甘い住民との出会い
-ふわふわ浮かぶ わたあめ
パリパリのクッキー
色とりどりのマシュマロ
私の夢は甘い香りに包まれている-
ピッ…ピピピ…
目覚ましが鳴る音が聴こえる
起きなくちゃ…
「う~ん…」
私は軽く寝返りを打って目覚ましを止める
朝か、さあ起きるぞ!
気合いを入れて体を起こす
私の名前は甘利心 16歳高校一年生
幼い頃から私にはちょっとした悩みがある
それはいつも同じ夢を見るのだ
たくさんのお菓子に囲まれる夢だ
べつに私は甘い物が好きでもないのに
なぜか、繰り返し同じ夢を見る
正直、この夢には飽きている
そんなことを考えていると時計の針はすでに7時を回っていた
「あ、ヤバい!
早く着替えないと学校に遅れちゃう!!」
私は慌ててパジャマを脱いで掛けてあった制服を着る
私の学校の制服は正直に言って超ダサい
今時ありえない丸襟のカッターシャツに紐リボン
極めつけは上下が繋がったワンピースだ
まさにザ!お嬢様みたいで私はこの制服が嫌いだ
ワンピースのチャックが後ろにあるため一人では着にくいし大変なんだ
ホント、誰がこんなデザインにしたんだか…
「はあ…」
思わずため息をつくと階段の下からママの声が聞こえた
「心ちゃん、朝よ~起きなさい~」
「はあい~今おりるてば~」
私はママに言いながら適当に制服を着たて部屋のドアを開けた
吹き抜けの階段から朝食のいい匂いが漂ってきた
グッグ~と私のお腹が正直に反応した
「美味しそうな匂い~!
今日はなにかな」
バタバタと廊下を走って階段を下りると
丁度、玄関に行こうとしたパパとぶつかりそうになった
「おっと!おはよう、パパ」
私はパパを見て言う
微かにパパからはアーモンドの香りがする
「ええ、おはよう、心ちゃん
今日も元気だね」
にこやかに笑うパパ
いつも思うが娘の私が言うのもなんだが
私のパパは凄くきれいな顔をしている
チョコとキャラメルが混ざったような髪の色
べっこうあめのようなキラキラした瞳
生クリームのような白い肌
目鼻立ちは整っていてとてもきれいだ
因みにパパの名前は甘利亜門 37歳 某大手企業の営業マンだ
「心ちゃん、いつも言っているが身だしなみには気を付けなさい
襟とリボンが曲がっているし、後ろはチャックが途中までしか上がっていないし、それに髪の毛がボサボサだよ」
呆れながらパパは私の身だしなみを整えていく
「もう、パパったらいいよ
それぐらい自分で出来るよ」
私がふくれるとパパが
「ダメだよ、心ちゃんは雑なんだから絶対、自分で出来ないよ」
私は確かにと思った
前に一度だけ自分で制服を着ようとして結局着れなかったし、自分で髪も上げられなかった
まあ、出来なくても生きて生けるし私は特に気にしてなかったが
パパやママはかなり気にする
特にパパは身だしなみにはうるさい
「それに心ちゃんの髪は黒くて艶があってきれいなんだから、しっかりとかないと勿体ないよ」
ため息混じりに言いながらパパは私の長い髪をポニーテールにした
「はい、出来上がり
じゃ、パパは仕事だから行くね」
私に頬擦りをして幸せそうに家を出ていった
「心ちゃん、朝食を食べないと間に合わなくなるわよ」
奥からママの困った声が聞こえる
「あ、そうだった
急がないと」
私はまた廊下を走ってリビングに行く
リビングの机の上には朝食が並んでいる
「ママ、おはよう
今日の朝食はなに?」
私はダイニングにいるママに聞く
ママからは微かにシナモンの香りがした
「おはよう、心ちゃん
今日はねぇ、イチゴのジャムにトースト
コーンスープに目玉焼きとソーセージ
サラダにミルクよ」
ママは机に料理をおいた
「うわー、美味しそう
いただきます♪」
私は急いでトーストにかぶりついた
そんな私を見ながらママは優しく微笑んでいた
私のママはパパと同じぐらい美人だ
ふわふわのマロン色の長い髪
あめ細工のような透明な黒い瞳
スポンジケーキのような柔らかそうな肌
少し目が大きく幼く見えるがかなりの美人だ
因みにママの名前は甘利科 37歳 専業主婦だ
それに比べて私は長く黒い髪、真っ黒な瞳、日本人独特の肌をしている
ママたちはあんなに美人なのにどうして私だけはこんなに普通なんだろう
ため息をつきながらコーンスープを飲んでいるとママが不安そうに
「コーンスープ、口に合わなかったかしら」
私を見つめてつぶやく
私は慌てて
「違うわ、コーンスープはとても美味しいよ
でも、ちょっと考え事をしていて」
手と頭を振りながら否定した
「考え事?
悩みがあるならなんでもママに言ってちょうだいね」
不安気にママは言った
「うん、わかっているて
大丈夫だよ、たいしたことないから
私、学校に行かなくちゃ」
私は話をそらして急いで仕度をして家を出た
いつも通りに学校へ行き、友達と話をしていた
「そういえば、心はなにか香水でも付けているの?」
友達の一人が私に聞いてきた
私は香水なんて付けてないので不思議に思って
「付けてないよ、どうして?」
聞くと友達が私に顔を近づけて
「だって凄く美味しそうなココアの匂いがするから」
思わず自分の匂いを嗅いだ
でも匂いなんてしない
「そうかな?」
私は動揺した
だってもしかしたら自分ではわからない匂いかもしれないからだ
「うん、するよ」
「美味しそうなココアの匂い」
彼女たちはお互いに頷きあった
「あ…もしかしたら朝に飲んだココアの匂いが移ったのかも…」
私は適当にウソをついた
だって朝にココアなんて出なかったし、彼女たちがウソをついているようには見えなかったからだ
それに自分には気づかない匂いがするなんて、なんだか嫌だったし
「そうか、それなら仕方がないよね」
「食べ物の匂いって移りやすいし、例えばニンニクの匂いとか」
「あれはとれないよね」
彼女たちは匂いの話をしはじめた
私は適当に頷いた
昼も終わり5限目の授業が始まる
正直、この時間の授業は超眠たい
でも、起きないと…
-金平糖の星
円いキャンディのお月様
抹茶にミルクにチョコでできた草木
易しい風に乗って香る 甘いお菓子の香り
これっていつもの夢じゃ…
私はそんなことを思いながら、金平糖の星を見つめた
それにしてもリアルだな
だってお菓子の香りまでするし…
ぼーとしていたら、私の目の前に小さな竜巻ができてそこに一人のメルヘンな服を着た男が現れた
「はあ~い!
はじめまして~
私はスイート卿で~す
お初にお目にかかりま~す
ココアさ~ん」
呑気な声を発した
私は一瞬、誰に話しかけているのか分からなかったが、この空間には私しかいないので私に言っているのだとわかった
「私はココアじゃない、心、甘利心よ
て言うか、おじさん変人さん?」
私が疑うとスイート卿と名乗った人物が思いっきり驚いて
「へ、変人さんじゃないで~す
私、スイート卿で~す
怪しい人ではありませ~ん」
大げさな動作も入れて弁解した
私はその行動が可笑しくて爆笑した
「笑うなんてヒドイで~す」
スイート卿が半ベソをかいていた
私は笑いを堪えて
「ごめん、ごめん
行動が可笑しくてつい
で、スイート卿だっけ、私になにか用?」
彼を見て言った
スイート卿は軽く咳払いをして、一応かっこもつけて
「今日、家に帰ったらすぐにポストを見てくださ~い
そこに貴女宛の手紙がありまーす
それを開けるといいことがあるでしょ~う!」
ビシと親指を立てて消えた
私はポカンとした-
「…ころ…心ってば、ヤバいよ…起きなよ」
私の耳には友達の声が聞こえる
「う~ん…スイート…が…」
まだ、眠たくて呟くと
「甘利さん!起きなさい!!」
バシと先生の声が聞こえて思わず飛び起きた
「はい!!」
大声を出して飛び起きた私にクラス中の視線がそそがれた
私は何が起こったか理解できずにいた
「甘利さん、寝ぼけて大声を出すのは止めましょう」
先生に真剣に注意された
私は状況を理解したら、急に恥ずかしくなり
「はい…」
小声で返答した
授業後
「心ってば、バカだよね」
「よりにもよって、ハリセン(先生のあだ名)の授業で寝ぼけるなんて」
「ある意味、勇者だよ」
友達が私の周りに集まってお互いに言い合った
「だって眠たくて…それに変な夢みたし…」
私がふくれると友達が興味津々で
「どんな、夢をみたの?」
まだぼーとしていた、私の頬をツンツンしながら聞いてきた
「金平糖の星…円いキャンディのお月様…
それに…メルヘン男…」
ぼそぼそと呟くと、彼女たちが大爆笑した
「ありえない、それ…」
「どういう夢よ…」
「心、どんだけ乙女なの」
涙を浮かべて笑う
私は思わず
「ホントにみたの!!
それに私、べつにメルヘン好きじゃないし」
怒鳴ってしまったが彼女たちの笑いは消えなかった
放課後
私はいつものように家に帰った
ポストを見て私は思い出した
そういえば、メルヘン男がポストの中を見るように言っていたな
どうしよう、開けようかな?
う~ん、まあ開けても問題ないだろう
私はポストに手を掛けて中の郵便物を取り出した
パパやママ宛の手紙やハガキの中に
あのメルヘン男が言っていた通り、私宛の手紙があった
差出人はblack.chocolateと書いてあった
変な名前、とりあえず中を開けてみよう
手紙を破って中を開けてみると
突然、白い煙が出てきた
「な、なにこれ…けほ…けほ…」
白い煙はあっという間に心の体を包んだ
心は途中で意識を失った
♪ふわふわのスポンジで出来た地面
チョコやクッキーで出来た草木
甘くて透明な砂糖水が流れる小川
そこに住むお菓子な住民たち
ここは夢のお菓子の王国
さあ、君も甘いお菓子の住民になろう
楽しい、楽しいスイート王国の住民に♪
変な歌が聞こえる
なんだか、体がふわふわする
まるで夢の中にいるみたい
それに微かに甘いお菓子の香りがする
私はそっと目を開けた
眩しい太陽の光が木々の合間から射し込んでいる
「…う、うーん…」
私は眩しくて手を上げて日差しを避けようとした
すると奇妙な違和感を感じた
思わず、飛び起きてしまった
「う…そ…私の服が…」
私は驚いて自分の着ている服を確認した
確か、制服を着ていたはずなのに…
今はなぜか、カラフルなフリルたっぷりのドレスを着ているのだ
それによく周りを見渡すと…
粉砂糖でできた砂や岩
チョコでできた草木
どこからか、香る甘いお菓子の香り
「これって、夢じゃ…」
私は何度も何度も繰り返し目を擦ったり、頬を叩いたりしたが痛みがあった
「夢じゃない…てこと…?」
私は呆然としていると、突然茂みから男の子が現れた
男の子は大きなキャラメル色の瞳から涙を流しながら
「ひく…ここどこ?…おうち、帰りたいよ…」
泣きながら歩いていた
私は思わず
「大丈夫?
君、迷子になったの?」
男の子に駆け寄り聞いた
男の子は顔を上げて
「ミルク…迷子になったの…おうち、帰りたい…ええ~ん…」
大声で泣き出した
私は慌て
「お姉ちゃんがなんとか、するから泣かないで…」
男の子をなだめた
すると男の子は嬉しそうに
「ほんと?
ミルク、おうち、帰れるの?」
泣き止み私に問いかけてきた
私は正直、今ここがどこか、わからないけど男の子を不安にさせたくなかったのでわざと明るく笑い
「大丈夫!
お姉ちゃんに任せて!」
軽く胸を叩いた
男の子と手を繋いで森の中を歩く
「あ、そうだ
君、名前なんて言うの?
私は甘利心て言うの、君は?」
男の子に問うと男の子は少し首を傾けて
「ミルク…ミルク・チョコレート」
言って私の顔のぞきこむ
「かわいい名前ね」
男の子に微笑んだ
それにしてもホントにこんな名前なの?
私は少し疑いながら森の中を更に進んだ
キラキラと太陽の光を浴びて輝くチョコの木々
パタパタと時より飛んでくるクッキーでできた小鳥たち
まるで夢の中みたい
私がそんなことを考えていると急に視界が開けた
その先にあった光景に私は思わず
「きれい…!」
叫んでしまった
クッキーやクラッカーでできた家々
キャンディやグミで彩られ淡く光る街灯
チョコやスポンジでできた道
そして町の中心に聳え立つチョコレートでできた城
すごい!どうなっているの?!
私が呆然としていると下の方から
「ミルク!」
叫び声が聞こえ一人の少年が走ってきた
少年の鮮やかな栗毛の髪が風でなびいた
ミルクは私の手を払い
「お兄ちゃん!」
階段から上がってきた少年に抱きついた
少年は少しよろけたがしっかりとミルクを抱きしめ
「ミルク…心配したよ
一体どこに行っていたんだ?」
ミルクに問いかけた
ミルクは涙目で
「ミルク…途中ではぐれたの
一人ぼっちで怖くて…
でも…お姉ちゃんが助けてくれたの」
涙を流しながら言った
少年は頷きながら
「ミルクを助けてくれてありがとう」
私にペコリと頭を下げてくれた
私は慌て
「うんうん、大したことないから
それに私も迷子だし…」
自分が迷子であることを思いだし不安になった
少年は驚いたがすぐに
「迷子なら僕の家に来ない?」
提案してくれたが私は悪い気がして
「うんうん、いいわ」
首を横に振った
でも少年が私の手を取り
「ミルクを助けてくれたお礼もしたいし…」
少し手を引いたので私は
「そう言うことなら…」
頷いてしまった
少年は嬉しそうに
「ありがとう
じゃ、案内するよ」
私の手とミルクの手を取り町の中を歩き出した
クッキーの家、キャンディの街灯、水飴のガラス…
ふわふわでカラフルな服を着た人々
まるでメルヘン童話の世界みたい
私がそんなことを考えていると目の前に巨大なチョコでできた門とメルヘンな軍服に身を包んだ兵隊さんが現れた
「お帰りなさいませ」
私たちを見た兵隊さんたちは二人同時に敬礼した
少年は軽く微笑んで
「ただいま」
兵隊さんたちに言って門の中に入った
門の中は色鮮やかなキャンディでできた草花が咲き乱れていた
そして巨大なチョコレートでできた城が建っていた
その城の中へ入ると一人の男性が駆け寄って
「ミルク!
ああ、無事でよかった」
男性はミルクを抱きしめた
ミルクは大きな瞳に涙を浮かべ
「パパ、ごめんなさい」
涙声で言った
男性はしばらくしてから少年をみて
「トリュフ、ミルクを探してくれてありがとう」
少年の頭を軽く撫でた
少年は首を振り
「うんうん、おれは何もしてないよ
ミルクを見つけてくれたのはあちらの方だ」
三人とも私を見たので私は慌てて
「あ、あの…その…甘利心です
私、迷っててそこでミルクにあったんです」
手を振り頭を振りながら言った
男性は朗らかに微笑み
「そうですか
それは大変でしょう
よろしければ、しばらく私どもの家にいませんか?
誰かが探しに来て下さるかも知れませんし
それにミルクを助けてくれたお礼がしたいので」
優しく言われたので私はつい頷いてしまった
私は使用人の方に連れて客室に案内された
広びろとした部屋には
大きな水飴でできたテーブル
ふわふわのマシュマロやわたあめでできたソファー
クッキーやビスケットでできた家具
奥にも広い部屋があり
キングサイズのベットやサイドテーブルが置いてあった
「すごい…」
私が驚いていると扉を軽く叩く音が聞こえた
私は思わず振り替えるとそこには先ほどの少年が立っていた
「どう?
部屋、気に入ってくれた?」
少年は聞きながら部屋に入ってきた
私は辺りを見渡しながら軽く頷いた
「あ、そうそう
この部屋の物は心の物だから好きに使っていいて
あと、お茶にしないかてパパが言ってたんだけど」
少年は思い出したように手を叩いた
「うん、わかった」
私は少年と一緒に部屋を出た
廊下も壁もすべてチョコレートでできていた
しばらく歩くてテラスに出た
そこには三人の人々がいた
「あ、お姉ちゃん」
ミルクが手を思い切り振った
そばにいた色白の女性が軽く頭をさげた
そして5人でテーブルに着く
男性が優しく
「改めて挨拶をしましょう
私はこのカカオ州の州候を務めている
ブラック・チョコレートと申します」
男性は軽く頭をさげた
隣にいた女性が
「はじめまして
私はブラックの妻のホワイト・チョコレートといいます」
美しい髪を軽く耳にかけた
ミルクが手を上げて
「ぼく、ミルク
ミルク・チョコレート
よろしくね」
元気よく言った
少年がミルクをみて苦笑した
「おれはトリュフ
トリュフ・チョコレート
ミルクの兄でそこの二人の息子だよ」
私に向かって説明してくれた
私は4人向かって
「私は甘利心
今、迷子になっちゃって
少し間だけよろしくお願いします」
頭をさげた
4人は微笑み合って
「よろしくね」
元気よく言った
それからお茶会が開かれた
そこで私は今の状況を整理した
ここはスイート王国の最東端に位置するカカオ州
この州候がブラックさん
ブラックさんは皆からチョコレート卿と呼ばれている
ブラックさんの奥さんのホワイトさんは現国王の妹君
王の花と昔は呼ばれて居たらしい
今でも十分にきれいだと私は思うけど
そしてブラックさんとホワイトさんには二人の息子がいて
長男のトリュフは面倒の良さそうなお兄ちゃん
次男のミルクは泣き虫な甘えん坊
私がいたところとはかなり違うみたい