第785話 警備任務(2)
一夜明けて、曙光の月24日。
昼前には、昨日出発したフィオナ小隊とサリエル小隊、それぞれから進捗を知らせる伝令が届いた。
まずは、先にたどり着いたサリエルの方から。
昨日は夕方に、西の隣村に到着した。
その直後、夕闇に紛れるように接近してきた狼系モンスター『雪灰狼』の群れが村に襲来したが、即座に撃退。
戦闘の流れを見る限りでは、サリエルは的確な指揮で隊員を配置につかせ、彼らも忠実に従った。そして訓練通りの射撃と、古代の銃はスペック通りの威力を発揮し、ランク2程度の脅威度となる雪灰狼の群れを散らした。
初日にして、サリエル小隊は期待通りの働きを見せたくれたことに、俺は大いに感心する。
今日は村を起点に警戒範囲を広げつつ、分隊一つをこちらに帰還させ、村を繋ぐ道の警戒と、俺への報告をさせるそうだ。
「さて、フィオナの方はどうなんだろう」
俺は差し出された報告書を開く。
まず、昨日は出発してほどなくしてから、ガラハド山脈から降りてきた草食獣の群れを発見したそうだ。
山牛、と一般的に呼ばれているが、実は山羊の一種らしい。山牛は北の雪山から南の砂山まで、大陸全土に生息しており、細かな品種の違いは大体、生息地の地名からつけられている。ここの山牛は、ガラハドロングホーン種、というそうだ。
で、この山牛は、今回の警備任務が発せられる原因となった一種である。コイツを捕食する雪山のモンスターは多い。
普段は山から下りない奴が下りてくる、という状況はラースプンのように超強力な個体が出現した緊急事態では、とつい連想してしまうが、基本的にそういうのは稀な方だ。何年かに一度は、食料不足か縄張り争いか、あるいは単なる気紛れか、山牛の群れが麓まで下りて来ることはあるという。
ランク5モンスターの出現はない、と思いたいところだ。
ともかく、現状では山牛の群れの一つや二つ、歩いていれば見かけることもあるだろう。
そして、俺達が警戒すべきは、その群れを狙う肉食モンスターだ。
当然、フィオナも付近にモンスターがいないか調べさせたが……結果は、他には何もいなかった。山牛は呑気に雪の積もった針葉樹の葉をモソモソ食べていただけである。
ならばもう伝えるべきことは何もないと思うところだが、ここから何故か報告内容が長い。
その発端は、フィオナが部下のスナイパーライフル持ちに、お前ちょっと一頭撃って来いよ、と命じたことだ。
隊長として正当な命令権を持つフィオナの指示に唯々諾々と従ったホムンクルス狙撃兵は、見事にその腕前を披露。ヘッドショット。
もう二、三頭、確保しておけ、とさらにフィオナの指示が飛ぶ。
初弾命中で警戒し、一斉に逃げ出す山牛の群れ。だが、古代の狙撃銃『EA・ヘヴィーレイン』は頭に当たらなくても一発で倒せるだけの威力を誇る。
合わせて三頭もの山牛を仕留めたフィオナは、その場で血抜きだけ行い、村まで運んだ。
その後、到着した東の隣村にて、村人まで駆り出して急いで解体し、その場でみんなで焼肉パーティをして、とても美味しかったと……
「なに狩猟生活満喫してんだよ」
山牛は食肉としてはありふれた存在だが、やはり仕留めたばかりの肉は新鮮で美味しいだとか、その感想いるか? 曲がりなりにも傭兵団の団長にわざわざあてる報告書に書く内容ではないだろう。
あまりにも個人的な嗜好を反映させすぎている、と多少のケチはつけるべきか。
しかしながら、食料の現地調達に、肉を村人に振舞うことで現地人と円滑な関係を築く、など明確なメリットもある。
こういう時って、勝手なことをするなと怒るべきなのか。結果を出せばオールOKだと認めるべきなのか。
「フィオナは下手に言い聞かせるより、好きにやらせた方が絶対にいい気がする」
彼女の人となりをよく知っているからこそ、こういう結論も自信をもって下せる。
だが、そうでもない奴を評価しようと思った時、果たして俺はそこまで自分の判断を信じられるだろうか……はっ、これが管理職の苦悩ってやつなのか。
「二人とも、ご苦労様。フィオナとサリエルには、そのままの調子で頼むと伝えておいてくれ」
「イエス、マイロード」
こちらも異常なし、としたためた報告書を伝令に持たせ、各自の隊へと出発していくのを見送った。
今日もよく晴れていて、太陽は頭の真上で煌々と輝いている。
村人達は、男は切り倒した木を運んだり、薪にしたりと、冬の寒空の下で汗を流し、女は家で子供の世話をしながら内職に精を出している。
レキとウルスラと出会った、あの開拓村で見たのと似たような冬の田舎の景色がここには広がっていた。
ああ、平和だ。実に平和である。
「————やべぇ、今日の仕事、もうなくなったんだけど」
俺は暇だった。
警備任務の現場に到着して、早二日目で、いきなり暇を持て余し始めてしまった。
いやでもしょうがない、これはしょうがないことなんだ。そもそも警備がお仕事なのだから、敵がいなければ戦闘が発生しないのも当たり前。村を守らなければならないから、こっちから進んで敵を探し出すのにも限度ってもんがある。
こんな小さな村、昨日の昼から見回りを始めてもあっという間に一周だ。
村が見えなくなるほどまでの距離まで偵察に出向くなら、俺以外の団員の仕事となる。
団長としてフラフラ出歩けない俺は、この村からは離れられない。この実に平和で長閑な小さな田舎村から、動くことができないのだ。
やることなんて、ないに決まってるだろ。大体、警備のクエストを受ける冒険者も傭兵も、大半は待機がお仕事で、一度も戦闘がなく期間終了ってことも珍しくはない。
分かってはいた。いたはずなのだが、俺は警備クエストがこんなに暇を持て余すということを、実際にやるまではまるで理解できていなかったのだ。
「……まずいな、これは」
「そんなぁ、ご主人様! このヒツギがあーん、したご飯が美味しくないと言うですかぁ!?」
「別に誰が食べさせてくれたって、カロブーはまずいだろ」
暇なせいで、ヒツギが勝手に出てきても、止めもしない俺である。
ヒツギは自信満々に俺へ昼の分のカロブーを差し出し、あーん、と食べさせてくれた。味しない。まずい。
でも飯のまずさよりも、自分の暇さ加減の方が悩みの主な原因である。
「むーん、ヒツギが一番、ご主人様に美味しくカロブー食べさせてあげられるんですぅ!」
その自信はいったいどこから出てくるのか。どう食べたってカロブーはまずいに決まってる。
でもリリィなら「コレは美味しいの」と強烈な暗示をかけて食べさせてくれたら、味覚中枢が勘違いしてくれるかも。
「その証拠に、ヒツギとプリちゃんとで、食べ比べてみてくださいよ、さぁ!」
「ええぇ……」
味のしないモノをどう食べ比べると言うのか。
というか、俺これ二本も食べなきゃいけない流れかよ。
「……」
しかし俺の隣には、自分のカロブーを固く握りしめるプリムがいる。
その無感情な赤い瞳は、ジっと俺の方を見つめて、全力で命令待ち状態といった感じだ。ちょっと犬っぽい雰囲気で可愛らしい。
「さぁ、ご主人様、早くプリちゃんを食べてください!」
「変な言い方やめろよ」
ギルドは貸し切りだが、受付嬢の子とギルドマスターを兼任している村長もいるのだ。不適切な発言は、一瞬で村中に伝わるんだぞ。田舎の怖いところ。
「分かったよ、大人しく食べ比べてやるから、あんまり騒ぐな」
暇なので、こんなことにもつい付き合ってしまう。
何やってんだ俺は、と内心で思いつつ、プリムの方を向いた。
「今です、プリちゃん!」
「……んっ」
ギュッっと目をつぶり、勇気を振り絞るかのような態度で差し出されるカロブー。
なんだろう、この、小さい子供が恐る恐る、動物にエサをあげている的な対応は。
まさか、本当に恐れられているワケではない、と思いたい。ほら、俺ってカーラマーラでは結構、子供人気あったし? その辺ちょっと自信があるというか、やっぱ仮面で顔隠れてないとダメなのかと不安もあるというか。
物凄いどっちつかずな気持ちのまま、とりあえず震える両手で差し出されたカロブーを食べる。食べるというか、そのままくわえて、プリムの手から引っこ抜く。あとは自分で食べるからもういいよ……ちくしょう、ホントに味しなくてまずいなコレぇ……
「やりましたね、プリちゃん!」
「……はい」
「偉い、偉い! 偉いですよー!」
味気ないの極致をゆくランチを咀嚼する俺をしり目に、ヒツギとプリムの二人はなんだか仲良さそうにしていた。
ふむ、こうして見ると、二人とも年齢は近い……あくまで外見上はソレっぽいので、本当に友達同士のように見えてくる。
自我を持つ呪いの武器と、まだ誕生から間もない人造人間。どちらも普通の人間とは言い難い存在だが、それでもレキとウルスラのような仲良しになれるのならば、それはいいことだろうと思う。断じて、リリィとフィオナのように男を巡って殺し合う関係にまではなって欲しくないが。
そんなことを、先輩風最大風速のヒツギがプリムをよくできました、と撫でまわしている姿を眺めながら思うのだった。
「ご主人様、プリちゃんはまだまだ未熟な子ですが、ご主人様にお仕えする気持ちは人一倍、ホムンクルス一倍強いです」
「そうなのか」
あんまりそういう風には見えないが。
俺からすると苦手意識を持たれているというか……アレか、大企業の新入社員がいきなり社長に絡まれる、みたいな気持ちなのだろう。そりゃあ緊張もプレッシャーも感じまくりだよな。
たとえそうであったとしても、古代鎧の装着者として、俺と行動を共にすることくらいには慣れてもらわないと。
「ですので、何かお仕事させてあげてください」
お仕事欲しいの俺の方なんですけど……?
などと、言えるはずもない。ホムンクルス達も薄々、実は団長やること何もないのでは、とか思われていそうだが、それを自ら認めるわけには断じていかない。
いやしかし、プリムに仕事か。特にモンスターも出てこない現状、その実力を目にする機会も……
「ああ、そうか、自分で試せばいいのか」
まったく、暇になると脳が鈍るのか。それとも、暇な姿を見せまいとするプレッシャーのせいか。至極、当たり前のことを俺はすっかり忘れていたようだ。
「プリム、俺の相手をしろ」
「……イエス、マイロード」
一拍の間をおいて、俺の命令に応えたプリムは、そっと目を閉じ、制服のボタンを一つ、二つ、と外してゆき————違う、そうじゃない。
「プリムは今すぐ『ヘルハウンド』を装着して表に出ろ。ついでに、巡回してる奴以外の全員もだ。俺が組手をしよう。特別訓練だ」
ホムンクルスへの指示は、明確に。
変な風に受け取られると、取り返しのつかないことになるぞ。彼らは命令に常に全力だから。
なので、プリム、頼むからそのボタン二つ外しただけで解き放たれそうになっている、凶悪な胸の谷間をさっさと仕舞ってくれ。
さて、特に舗装もされていない無駄に広い冒険者ギルド前の広場にて、俺達は完全武装で集まった。とはいっても、10名にも満たない。
この村に駐留しているのは、俺含めて15名。俺の重騎兵隊4人、フィオナの魔術師部隊から4人、サリエルの歩兵隊から6人。俺を合わせて15名が、この村と周辺を警備する担当とした。
日中の警備には4組を出しているので、残りは7名。
まず俺の相手を務めるのは、唯一、古代鎧を身に纏うプリムである。
「これが『ヘルハウンド』か。動いているところは初めて見たが……なかなか、カッコいいじゃないか」
滑らかな黒一色の装甲に全身を覆われた騎士。やたらゴツくて刺々しい派手な見た目の『暴君の鎧』とは異なり、無駄のない洗練されたデザインに見える。
兜は犬というか、アヌビスみたいな面構えとなっている。鋭い目元のスリットには、赤く輝くエーテルの光が灯り、稼働状態を示していた。
こんな鎧兜の中身が、ロリ爆乳の女の子だとは誰も思うまい。それくらいの威圧感は発せられている。
「さぁ、どこからでもかかって来い」
対する俺は、同じく古代鎧『暴君の鎧』を装着し、完全防備を整えている。
手にする武器は、お互いに黒化剣が一本。古代鎧を着こんでいるから、木刀を使う必要もない。
いくら広場とはいえ、ここは村の中だから、銃はナシ。攻撃魔法もナシだ。一定範囲で区切ったリングで、近接戦闘オンリーがルールである。
「……行きます」
赤いエーテル光を背中に吹き散らし、猛然とプリム機が切りかかってくる。
うん、流石は本物の古代鎧だ。十字軍の機甲鎧よりも、出力が高そうである。
10メートルもない僅かな距離を、瞬きする間もなくブーストダッシュで詰め寄り、プリムの斬撃が俺を襲う。
なかなかの速度だが、真っ直ぐすぎる。レキだってもうちょっと考えて剣を振るだろう。
俺はその場で半歩かわすだけで、突っ込んできたプリムの初撃を捌く。
空振りに終わったプリムの背中はがら空きだが、手は出さない。まずは『ヘルハウンド』の性能を、しっかりと体感しなくちゃいけないからな。
「————フッ!」
おお、盛大に空振りしたものの、続く二の太刀は鋭い。
背中だけでなく、肩や脚部にも備わったブースターを点火し、素早く体を切り返した。
そうだ、古代鎧は各所にあるブースターを吹かせることで、生身では得られない推進力を発することができる。コレを利用して、急加速、急制動、急旋回、という動きをするのが、古代鎧を着た際の接近戦では大事だと俺は思っている。
その点、プリムは古代鎧の機動力をすでに上手く扱えているといっていいだろう。
「パワーもなかなかだ」
横薙ぎに繰り出された二の太刀を、俺はあえて剣で受け止める。
鍔迫り合いに持ち込み、パワーの検証。黒い刃がぶつかり合い、ギリギリと火花を散らす。
素の状態では、俺よりやや弱い、くらいだろうか。生身のプリムが非力なことを思うと、単純な機体スペックだけでこのパワーが出ているのならば、十分な性能だ。機甲鎧にも力負けすることはないだろう。
「くっ————んぁ!」
プリムの高い声が響く。
俺はそのまま自前の腕力で押し込み、彼女を弾き飛ばした。その鎧を着て吹っ飛んだのは初めてか。
ヘルハウンドの機体は揺らぐが、転倒せずに構えまでは崩さずに耐えていた。確か、姿勢制御機能なんてのもあるんだっけ。
「遠慮するな。もっと俺に、『ヘルハウンド』の力を見せてくれ」
「イエス、マイロード!」
闘志に火がついたか、初めて聞く力強い返答と共に、プリムは再びブースター全開で俺へと切りかかってきた————
「————うーん、いい汗かいたぞ」
ガラハド山脈へと沈みゆく夕日が村を赤々と照らし出す頃に、ようやく全員との組手を終えた。
ホムンクルス兵との戦いは、リリィとディスティニーランドでやり合った時にちょっと相手をしたので、おおよその性能は理解しているつもりだ。今回の組手でも、やはりあの時と同じ程度と感じた。
しかしながら、選抜されたエリートである重騎兵隊のメンバーは、明らかに歩兵隊よりも実力が上回っていた。それも、単に身体能力や魔力が優れているというだけでなく、戦闘中の対応にも、個々人で差が出ていた。つまり、経験を積んできた結果、個性というべき成長を遂げつつあるのだろう。
彼らの中で、最も強かったのは当然というべきか、最古参である一号だった。黒化剣を使った剣術はかなりのものだったし、俺が与えた呪いの武器『ダイアモンドの騎士剣』を使えば、さらにその力は跳ね上がった。
だが単純な戦闘能力でいえば、古代鎧には敵わない。プリムの『ヘルハウンド』はパワー、スピード、共に生身では到底追いつけない性能を発揮する。
プリム本人の戦闘経験はまだまだこれからだが、古代鎧を操ることには十分に慣れているので、実戦を積めばレキやウルスラのように、あっという間に成長していくだろう。
「風呂がないのだけが不満だな」
そんな贅沢なことをつぶやきながら、俺がギルドに戻ってマクシミリアンを脱いでいると、
「ご主人様ぁー」
と、ヒツギがやって来る。プリムの手を引いて。
彼女の方もちょうど着替えが終わったといったところか。再び黒い制服姿だが、その真っ白い頬は薄っすらと上気しており、こころなしか赤い目も熱っぽく見えた。
古代鎧はなかなか快適な着心地とはいえ、全身が頭まで包み込まれていることに変わりはないからな。やっぱり若干の暑苦しさからは逃れられない。激しく戦って脱いだ直後は、そんな感じにもなる。
「プリちゃんはどうでしたか。頑張りましたですか?」
「ああ、いい戦いぶりだった。すぐに強くなる」
「それでは、ご褒美に撫で撫でしてあげてください!」
「前に撫でたら倒れられたんだが、いいのかよ」
「大丈夫です、練習しましたので!」
なんだよ練習って。変なこと吹き込んでるんじゃないだろうな、ヒツギ。
訝し気に思いつつも、俺はプリムを見る。
彼女は赤い顔で硬直しており、一言も発していない。
いいのか、と聞いたところで、意味はないだろう。ご主人様相手に「撫でられるの嫌です」なんて言えるワケもないからな。
かといって、撫でなければ、触りたくもないのか、と受け取られてショック……かもしれない、ホムンクルスだし。普通の女の子だったら、普通に嫌だろうけど。
「れ、練習、しました……今度こそ、大丈夫、です……」
プリムの絞り出すような小さな声。
ギギギ、と錆びついた機械の様にぎこちない動きで、プリムは頭を差し出すように、ちょっとだけ体を俺へと傾ける。
ああ、これはもしかして、彼女なりに撫でられて倒れたことを、酷く気にしているのかもしれない。汚名返上の機会が欲しいのか。
「そうか、分かった」
そういうことなら、撫でなくてはいけないな。これでプリムの気が晴れるならば。
「プリム、今日はよく頑張ったな。これからも、よろしく頼むぞ」
サラサラの銀髪を撫でる。細く滑らかな指通りは、カーラマーラに置いてきた子供たちのことを思い出させた。
主人に仕えるために生み出されたホムンクルスとはいえ、あの子たちとこのプリムに、一体どれほどの差があるのだろうかと、ふと思ってしまった。
「ふぁい、ご主人様……」
プリムは今にも熱でぶっ倒れそうな顔色だったが、意識を失うことなく、確かにそう俺に返答した。
「やりましたね、プリちゃん! 特訓の成果です!」
「だから何の特訓なんだよ」
「それではご主人様、プリちゃんはもう限界なので、この辺で失礼させていただきます」
「そうだな、よく休ませておいてくれ」
ではー、と真っ赤に茹だったようなプリムを引っ張って、ヒツギは騒がしく去って行った。
「————ロード、ご報告です」
そして、ヒツギと入れ替わるようにアインが現れる。
「どうした」
「敵影を確認。小型ですが、数が数百。村の北東、距離約3000の位置で捕捉しました」
「分かった、すぐに全員集めろ」
どうやら、ようやくマトモな仕事ができそうだ。