日経った今も、時折あの戦いの事が頭に思い浮かぶ。
今回のシュンコウとの戦い。
随分と苦戦する事にはなったが、仕留める寸前までシュンコウを追い詰める事が出来た。
自分の持っている武器をフル活用した上、隠し玉だった魔法を使っての戦果。
もっとも、魔法を防がれた少々肝を冷やしたが・・・。
「もっと威力高い魔法とかが使えると良かったんだけどな~」
そう言ってカナタは自分の右の掌を見下ろす。
そこには薄い痣で出来た模様の様な痕が刻まれている。
これがカナタがシュンコウとの戦いで魔法を使う事が出来た理由。
土精霊ドノウとの間で結ばれた契約の証「精霊刻印(仮)」だ。
「あの時、ちゃんと契約結んどけば良かったかな~?」
土精霊ドノウとの戦いの後、彼から授かったのはリシッド達が武器を強化する道具、レティスは戦う為の術、そしてカナタが授かったのは魔法を行使する権利。
厳密に言うとドノウが行使できる魔法を代理行使できる力だ。
ちなみに(仮)なのはあくまでも仮契約だからである。
きちんとした契約という形もドノウから提案されたのだが、その時は断った。
(だってあのジジイ何か隠してる感じだったしな~)
カナタはドノウとの契約(仮)が成された時の事を思い出す。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
他のメンバーがドノウから道具や知識を授かった後、1人何も貰ってないカナタはふてくされていた。
「リシッド達は皆何か貰ったりしてるのに何で俺の分だけないんだよ」
「ホッホッホ。仕方ないじゃろうて、お主の武器は特殊すぎて強化する様な道具は使えぬし、魔術師や法術師の様に魔法が使える訳でもなるまい」
「ぬぐっ!確かにそうだけど・・・」
ドノウに指摘された内容に思わずカナタは言葉を引っ込める。
確かにドノウの言う事は正しいが、それはカナタにだってどうする事も出来ない事だ。
武器が特殊なのは偶然だし、他に持っていないのはたまたまだ。
魔法については、そもそも元の世界にそんなものがないから使えるかどうかも不明だ。
「結構頑張ったのに俺だけなにもなしかよ~」
肩を落として項垂れるカナタだったが、そんな彼に向かってドノウが声を掛ける。
「ホッホ。誰もそうとは言っておらんじゃろう。早とちりするでない」
「そんな事言っても他に何かあんなのかよ?」
「勿論じゃえ。ワシがお主に授けるのはその名も『精霊刻印』」
「『精霊刻印』?なんか凄そうな感じだけどどんなものなんだよ」
カナタの問い掛けに、その言葉を待っていたと言わんばかりにドノウが笑い声を上げる。
「ホッホッホ。そうじゃな。言わば精霊との契約の証じゃの」
「契約?」
「そう契約じゃ。ワシ等精霊は力の集合体みたいなもんでの。人間なんかと契約をする事で持っている能力の一部を貸し与える事が出来るんじゃ」
「よく分かんないな。それをするとどうなるんだよ?」
「そうじゃな。例えばワシが扱える土魔法の一部を使える様になったりする」
「えっ!」
ドノウが告げた内容に思わずカナタの動きが止まる。
それもそうだろう。何せ子供の頃お伽噺でしか聞いた事のないような魔法。
誰しもが一度は思い描き、使えるればと夢見るもの。
それを自分の手で使う事が出来るというのだから心を揺さぶられるのは当然だ。
「何、そんな事が本当に出来るの?」
「ホッホッホ。出来るから言っておるに決まっておろう」
「おお~!マジか」
魔法を使う事が出来ると言われた事で思わずテンションが上がったカナタだったが、そこでふと、ドノウが話した内容に引っかかりを感じ冷静さを取り戻す。
「ジジイ。さっき契約って言ったよな?」
「うむ、そうじゃの」
「契約っていう事は、俺からも何か提供しないとダメなんじゃないのか?」
「・・・ホッホッホ。さて、どうじゃったかのう」
とぼけた態度でカナタから目を逸らすドノウ。
先程までの押し付けがましい程の饒舌さが成りを潜める。
明らかに誤魔化そうとしている態度である。
(・・・このジジイ。何か隠してやがるな)
先程までの魔法が使える様になるという喜びなどどこかへと吹き飛び、ドノウへ向かって冷めた視線を向けるカナタ。
その視線に込められた圧力に観念したのか、ドノウが諦めた様に口を開く。
「そんな目で見るでないわい。心配せんでも命に関わる様な事はないわい。魔法を一回使う度に少しばかりの血液と魔力をいただくぐらいじゃ」
「ふ~ん・・・他に隠してる事はないよな?」
「・・・・・・・」
「・・・おい」
問いかけに対し完全に沈黙したドノウにカナタは再び冷めた視線を向ける。
ここで嘘をついて誤魔化さない辺りリシッド達の言っていた精霊は嘘をつけないというのもまんざら嘘でもないらしい。
とはいえこの後に及んでまだ隠し事をしようとするドノウに怒りを通り越して感心しそうになる。
だからといってOKしてやるつもりもないのだが。
「なんか裏がありそうだし、今回は遠慮して・・・」
「待て待て!童。早まるでない。そうじゃ初めは仮契約という事も可能なんじゃが?」
「いや、いいです。結構です。モウワタシナニモイリマセン」
「そう言わんでな。仮契約じゃったらさっき言った少しの血だけで魔力消費もないぞよ」
何やら必死にセールスを仕掛ける営業マンみたいなドノウに、拭い去れない程の違和感を感じながらも、今度ははっきりと条件を言い切った事で少しだけ考える余地が生まれる。
どの道、ここから先の戦いの事を考えるなら切れるカードは1枚でも多い方がいい。
(さて、どうしようか。ここから先の戦いを考えるなら、ここで魔法という新しい持ち札を手に入れるべきなんだろうけど、このジジイが何か企んでるみたいで嫌なんだよな~)
やたら熱心に契約を迫ってくるあたりにどうも裏がある様に思えてならない。
ドノウを信用できずに考えあぐねているカナタに向かって後ろから声が掛かる。
振り返るとすぐ目の前に映るレティスの顔。思わず心臓が大きく1つ跳ねる。
「なっなに?」
「カナタさんが何か悩んでいるみたいだったので」
「いや~、爺さんが魔法使える様にしてくれるって言ってんだけど・・・」
「えっ!本当ですか!」
「うん。そうらしいんだけど何か裏があるみたいであまり気乗りしないんだよね」
「そうなんですか?」
不思議そうに尋ねるレティスの言葉にもドノウは素知らぬ顔をする。
「ホホホ。もういいじゃろ。そんなに嫌ならワシもう帰ろうかな」
「こんのクソジジイ」
とうとう開き直り始めたドノウにカナタは表情を引き攣らせる。
逆に追い込まれる様な格好になったカナッタを見て、レティスは表情を曇らせる。
「もしかして私、余計な事しちゃいました?」
「ん?そんな事無いよ。大丈夫。全然問題ない」
そう言ってカナタは不安そうにするレティスに向かってニカッと笑って見せる。
ドノウが仕掛けた余計な小細工のせいで本来の目的を見失うところだった。
そもそも、カナタの旅の目的はレティスを守り王都へ行く事であってこんな所で精霊なんぞの相手をする事などではない。
(よく考えてみると別に迷う理由も大してなかったな)
彼女の為に始めた旅、向かってくる者は排除してきた。
今更恐れる様なカナタじゃない。
むしろ利用できるものは利用させてもらうまでだ。
「ジジイ。ちなみに普通の契約と仮契約って何が違うんだ?」
「そうじゃの。仮じゃと使える魔法が下位のものに限定されるというのと、魔法を使役するのにちょっとした手順を踏む必要があるぐらいかのぅ」
「そうか。んじゃもう1つ質問だけど仮契約から普通の契約へ上げる事は出来るのか?」
「ホホ?ようやく決心がついたかえ?」
「うるせえなぁ。黙って質問に答えろよマイクロジジイ」
「カ、カナタさん」
精霊に向かって相変わらずの口を利くカナタの態度にレティスが困り顔を浮かべる。
だが、言われた方のドノウはまるで気にする事無くカナタの問いに答える。
「ホッホ、そうじゃの一度仮契約をして、そこから段階を上げるとなると、もう一度ワシの下を訪れるか、ワシと同格以上の土精霊が承認すれば上げる事は出来るぞい」
「ふ~ん、そっか。んじゃひとまず仮契約って事で」
さっきまで悩んでいたのがまるで嘘の様にあっさりと決断するカナタを見て、今度はレティスが目を丸くする。
「えっ!あれ?さっきまで悩んでたんじゃ?」
「ん?ああ、レティス様の顔見たらなんかどうでもよくなった」
「・・・私の顔そんなに変ですか?」
「ううん、全然。むしろ超かわいい」
「か、かわ!」
前触れなく放たれたカナタからの不意打ちの言葉にレティスは顔を紅潮させて俯く。
何気ない気持ちで口にした言葉で、後ろに立つレティスが頭から湯気が出そうな程赤くなっている事等まるで気付かずカナタはドノウを見据える。
その目の奥にある意思を見て取ったドノウは満足そうに頷く。
「ホホホ。分かったわい。ならば童よ右の手を出すがよいぞよ」
「ん?こうか?」
言われるがままに左の手を差し出すカナタ。
ドノウは体を左右に揺らしてカナタの手の前まで歩み出ると、持っていた杖でカナタの掌を突く。
「ホッホッホ。では始めるぞよ」
「御託はいいから早くしろ」
「さっきまであんなに渋っておったのに、まあよいか」
ドノウはそこまで言うとその小さな2つの目を閉じて唱え始める。
「我、土精霊ドノウの名の下に、この者に大地の力を今一時貸し与えるべくここに契約を結ぶものとし、今ここに契約の証を刻む」
ドノウが唱え終わるのと同時にカナタの掌が火傷しそうなほどの熱を帯びる。
「痛っ」
「ホホホホホウ。我慢せい。すぐに済む」
「分かってる」
それから約2秒ほどで掌の上から痛みが消える。
恐る恐る掌を返してみると薄い痣の様な痕が掌に刻まれていた。
「これで終わりか?」
「そうじゃよ。これでお主も魔法が使える様になった訳じゃ」
「ふ~ん。なんか実感湧かないな」
「ホッホッホ。使ってみれば嫌でも実感する事になるじゃろうて」
そう言って笑うドノウは心底楽しそうだった。
その後、魔法の使い方について一通りのレクチャーを受け、現状使用可能な魔法を把握した所でカナタ達はドノウと別れた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
結果的にあの時、ドノウとの間で仮契約を結んだ事は正解だったと言えるだろう。
カナタが魔法を使える事を知らないシュンコウに深手を負わせられたのだから。
とはいえ次に相見える様な事があれば同じ手は通用しないだろうが。
(やっぱりあの時、邪魔が入ったのは痛いな~)
スナーとシリウスの介入によってシュンコウにトドメを刺し損ねた事が悔やまれる。
とはいえあの場でシリウスやスナーを相手に勝機は皆無だったのだから仕方ない。
彼らが連れて行ったシュンコウには相当な深手を負わせたし助からないとは思いたいが、その後どうなったのか凄く気になる。
万が一、生き延びていたとしても再び両腕が生えてくる様な事が無い限り、再起不能か長期離脱には追い込めたはずだ。
(レティス様やリルルの話だと、どんな治癒の魔法を使ったとしても、落ちた腕を元に戻すのは無理って話だし、もう一度現れたとしても脅威にはならないだろう。たぶん)
正直、シュンコウの執念を考えると例え両腕がなくなったとしても何らかの方法で再びカナタの前に現れそうで嫌だ。
シュンコウの事もそうだが、それ以上に今回初めて姿を見せたシリウスの方が、目下の問題である。
戦う前からあの男には勝てないと自分の本能が告げていた。
かつて戦ったフェイロン以上の脅威をあの男には感じている。
「生き物として根本的に格が違う。あんな相手は初めてだ」
力の強弱などでは測る事の出来ない強者の風格。
あれが異世界の強者なのだと思い知らされた。
自分は実はこの世界だと結構強いんじゃないかと思っていた事が恥ずかしくなるほどだ。
しかもさらに恐ろしいのはあれ程の男ですら、一つの軍団の長でしかないという事だ。
つまり今自分がいる異世界にはあれ以上の強者もまた存在する可能性が非常に高い。
「本当に勘弁してほしい」
独り言を呟き項垂れるカナタ。
自分が思っていた以上にこの世界で生きるのはハードルが高いのかもしれない。
未だ見えぬこの世界の高み。
考え始めると気が滅入りそうになったので、別の事に思考を切り替える。
(異世界と言えばシリウスのヤツが何か言ってたな。天渡とか言ったっけ?専門の呼び方があるぐらいだし他にもいたりするのかな異世界人?)
それが自分と同じ地球出身者かどうかまでは分からないが、あの口ぶりだと過去にも何人か他の席から来た者がいた様だ。
(しかも、何やら偉業を残してるとかなんとか言ってたな)
流石に異世界から来た者が全員そうだとは思わない。
カナタの様に正体を隠して生活をしている者だっているはずだ。
そう考えると、思ったよりも異世界から人が来る事は少なくないのかもしれない。
その中で、この世界に適応できた者が異なる世界の知識を使って何かしら成果を上げたのならば偉業を成したとされるのも頷ける。
(でも、俺は戦う事以外に大した知識ないしな~)
7歳のあの時から今日まで戦いの中で生きて来た都合上、学力は低く知識も多くない。
持っている知識もサバイバルか近接戦闘、武器の扱いと非常に偏っている。
ならば戦いで身を立てられるかと言えば、さっき考えていた事に逆戻りだ。
少なくとも自分では勝ち目の薄い相手がいるのは嫌という程分かった。
(しかし、俺が異世界人だと分かったとして、シリウスはなんで俺を仲間に引き入れようと思ったんだろう?特に俺の事を知ってる訳でもないはずなのに)
今までの旅の中で、特に他者が欲しがるような異世界の知恵など披露した覚えはない。
しばしば厄介事に巻き込まれてその都度捻じ伏せてきた程度。
考えられる可能性としてはシュンコウの代わりに戦力に加えたいという事だが、そういった様子でもなかった。
となると異世界人、彼のいう所の天渡である事が最大のカギだと思われるのだが・・・。
「あ~わっかんね~!情報が無さすぎるんだよな~」
またしても考えに行き詰り、思考と共に屋根の上に手足を投げ出すカナタ。
「もういいや。考えても分からねーし!それよりもこれからどうするかだな~」
とりあえず先の1件で獣人からの襲撃が10日間だけ止まるという話。
これについては敵の言葉なので信じて良いか微妙な点はあるが、シリウス達のあの様子なら恐らく信じても問題ないだろう。
(とりあえずこの期間中に少しでも王都に近付いておくべきだろうな~)
ダットンの話だと、ここから王都まで20日程度の道程との事。
次のフォーバル領までは大体6日で辿りつけるらしい。
折角敵が攻撃しないでいてくれるんだから進めるだけ進んでおいた方がいいのだが、現状この街の状態を何とかしなければレティス達は先へ進む事に首を縦には振らないだろう。
(その為には代理の統治者と街を守れるだけの兵力を確保するのが急務なんだけど)
統治者についてはリシッドに心当たりがあったらしく。
領主の館で飼われていた伝書鳩らしきものをどこかへ飛ばしていた。
その際、今回の件についての情報も王都へと放った。
リシッドの話では数日中に街を守るべく一軍が王都を発つという話だった。
問題はその一軍がここに辿り着くまで、誰がこの地を守るのかという事だ。
このままこの地に留まり続ければ、聖教会が定めた期日までに王都へ辿り着く事は敵わないだろう。
加えてシリウス達星爪の旅団がこの地へ攻め入ってくる事も考えられる。
2人の身の安全を考えるならば、この地に留まり続けている訳にはいかない。
「さて、どうするべきか」
最悪、この街を見捨てて2人を連れていく方法も考えている。
その事で聖女2人から恨まれる事になろうとも、恐らくリシッドも同じことを考えているだろう。
「あと1日、それまでに何か良い手が出ない様なら・・・」
2人を連れ出す。
そう決心し、天に向かって突き出した掌を握りしめる。
その時、宿の下の方で大きな声が上がった。
「大変だ!街の外に野盗が出た!」
「っ!?」
その声を聞くなりガバッと勢いよく起き上がったカナタは屋根から飛び降りる。
着地と同時に、声を上げたと思しき男へ視線を向ける。
「野盗はどっち!」
「えっ!あ・・・」
「どっちだ!」
「街の西の方だ。街から逃げ出した行商人のキャラバンを襲っているらしい。今逃げてきた奴がそう言ってた」
「分かった!アンタはそこで出てきた兵士にここの守りを固めるよう言っといてくれ」
「ああ、キミはどうするんだ?」
「そいつら全員片付けてくる!」
言うが早いかカナタは宿の前にある馬小屋に飛び込むと、馬に跨り駆けだす。
今はとにかく振り払う火の粉を一刻も早く払う事だけを考えて馬を走らせる。
その向かった先で、カナタは旅の行方を左右する人物と再開する事になる。
ちょっと歯の治療とかで思う様にかけてません。
スランプ?かも?
早く書きたいんですけどね。
うまくいかないもんです。




