≪第二部 作者による解説的な何か&キャラクター紹介≫
作者、蒼旗悠です。
さて、ここまでで第二部は終了です。第一部同様にここで一度、今までの十話分を振り返ってみたいと思います。
【第十一話 ねぇ、どうして】
書手:初台千尋
相手:広尾李仁
舞台は東京都渋谷区です。後書き部の後日談では二人が恵比寿で再会していますが、恵比寿も実は渋谷区なんですよ! 代々木から恵比寿まで、渋谷区は広い範囲をカバーしています。
それにしても、序盤からいきなりカップルが別れてしまいそうな展開でしたね。作者自身も後日談を書くまで、この二人を別れさせるかどうかで悩んでいました。
二人にとって、どちらが幸せか。そうした思案を抜きにして恋愛は成立しないと思うのです。
なお、この二人は別作品「トワイライト・キャロリング」にて、復縁した状態のカップルとして再登場しています。
【第十二話 はるか】
書手:宮塚紗綾
相手:宮塚誠士
舞台は東京都新島村です。今回は暑中見舞いという想定の手紙となっています。なお、今回は紗綾の現住所が小金井市であることから、新島と小金井のダブル舞台となっています。
ちょうど十話前の第二話が年賀はがきだったのを、皆さんは覚えていらっしゃるでしょうか? 第二話に該当する位置には、このように季節の便りを並べてみました。ちなみに、第一章と第二章の各話の並びには、きちんと法則が存在していたりします。
ただし、書き手のたどる後日談が同じものになるとは限りません……。
無事に救出され、本土へと戻された二人のその後は、別作品「トワイライト・キャロリング」作中で確認していただくことができます。
さっきからこの名前ばかりが登場しているのは、「トワイライト・キャロリング」が蒼旗悠作品中のカップルをあちらこちらから登場させているオムニバス作品だからです(笑)
【第十三話 君が笑えば】
書手:矢川凌
相手:矢川亜姫
舞台は国立市です。国立市、ではありません。国立市、です。ただし一橋大学は国立大学であって国立大学ではありません。最高に紛らわしいあの市の名前が大好きですw
書き手の姉・亜姫の進学先は作中に明記されている通り、国立市内にキャンパスを持つ神田橋大学となっています。その実在モデルである一橋大学は数年後を目途に、学生全員の留学を制度化することを検討しているそうです。もしそれが実現したら──と思ったのが、本話執筆の契機でもありました。
送り出す側の気持ちと送り出される側の気持ち。どちらがより重たくて、どちらがよりつらいのでしょうか。作者自身にもその答えは見えていません。
今回のテガミでは、亜姫の書いた家族宛の手紙を書いていないのですが、いずれ書くことができたなら書いてみたいなと思っています。
【第十四話 はじめて分かること】
書手:氷川歩夢
相手:氷川孝(故)
ダブル舞台二回目の今回は奥多摩町と稲城市です。
利根川水系が渇水を起こした場合、奥多摩湖は東京都民の貴重な水がめと化しますからね……。大切にしなければです。建設に至るまでには色々と紆余曲折があったそうなのですが、それを描くのにはさすがに限界が……。やるなら独立した短編でやってみたいものですが(苦笑)
仕事熱心というよりダムに熱心だった、孝さん。
こういう人になれたらな、と作者はいつも思うのです。
自分の仕事に、生き方に、胸を張って誇りを持つことが、今の世の中ではどんどん難しくなってきてしまっています。
【第十五話 また会う日まで】
書手:伊ヶ谷琴音
相手:三宅村立三宅中央小学校六年生
舞台は三宅島村と多摩市です。ダブル舞台はもう三つ目になりましたが、さすがに重きを置いてない方が可哀想でしょうか……? とは言っても多摩市って、本当に目立った特徴が乏(ry
作中で触れた通り、三宅島雄山は2003年に大噴火を起こし、全島避難が実際に行われています。島に戻った人の数は噴火前より千人も減り、小学校も統合が行われて二校が廃校となってしまいました。噴火で埋まってしまった校舎が保存されていますが、なかなか見物です。
みんなが心配──そんな気持ちが文章に滲んではいますが、本当に琴音が思っていたのは恐らくそれだけではないでしょう。
不安なのは、寂しかったのは、誰よりも彼女自身だったはずなのです。
ハッピーエンドにしてあげたい。今回は、作者が一際強くそう思った回となりました。
【第十六話 君は知らない】
書手:蔵前瑛二
相手:千束立夏
舞台は台東区です。
今回はこれまでにないパターンの手紙でしたが、どうでしょうか?
やばい、書くこと思いつかない。
果たして今回の二人は、どちらが悪者だったのでしょうか?
流される人の情は脆く、果敢なく、けれど本当に純粋で──。
こんな悲劇が最近は多すぎますよね。
【第十七話 夢があるから】
書手:成増知里(「恋する団地少女」)
相手:スマッシュグラフィー
舞台は板橋区です。
今回もまた、いつもとはかなり違うタイプの「テガミ」に挑戦してみました。作者は実際にラジオ番組に手紙を出したことはないんですが、たぶんこんな感じなのかな……。いくら何でも長すぎますね。
ちなみに、今回はあとがきもとんでもなく長いですが、三回後の最終話に比べればこれでも短いんですよね(苦笑)
手紙を出した張本人も予想だにしていなかった、とんでもない──けれど最高に幸せな結末。しかし夢を見ていたのは、知里だけではなかったのに違いありません。
会場に集まった数千数万の観客たち、そして他でもない「スマッシュグラフィー」の二人もまた、自分たちを包むこの世界がひとつの“夢”を叶える瞬間を味わい、その幸せに浴したのでしょう。
ちなみにこの二人ですが、別作品「トワイライト・キャロリング」ではめでたく元気にデートに繰り出していますw
【第十八話 会いたくて、会えなくて】
書手:戸倉迅
相手:本多綾香
今回に限り作中で具体的な市名を挙げていないのですが、舞台は国分寺市です。二人が通っているのは市内の某大学で、所属の研究室や活動内容もろとも迅と綾香は別作品「トワイライト・キャロリング」に再登場を果たしています。鉄道技研や日立の研究所など、挟みたい小ネタは他にもたくさんあるのですが、さすがに無理だった←
友達以上、恋人未満の迅と綾香。この微妙な距離感を描きたくて、今回のテガミが生まれました。
二人の未来を妄想するのは、簡単なようで難しい。けれどきっと、平和なのだろうなと思います。友達にも戻らず、まだ恋人にも進まない今のままの関係が、きっと二人にとっては最も安定した在り方なのです。
こういう「恋愛」も、アリでしょうか?
迅と綾香がいつか本物の恋へと足を踏み入れることはあるのか。作者は、あると願っています(笑)
【第十九話 助けがほしい】
書手:高幡毅
相手:高幡恵美・芽衣・雅人
舞台は東京都日野市です。
ちなみに作中登場する某自動車工場の撤退は、実際に計画されています。2020年頃、茨城県へと移る予定なのだそうです。作者はここ社会科見学で行ったので、ちょっと寂しいですね……。
関連企業の中には、こんな道を辿る運命を背負わされたところもあるのではないか。そう思ったのが、この「テガミ」を書いたきっかけでした。
このあたりまで来ると、後日談の長さも半端ではなくなってきますね。もちろん作者が書いているわけなのですが←
テガミにかけた思いの大きさ、そしてキャラクターにかけた思いの大きさの分だけ、後日談がどうしても長くなってしまうんです。
ここまで長かった……。今章のテガミも、あと残り1枚ですね。
【第二十話 愛してるから】
書手:青山莉那
相手:慶興義塾高等部 演劇部
舞台は港区でした。それにしてもなんてド直球な学校名のつけ方なの? バカなの?←
さて。お気づきになった方は何人いらっしゃるでしょうか。
今回の主人公・青山莉那は、「テガミ」第一話の主人公でもあったのです。あれから計算上、三年の月日が流れていたことになります。そしてその間の経緯は、彼女が本文の中で語ってくれた通りです。
『短編集テガミ』中、もっとも青春ストーリーらしい物語となったような気がします。作者はけっこうひねくれてるので、これだけ真っすぐな部活! 青春! みたいな物語をなかなか書けないんですよね……。経験したことがなくて書きづらい、書いてるとつらくなる、という本音も(ry
ともあれ、これで無事に莉那を仙台へと送り出すことができました。
引っ越しによって互いの距離を無理やり引き延ばされ、二度にわたって大切な人たちを失うことになった悲劇の少女・莉那。そんな彼女の心を支えていたのは他でもなく、手紙に代表されるような『通信手段』でした。莉那と手紙の出会いが、この『短編集テガミ』の始まりでもありました。
次にこの作品で莉那が登場する時、彼女は何を失っているのでしょうか。
◆
さて。長期にわたって連載を行っているこのシリーズも、いよいよテガミの数が20の大台に乗っています。
第二章の貫通テーマは、『ぶつけたい、この感情』でした。言葉に乗せて簡単に口にできるほど、心の中の本当の気持ちは甘くはない。だから人はその代弁機関として、文章を用いてきた────。叩き付けるようにほとばしったココロの本音に、『感情』に、少しでも触れることはできましたでしょうか?
このシリーズを始めて二年以上。実は作者にも、こんなテガミをしたためる相手ができました。まさか本当に自分がテガミの書き手になるなんて……なんて思いつつ、いつも便せんに向き合っています。
文字の。
言葉の。
手紙の持つ可能性は、無限大です。
長らくの沈黙を経ることになりましたが、いよいよ次話より、第三シリーズがスタートです。
自分の心の中で、相手の存在を軸に燃え続ける衝動。それを気持ちと呼ぶのなら。
そこに相手の気持ちを加味すれば、自分と相手の心を共に内包したそれは気持ちの域を抜け、『想い』へと変わる。
一方的な自分の気持ちばかりでなく、相手への確かな『想い』を確かに表現できるだけの力が、可能性が、手紙にはきっとあるはずだ──。
そんな書き手の声に、耳を傾けてみませんか。
『届け、この想い。』 第三章は今年10月より連載開始予定です!




