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蝿と悪魔  作者: 楓
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オカマうざい。 by 鶫

「と、言うのが事の顛末です。後程始末書を提出しておきます。」


私は頭を下げ、上司の部屋を後にした。


これから始末書の作成か。チッ。あの馬鹿殴って殺ろうかな。おっと間違えた。殴ってやろうかな。


コンクリートで出来た壁が、私の溜息を反響させる。それは、無機質に冷たく響いた。


「もお~。何辛気臭い顔してんのよ。溜息ばっかり付いて。幸せが逃げちゃうでしょ!」


目線を上げると、中々顔の整った男が独り立っていた。


「ああ、先輩ですか。先輩のせいで幸せが逃げてます。先輩のオカマ口調を聞くことになると思うと、溜息しか出なくて。すみません。」


思い切り盛大な溜息を付いて言葉を口にする。


この男は私の先輩にあたる人で、色々世話になっているのだ。


世間一般に見ればイケメンなのだろう。だが、私にはその基準が理解しがたい。


整った男前だと言われる顔立ちに、長身で手足は長くスタイルが良い。けれどこの男は残念な奴にすぎないのだ。何故か。理由など、至極簡単。


特殊な性癖の持ち主だからだ。


男性同性愛者。また、性自認が女性的な非女装の男性同性愛者なのだ。


……………。


つまり、ただのオカマの変態なのである。


「ちょっとおおおお!何よその言い種は!?私の心はガラスで出来てるんだから、大事に扱って!そうじゃないと泣いちゃうから!」

「先輩の心は防弾ガラスですか。分かりました。金槌でも使って叩き割ますね。そうそう、そう言えば先輩って凄いですよね。外が金槌で中だけ防弾ガラスって。それはもう、最強じゃないですか。」


そう。何を隠そう先輩は、全く泳げない金槌なのである。


「いや、それ。結構気にしてるから私。てか、何でそんなどうでも良いこと知ってるの!?全っ然得しないわよ、悪いけど?!しかもそれ、スッゴク伝わりにくいわ!」


握り拳を作り、少し肩を上げる。脇を締めて脚は内股に。


…………。


正直な感想を言おうか。


「キモい。」

「そんな事ないでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


五月蝿い。


やたらと響くこの場所で、余り大声は出さないでもらいたい。耳が壊れる。


「はっきり言いますが先輩。それ、自分でやってて可愛いと思ってるんですか?思っているのなら言います。気持ち悪い。やるならやるで、もっと徹底してください。中途半端で変です。オカマのくせして、服装が男物の。しかも無駄にお洒落し過ぎじゃないですか?」

「良いのよ。女子力が高いだけだから。何?羨ましい?」

「全く。女子力が高いって、男物の服を着てる時点でアウトでしょ。確認しますけど、先輩はちゃんと自分が男性である自覚、持って………………………無いか。」

「持ってるわよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!何その微妙な間?!勝手に決めつけないでよ!!」

「チッ。いちいち五月蝿ぇんだよ。黙ってろよ、カマ野郎。」


思わず悪態を吐く。


「小声だからって聴こえてるから!しっかり聴こえてるから!言葉遣い直しなさいよ!!」

「小声?私は何も言ってませんけど?頭と性癖に加え、耳まで可笑しくなったんですか?良い医者紹介しましょうか?」

「この子ったら、あくまでしらを切る気ね!あたしは可笑しい処なんて、一つもありません。」

「自覚していなんですか。それはそれは重症ですよ先輩。やはり医者を紹介しますよ。」

「結構よ!あたし知ってるんだから。医者ってどーーーーーっせ、あの筋肉ゴリラでしょ。あんなのに診てもらったんじゃ、精神が崩壊するわよ!」

「先輩。ゴリラとは幾らなんでも、失礼過ぎます。ゴリラはギリシャ語で毛深い女って意味なんですよ。」

「あら、そうなの?変なの。」


全くだ。ゴリラ程に毛深い女性など、この世界の端から端まで探したって居ないだろうに。昔のギリシャ人の思考は解らないな。もしかして、ギリシャ人の中には毛深い女性が居たのだろうか?ゴリラ程の。


「取り敢えず、彼の部屋に行きましょう?」


彼とは、この間拉致った宮本葵である。




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