第812話 門番(1)
清水の月9日。
もう夜が明けようかという頃に、俺はようやく首都スパーダへと辿り着いた。
間に合った、とはとても言えない。すでに十字軍は首都を囲む外壁である第三防壁を突破し、街へと雪崩れ込んでいる。この時点で、もう戦の趨勢は決まったと言って良い。
あとは、どれだけ逃がせるか。どれだけ、生かせるか。
昨日の一晩で、すでにして数えきれない死者が出ただろうことは、街のそこかしこから立ち上る火の手によって明らかだ。
それでも、一人でも多く救うために、俺はダキアから戻って来た。
出陣した時に通って来た、スパーダの西大正門は大きく開け放たれている。この夜明け前の時間帯では、普通は閉ざされているのにも関わらず。
門を守る衛兵は壊滅したか。あるいは、守って戦うどころではなかったか。さほど激しく争った形跡もなく、開かれた門の周辺は閑散としている。
どうやら、ここから侵入した奴らは、もうとっくに街中へと入り込んでいるようだ。
無人と化した大正門を、メリーが黒い疾風と化して潜り抜ける。
「マスター、そのまま西大通りを直進。学園地区の第二防壁正門まで向かってください。現在、門を防衛していますが、もう持ちそうもありません。門前広場では、多数の市民がパンデモニウムへ避難中」
被ったヘルムに、サリエルからのテレパシー通信が届く。
天馬シロを駆る貴重な空中戦力となれるサリエルには、ひとまず先行して首都の現状を探らせている。で、地上を走る俺のナビをしてもらう。
「了解だ、サリエル。敵はどんなもんだ」
「マスターならば、対処可能な戦力です」
なら、遠慮せずにこのまま真っ直ぐ突っ込んで行こう。
すっかり荒れたスパーダの街を疾走すれば、すぐにでも戦闘の音が捉えられた。
そして、大地を揺るがす地響きも。
「ちっ、タウルスまで出してきたか」
大通りの向こうに、見違えようもない巨大な人型を目視する。
幸いにも、一体だけ。なら俺一人でもなんとかなる。
周辺には、あの忌まわしい白装束の十字軍兵士達も大勢、見えてきた。だが見える限りではただの歩兵。ただの射手。あとは魔術師部隊と重騎士が少々といったところか。
タウルスまで含めても、ただ突っ込むだけなら俺一人でも問題はないな。
「————『虚砲』」
馬上でゆっくりと作り上げた必殺の黒魔法を、タウルスの背後から放つ。
知っていれば、コックピットハッチは見える。ガラハド要塞じゃあ、直接そこに乗り込んだくらいだしな。
弱点の位置が分かっている。そして、そこを一撃で貫くに足る威力の攻撃手段を持つ。ならば巨大な敵も恐れる必要はない。
撃ち込んだ『虚砲』は装甲もハッチも貫き、胸元の奥に位置するコックピットで、その全てを消し飛ばす威力を解放した。
ズンッ! ドドドドドッ!!
と、ド派手に倒れてゆくタウルスの足元を潜り抜けていく。
タウルスの巨躯が傾いだ時点で、ヤバいと悟った周辺の十字軍兵士達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。お陰で、進路上の邪魔な奴をメリーが撥ね飛ばすだけで、悠々と俺は敵中の突破に成功した。
「————ああ、無事で良かった。助けにきたぞ」
「お兄さん!」
門の上にいたのは、シモンだった。
『ガンスリンガー』のメンバーと、何故かソフィア理事長もいた。
他には、ライフルを握りしめた神学校の生徒達。スパーダの憲兵隊と衛兵。あとは武器だけ持ち出して参戦した一般人といった感じで、見事にバラバラの寄せ集め部隊である。
こんな編成で、よく戦ったな……どうやら、部隊はシモンが率いているようだ。もしかして、俺よりもよっぽど指揮官の才能あるんじゃないのか。
「シモン、まだ戦う力は残ってるか?」
「一晩戦って、みんなもう限界だよ。機関銃もほとんど撃ち尽くしてるし」
「そうか、じゃあ後は俺達に任せておけ」
タウルスが倒れたことで、十字軍部隊は混乱しているが、その内にすぐまた体勢を立て直す。下敷きになって死んだ間抜けは、せいぜい数十といったところだ。大した打撃ではない。
噴煙が収まってくる頃には、再び隊列を組みなおした奴らの姿が見えてくる。
けど、お前らの敵は、俺だけじゃないんだよ。
空を見ろ。暁の空に輝く、流星が見えるだろう?
「————最大照射」
上空から飛来したリリィが、『メテオストライカー』と『スターデストロイヤー』の二丁をぶっ放す。
地上を舐めるように降り注ぐ二本の光柱は、たかが人間の兵士を容易く消し炭に変えてゆく。
射手と魔術師は、慌てて攻撃の矛先を空へと向けるが、遅い。
煌々と光り輝くリリィからは、数えきれないほどの『光矢』が放たれ、遠距離攻撃手段を持つ部隊をピンポイントで射抜いていく。
上空から一方的に無慈悲な攻撃を喰らい、十字軍兵士はついに堪らず壊走を始めた。
「奴ら、どこに逃げるつもりなんだ?」
「こっち側から入った十字軍は、神学校を前線拠点にして集まってるはずだよ。今戦ってた奴らは、まだまだ一部に過ぎないと思う」
「神学校か……聞こえたか、サリエル?」
「こちらからも、確認した。相当数の十字軍兵士が駐留をしている。拠点として利用を始めているのは、間違いない」
「じゃあ、フィオナに任せる」
「了解です、クロノさん。サリエル、もうちょっと寄せて————」
そのまま通信が途切れて、数十秒後。
ドッ、ドゴゴゴゴゴッ————
神学校の建つ方向から、黄金に輝く火柱と、それを覆い尽くさんばかりの巨大な噴煙が立ち上った。
よし、上手く奴らのど真ん中に『黄金太陽』の爆撃は炸裂したようだ。
ペガサスに乗っているのは、サリエルだけではない。今回は後ろにフィオナも乗せている。なんだかんだで当初よりもずっと仲良くはなったこのコンビなら、上手く空から敵集団に大打撃を与えられると信じていたが、ここまで威力を発揮するとは。これもう完全に爆撃機だよ。
「とりあえず、俺達『エレメントマスター』だけ先行して戻って来た。もう少しすれば、俺の重騎兵隊が追いついてくるし、今日中には、歩兵部隊も何とか到着するはずだ」
折角、軍を率いて参戦したというのに、いきなりスタンドプレー全開である。
だが、首都スパーダ急襲という最悪の非常事態となれば、『エレメントマスター』だけで最速で駆け付ける価値はあるだろう。
勿論、途中で俺達だけでは強行突破が不可能なほどの大軍が陣取っているならば、全部隊と合流するつもりだったが。
こっち側は手薄で助かった。十字軍の全軍で首都を完全に包囲する配置をされていれば、こうはいかなかっただろう。
「そっか、良かった。でも、こんなに早く戻って来てくれるなんて」
「テレパシー通信のお陰で、ガラハド要塞が落ちたって情報はすぐ届いたからな」
それで早くスタートを切れたから、十字軍がスパーダに乗り込んで一日も経たずに、帰って来れたというわけだ。勿論、道中もかなり飛ばしてきたが。
「でも、敵の本隊は10万を超える大軍だよ。もしかしたら、第五次よりも数は多いかもしれない」
「ああ、『暗黒騎士団』とパンデモニウム軍を合わせても到底、太刀打ちできる数じゃない。それに、スパーダの防衛線は崩壊しかかっている」
今から、奴らを完全に押し返すことは不可能だ。
ガラハド要塞を突破し、東側からそのまま攻め込んできた十字軍本隊は、その数もさることながら、より強力な部隊も大量に抱えているに違いない。
そして何より、奴らを率いているのは、第八使徒アイであるそうだ。
「それでも、出来ることはやる。たとえ負け戦だとしても、一人でも多く、奴らを殺してから逃げ帰ってやるさ」
怒号と悲鳴の響く貴族街を、俺は一人、メリーに跨り駆けてゆく。
頭上には、フィオナを乗せたサリエルが。
リリィは、シモン達が残る門前広場へと残してきた。ほどなくやって来る重騎兵隊と、その後の歩兵隊と合流し、リリィの指揮下へと入れる。
それよりも前に、再び十字軍が攻勢をかけても、リリィがいれば持ちこたえるだろう。
「頼むから、まだ突破されるなよ」
俺が向かう先は、第二防壁の東側の門。すなわち、ガラハド要塞を突破し、そのままの勢いで大正門をぶち破り、十字軍本隊が猛攻撃を仕掛けている場所だ。
ここを抜かれれば、貴族街もあっという間に敵の手に落ちてしまう。そうなれば、いよいよ王城しか残らない。
スパーダ軍はこれを阻止すべく、ありったけの兵士を東門防衛に集中させているそうだ。シモンが寄せ集めの即席部隊で門を守らなければならなくなったのは、本来そこの守備についていた衛兵さえも引き抜かれていったからである。
普通ならありえない采配だが、そうでもしなければ、今にも抜かれそうなほどの窮地に陥っているということだ。
俺達が応援に駆け付けたところで、どこまで耐えられるかは分からないが……そこが、今の俺にとって戦わなければならない場所だ。
「————見えた」
よし、まだ門は破られてはいない。
だが、本当にギリギリといったところ。堅牢な鋼鉄の巨大門は、どれほど激しい攻撃を受けたのか、ボコボコに歪んでおり、幾筋かの亀裂さえも走っている。
防壁の上には、ちらほらとハシゴをかけて乗り込んできている十字軍兵士の姿も見えた。今はまだなんとか、侵入した奴らにも対応できているが……もう陥落寸前といった有様だ。
それでも門が無事なら、まだもう少し耐えられる————と思った直後であった。
ドン! ドン! ドガガガガ————
眩い閃光が、連続して門に炸裂する。
ただの魔法攻撃、ではない。恐らくは魔術師部隊が協力して解き放つ、城門破壊に特化した複合魔法だろう。一発、二発、どころではない。それらの釣る瓶打ちだ。
攻城用の魔法の連打によって、ついに門の耐久限界を超える。ひしゃげていた門扉は、いよいよ大きくめくれ上がり、そして轟音を立てながら倒れてゆく。
扉そのものも壊れた上に、蝶番も限界を突破したのだろう。支えを失った歪んだ門扉は、完全に敵を防ぐ役目を失った。
ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!
派手に正門が吹き飛んだことで、十字軍の大歓声が沸き上がる。
対する、スパーダ防衛隊の方は、悲鳴を上げたい心境だろう。
城門が破られるかどうか、は攻城戦において決定的なターニングポイント。それが達成されれば、実質的には防衛側の敗北と言ってもいいだろう。
速やかにこの場を放棄して、最後に残る第一防壁、スパーダ王城の城壁まで撤退するべき、
「いいや、まだだ————」
まだ、抑えられる。俺ならできる。俺にしか、できない。
覚悟はとっくに決めている、と言うと、少し違うかもしれない。
十字軍。奴らがこの首都スパーダを我が物顔で闊歩しているのを目にした時点で、俺の腸は煮えくり返って仕方がない。
アルザスで惨敗し、命からがら辿り着いた街。そして再び立ち上がり、新しい仲間達と出会った。ここには、数えきれないほどの思い出がある————だからこそ今の俺は、きっと冷静ではない。
この煮えたぎる怒りを、奴らにぶつけてやりたくて仕方がない。
部下を率いる団長でいられれば、それも抑えられただろう。そうそう無茶はできない。仲間を危険には晒せない。
けど、今ここにいるのは、俺達だ。『エレメントマスター』だけだ。
なら、いいだろう。少しだけ、甘えさせてくれよ、リリィ、フィオナ、サリエル。このどうしようもない激情に駆られた俺を、フォローしてくれ。
「————行くぞ、メリー。飛べ、『嵐の魔王』」
甲高いいななきを上げて、メリーは俺の無茶に応える。
踏み込んだ蹄は石畳を叩き割り、この呪いの重甲冑を纏った俺を乗せたまま、彼女は跳躍した。それはまるで、天を駆けるかのように。
門前に展開しているスパーダの守備兵。軽く数千に上る彼らの頭上を、メリーは黒い疾風と化して飛び越え、さらに破壊された正門を潜り抜ける。
目の前には、今まさに突撃をかけようと進み始めた、十字軍の大軍。白い津波と化して、一気呵成に迫り来る。
つまり、俺は単騎で奴らの前へと躍り出たのだ。
「ここを通りたければ、俺を倒してから行くんだな————『荷電粒子竜砲』、発射」
超電磁弾頭装填済みの『ザ・グリード・雷砲形態』を解き放つ。
門を破った今こそ、戦功を得んと我先に突撃してくる歩兵の大群を、超圧縮された雷撃の奔流が薙ぎ払う。たかがチェインメイルとサーコート程度の防御力で、耐えられる威力じゃない。
最前列の奴から、何人も、何十人も消し炭に変えて貫き、目の前の敵を一掃していく。ゆっくりと、大きく横薙ぎに放たれた『荷電粒子竜砲』が通り過ぎ去った後は、前方100メートルほどの地面を赤熱化させた。ジュウジュウと音を立てて沸く赤い地面の上には、一人も敵影はない。あまりの熱量に、完全に蒸発して影も形も残さなかった。
かといって、その後方にいた奴らも無事ではない。無数の仲間が肉の盾となって雷撃の威力を減衰させたとはいえ、ただの人間を殺すには十分すぎる高熱が襲い掛かっていた。
体が半分溶け落ちた者、重度の全身火傷を負った者。それら致命的な重傷者の群れの向こうで、サーコートや衣服に火がつく程度で済んだ奴らが、悲鳴を上げて転げ回っている姿が見えた。
たったの一撃で何百もの味方が消し炭に変えられ、炎上する多数の仲間達がもがき苦しむ地獄のような光景に、流石に先ほどの勢いは潰えたようだった。
そういえば、アルザスで『黄金太陽』を喰らわせた時も、お前らはしばらく呆然として、すぐには動き出さなかったよな。そうビビるなよ。俺はフィオナほどの火力はないからな。
「————な、なんなんだよ今のは!?」
「敵の大魔法だ!」
「急ぎ負傷者を下がらせろ! 魔術師部隊は次の攻撃に備えろ!」
「馬鹿野郎、あんな威力のを簡単に防げるかよ!?」
赤熱化した地面から濛々と煙が登る向こう側で、十字軍の慌てぶりが耳を立てなくても聞こえてくる。
追撃は、今はいい。俺もここを守るなら、出来る限り黒化を施して仕込みはしておきたいからな。
「ヒツギ、『機関銃形態』に換装。こっちの砲身は冷却してくれ。もう一発くらい、撃つだろうからな」
「了解です、ご主人様。鉈先輩はお呼びしますか?」
兜のディスプレイに、澄まし顔のヒツギが映る。
今回は『暴君の鎧』の兜は被ったままだ。テレパシー通信で情報をやり取りする時は、色々と表示機能もあるこの兜を使った方が便利だからな。
「見ろよ、ヒツギ。見渡す限り敵ばかりだ」
かなりの数を一撃で削ったが、これでも本隊からすれば極一部に過ぎない。10万を超える十字軍という怪物の鼻先に、ジャブを喰らわせてちょっとだけ怯んだ、くらいのもの。
アルザスに攻めてきた奴らだって、攻撃続行したんだ。ここにいる十字軍は、あの無数にも思えたダキアのネズミ軍団すらも、その兵数を大きく上回っているんだからな。
ああ、そうだ、あのネズミ共とやりあったお陰で、いくら殺してもきりがない、そんな状況でこそ最大限の効果を発揮する技を練習できたんだ。
「墓守の歌を聞かせてやる————来い、『ホーンテッドグレイブ』」
影から呼び出したのは、漆黒の薙刀。
柄を右手一本で握りしめ、軽く馬上から振るえば、「ォオオオン……」と不気味な唸り声が微弱に震える刃から洩れる。
メリーの上で、右手に『ホーンテッドグレイブ』、左手に『ザ・グリード』を持ち、ボロボロの前衛と入れ替わりに出てくる、新たな十字軍兵士達を睨みつける。
「お、おい、なんだよアイツ……絶対ヤバい奴だろ……」
「なんて禍々しい騎士だ、おぞましい」
「いや、アレがただの騎士なはずがない」
「そうだ、あの邪悪極まる風貌に、大魔法を放った実力。敵の将軍級に違いあるまい!」
単騎で門を守る俺に向かって、十字軍兵士はザワザワとお喋りしている。
流石にあれだけの数の味方があっけなく消し炭にされれば、勢いのまま突撃してくる気力は失せたようだ。
不死馬のメリーに、『暴君の鎧』を纏った俺の姿は、神聖な白が大好きな奴らからすると、これ以上ないほど分かりやすく邪悪な魔族を体現するビジュアルといったところだろう。
実際、俺はスパーダの将軍でもなんでもないが、こんなに目立つ敵を前にすれば、ビビる奴もいるだろうが————
「ええい、怯むな! あれこそ正に神の宿敵たる悪魔そのものよ! 誰ぞ、あのおぞましい悪魔の将を討て! アレを討ち取れば、褒美は望むがままぞっ!!」
立ち並ぶ兵士たちの後方。チラっと見た限り、豪華な法衣を纏った偉そうな十字教司祭が、兵を鼓舞するように叫んでいた。
いくら褒美を弾むと言われても、ただの雑兵には無茶ぶりもいいところだろう。
「はぁーっはっは! 退け退けぇ、雑魚共が! グレート・ホーガン様のお通りだぁ!!」
威勢のいい奴が、兵を割るようにして飛び出してきた。
ソイツは俺と同じように、立派な体躯の騎馬に跨った、全身鎧の騎士だった。
重騎士と同じような重装甲ぶり。だが、奴らお揃いのバケツ兜ではなく、雄々しい牛のような二本角を備えた兜を被り、やけにトゲトゲのついたアレな感じの鎧デザインだ。
そんな明らかにオーダーメイドな鎧を身に着けられるということは、ただの騎士以上に、金と立場と、あとは実力もあるのだと思われる。
「我こそは、モンドクレス伯十勇士が一人、『嵐の炎斧』ことグレート・ホーガン様よぉ! さぁ、悪魔の将よ、この俺様と一騎打ちをするがいいっ!!」
まさか、十字軍に一騎打ち文化があるとは。
ダイダロスが負けたゴルドランの戦いで、竜王ガーヴィナルと第七使徒サリエルは一騎打ちしたようだけど、そんなの例外中の例外だと思っていた。
第五次ガラハド戦争でもこんなことはなかったし。けれど、この十字軍の中核が貴族中心の編成であるならば、こういうことを言い出す奴がいてもおかしくはないのだろう。
コイツの名乗りには何一つ聞き覚えはないが、モンドクレス伯爵という奴の精鋭騎士なのだというくらいは分かる。
どんなお貴族様に仕えていようが、どんな仰々しい二つ名を持っていうようが、使徒じゃないなら恐れるには足りない。
一騎打ち、いいじゃないか。
ありがとな、グレート・ホーガンさんよ。お前のお陰で、楽に時間稼ぎが出来そうだ。
「俺の名はクロノ。『黒き悪夢の狂戦士』クロノだ。相手になってやる、かかってこい」