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黒の魔王  作者: 菱影代理
第37章:支配者降臨
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第753話 第二階層・大平原攻略(3)

「うわぁー」

「わー、プニプニだー」

 と、子供達は俺が繰り出した黒いスライムに抱きこまれ、その辺でゴロゴロしている。

 ウチの子達もお気に入りだった魅惑の柔らかさだ。この子達もキャッキャとはしゃいで喜んでいる。

 危ないので、さっさと農具は手離させ、このヒンヤリしたプニプニ触感で優しくみんなを拘束した。

 確かに、小さな子供は撃てないさ。

 だが、止められないとは言っていない。

 何の力も持たない子供は、『黒水アビスドロップ』で適当に生成したスライムだけで簡単に動きを封じることができる。

 俺をただの火力バカと侮ったな。

 それ以前に、この不良少年冒険者達は、何もかも甘く考えすぎなのだが。

「ファーック!!」

「おいレキ、その辺にしておいてやれ」

 こんな小さな子供に凶器をもたせてけしかける、とはもう冗談や悪戯では済まされない。キツいお仕置きが必要か、と思ったところで、レキがさっさと飛び出して、主犯格の少年を殴り飛ばしていた。

 先制攻撃を喰らった少年は、そこから体勢を立て直す暇もなく、そのままマウントポジションをレキに奪われボコボコに。もうすでに、前が見えないだろうというほど顔が腫れあがっていた。

「ファックなの」

「ウルスラもそろそろやめるんだ」

 後ろの方では、背後を囲んでいた少年三人組が、物質化されたアナスタシアの腕によってタコ殴り。

 魔法職のウルスラも、とうとう直接ぶん殴る方を好むような脳筋に……

「みんな、いい子だから大人しく農場に帰るんだ。肉もお菓子も全員に配ってやるから、この戦いが終わるまで、絶対に外に出るんじゃないぞ」

「はーい!」

 すでに脅威は去ったので、俺は子供達にほどほどの食べ物を与え、農場の宿舎へと帰らせた。

 元より、この子達をけしかけた少年冒険者とは大した繋がりはないのか、彼らがフルボッコで敗北しても、特に誰も気にかけてはいなかった。お蔭で、俺の言うことを素直に聞いて、大人しく戻って行ってくれた。

「あんな子供を使うなんて、許せないデス!」

「そうだな」

 俺の代わりに、ストレートな怒りを爆発させたレキである。

 今まで自分達も、あれくらい小さい子を抱えながら苦労の連続でやってきたのだ。こういう真似をする奴らは、本当に心から許せないのだろう。

 そんな正義感に溢れるレキは、顔面ボコボコで意識が朦朧としている主犯格の少年から、有り金やら装備品やら、金になりそうなモノを手際よく巻き上げていた。

「お、お願い……やめて、許して……」

「安心して、下着くらいは残してあげるの」

 そしてウルスラは、眼鏡の魔術士少女と、白ローブの治癒術士少女から、文字通りに身ぐるみを剥いでいる真っ最中であった。

 二人の少女は涙目で怯えながら、スルスルと衣服を脱ぎあっという間に下着姿に。武器も衣服も持ち物も、全てをウルスラへと差し出した。

「ちっ、シケてるの」

 などと言いながら、下着姿の少女二人を情け容赦なく、アナスタシアの腕でぶん殴っていた。顔をグーで殴っていた。同性だから容赦の欠片もない。

 ウルスラとしても、レキと同じく無関係な子供を巻き込んだ彼らに対する怒りがあるのだろう。

 コイツらは少々痛い目を見て反省すべきだとは思うが、レキとウルスラのやり口は傍から見ていると完全にただの強盗行為。正義は常に、カッコよく見えるとは限らないのか。

 そんな正義の怒りに燃えた二人は、ぶんどった戦利品を嬉々として俺の影空間シャドウゲートへと突っ込んでいた。臨時収入デース、とレキの明るい笑顔が眩しい。

「お前らも、これに懲りたらこの戦いが終わるまで、大人しくしているんだな。まだ他の冒険者にちょっかいかけるつもりなら、次は死ぬぞ」

 全ての装備品を奪い尽くしたから、何かしようと思ってもできないだろうが。パンツとシャツの裸同然の装備では、地上に戻ることすら難しい。

 彼らには、ここで大人しくしている以外に選択肢はない。

「――はぁ、嫌な絡まれ方をしたもんだ」

 難なく切り抜けはしたが、一つ間違えば、子供達も怪我では済まない大惨事になるところだった。

 流石に、ここより先に人質として無力な子供を連れてきている奴らがいるとは思えないが……ともかく、どんな手段で妨害してくるか分かったものじゃない。

 やっぱり、休憩する時も俺は寝ずの番をしなければダメだな。

 一週間不眠不休で戦い続けるなんて、起動実験でもそうそうあることではなかった。今回はアレ以上の激戦になるだろう。最終目標はサリエルを相手にすることだしな。

「アイツと戦うことを考えると、あまり消耗するワケにもいかないか」

 警戒と継戦能力。どちらのバランスもよく考えて進めて行かなくては――と考え込んでいる内に、俺達はようやく、第二階層のボス部屋へと辿り着いた。

「周囲に他の冒険者はいないみたいデス」

「挑むなら今なの」

 周辺警戒を済ませてから、いざボス部屋へと踏み込む。

 ここは正規ルートの草原塔のボス部屋とは違い、普段なら単に第三階層へと行くための通り道である。

 森を抜けた先にある、岩肌が剥き出しの山に穿たれた洞窟だ。

 この洞窟の中には、元々はエレベーターシャフトだったのか、深い縦穴のあいた広間がある。そこを通ることで、下へと降りられる。

 以前、プラチナムマイマイを捕らえてに第三階層へ降りた時も、ここを利用した。

 あの時は身体能力に任せてそのまま縦穴を飛び下りるだけで済んだのだが……

「コイツがボスか」

 冒険者の通行を止める、大きなボスが広間にはいた。

 下へ通じる縦穴、その真上に陣取り、自らの巨躯でもって穴を塞いでいる。

「おー、デッカいタートル!」

「岩亀の亜種っぽいの」

 ボスは巨大な亀の姿をしていた。

 岩亀は第二階層で出現する、文字取りに岩のような甲羅を持つ亀のモンスターだ。ゾウガメのような姿で陸上で活動しているが、動きは鈍く、こちらから手出しをしなければ攻撃はしかけてこない、温厚な奴である。

 だが、ここにいるボス岩亀は通常の奴らとはサイズがまるで違う。

 穴を覆い隠すくらいだから、頭の先から尻尾まで全長は10メートルを優に超えている。

 そして、背負った甲羅は正にちょっとした岩山だ。荒削りの刺々しい岩肌に、点々と魔力を宿した魔石と思しき結晶が輝いている。


 ボォオアアアアアー


 広間に現れた俺達を見て、ボス岩亀は大きく吠えて――引っ込んだ。

 てっきり先制攻撃でブレスの一つでもかましてくるのかと思ったが、首と手足を引っ込めて、岩山甲羅へと引き籠った。

 完全防備の構えである。

「ボスなのに攻撃してこないデス?」

「岩亀は元々、積極的に襲ってこないモンスターなの」

「でもボスとしてここにいるなら、侵入者を排除しようとすると思うんだが」

 ボス岩亀に攻撃の気配はまるでない。

 接近して、俺が甲羅をコンコンと叩いても、何の反応もしない。

 これでは本当に、ただ巨大な岩が立ち塞がっているだけである。

「……もしかしてコイツ、穴を塞ぐだけが仕事なんじゃないのか」

 攻撃の意思はなくとも、ただボス岩亀がここを動かなければ、誰もこの穴を通り抜けることはできない。

 直径4メートルほどの縦穴はコイツの腹の下になり、入り込める隙間は全くない。

「オウ、それじゃあタートルどかせばいいだけで楽勝デスね!」

「どかせるの? このデカいのを」

 流石に俺とレキがフルパワーで力を合わせても、コイツを動かせるとは思えない。

「クロノ様!」

「分かった、やるだけやってはみるか」

 レキが今こそ出番とばかりに、目を輝かせて訴えて来るので、とりあえずダメ元で試してみる。

「ぐっ、うぉおおおおおおおお!!」

「ヤァアアアアアアアアアアッ!!」

 うん、ビクともしねぇな。

「動かすのはダメそうなの」

 涼しい顔でウルスラが言う。

 確かに、根が生えたようにボス岩亀の体は動かなかった。

 単純な重量だけでなく、何かしら魔法の力で不動を維持しているようにも感じられた。

 コイツをこの場からどかすのは、そう簡単には行かないだろう。

「ムゥー、それじゃあ、後はもう全力アターックしかないデス!」

「待って、レキ、それは徒労に終わるパターンなの」

 武器を抜いて今にも大岩へと斬りかかろうとするレキを、ウルスラが止めている。

 レキの言うように、攻撃を加えるというのは短絡的にも思えるが、立派な選択肢だ。

 殺すまでいかなくても、岩亀が危機を感じて逃げる程度にダメージが通ればいい。

 しかし、その一方で僅かでもダメージを通すことさえ難しい、という問題もある。

 生半可な攻撃では、ウルスラの言う通り、徒労に終わるだけ。

 サリエルとの最終決戦のために、力は温存、なんて考えていた矢先にコレである。あまり下手な真似はできない。

「とりあえず、俺が一発撃ってみるよ――『徹甲榴弾シェルブレイカー』」

 試し撃ちに選んだのは、即座に発動できる黒魔法では最大威力を誇るから。コレ一発くらいなら、惜しむほどの魔力量はない。

 ギガスの体も一発で吹っ飛ぶほどの威力を発揮したが、果たして――

「参ったな、甲羅に傷一つつかないようじゃあ、名前負けだ」

 爆煙の晴れた向こうからは、無傷のボス岩亀が姿を現す。

 甲羅シェルを砕く、という魔法名になっているのに、非常に残念な結果になってしまった。

「この感じだと、私がやってもダメそうなの」

「そうだな、甲羅にドレインかけても、あまり有効ではなさそうだ」

 ちょっと突っつくだけで、どうにかなるような甘い防御ではない。

 コイツの守りを突破するほどの威力を出すとなると……『虚砲ゼロカノン』しかない。

 魔力の温存という面では、まだ使いたくはないのだが、他に通用する手段がないのならば仕方がない。

「ウルー、なんかいいアイデアはないデスかー?」

「動かない相手なら、罠でも毒でもかけ放題だけど……私達はそういう手段に長けてはいないの」

 ここまで堂々と敵の前に姿を晒し、全くの無抵抗を貫くとなると、攻撃側が圧倒的に有利だが、このボス岩亀はそれを跳ね除けるだけの圧倒的な防御性能を誇る。

 たとえ俺のクラスが盗賊だったとしても、半端な罠や毒をかけたくらいで、コイツがどうこうなるとは思えないが……

「いや、毒は試す価値があるかもな」

 そういえば、一つだけ俺は持っているのだった。

 特に使う気もなかったから、すっかり存在を忘れていたな。

「クロノ様、何か毒物を持ってるの?」

「ああ、飛びっきりのヤバいヤツを持ってる――出ろ、『バジリスクの骨髄槍』」

 地面の影空間シャドウゲートから現れたのは、歪に捻じれた黒い骨の槍。

 元々は、殺し屋女こと『子殺し』ヒルダ、が使っていた呪いの武器だ。一応、戦いの直後に回収しておいた。

 この槍は下手に触れるだけで毒を受けるので、使い手自身にもそれなり以上の毒耐性や対策を要する。

 俺は黒化を施すことで、毒の影響を防いでいる。これができなければ、危険を承知で不法投棄するしかなかった。

 これで安全に持ち運び、売れると思って武器屋に持ち込んだら、余裕で買い取り拒否だったので、仕方なくそのまま影空間の肥やしに。

 まさか、この毒武器が日の目をみることになろうとは。

「危ないから、二人は下がっていろ」

 バジリスク、という凄まじい猛毒を持つドラゴン、その激烈な毒素を精製する骨髄を丸ごと槍として加工した、危険極まりない猛毒武器。

 先端からはバジリスクの猛毒ブレスに匹敵する毒を噴射する機能が備わっている。コレを利用して、子供の腹に猛毒を仕込んで破裂させる、自爆テロの真似事をアイツはやっていた。

 だが、コイツの真の力は、やはり直接、相手に突き刺し猛毒を喰らわせること。

「バジリスクの猛毒に、お前は耐えられるか?」

 身じろぎ一つせず、完全に大岩と化しているボス岩亀の甲羅に乗り、俺は『バジリスクの骨髄槍』を突き立てる。

 カツン、と全く穂先が通らずに弾かれるが、ジワリ、ジワリ、と毒液が先端から滲んでくると――

「おおっ、ちょっと溶けて来たぞ」

 シュウシュウと音を立てながら、紫の煙をあげて甲羅が少し、けれど確かに溶けた。

 一度溶けはじめれば、その穴に穂先は食い込み、さらに奥へと毒液を吐き出す。

 ゆっくり、少しずつ、強固な甲羅を溶かしながら、奥へとバジリスクの槍は突き進む。なんだか、自分が虫歯菌になって、エナメル質でも溶かしているような気分だ。

 じれったい速度で甲羅を溶かし続けると、グラリ、と足元が揺れた。

「どうやら、貫通したようだな」


 ボォオオオアアアアアアアアアアアアッ!


 と、けたたましい悲鳴を上げて、ボス岩亀の首が飛び出てくる。

 甲羅を破り、肉体まで毒が達した。

 こんなちょこっと毒液が入っただけで、コイツほどの巨体でも相当に苦しいのだろう。

 亀の頭は吠えながら、よだれを飛ばして首を振り乱す。

「悪かったな。お前がちょっと避けてくれれば、それでいい」

 そんな無意味な謝罪を口にしながら、俺はいよいよ揺れに揺れ始めた甲羅から飛び降り、退避する。

 ボス岩亀は毒の痛みに苦しみもがくように、引っ込めていた四本の足も出し、ついに不動の座から動く。

「隙間が空くぞ、一気に飛び込め!」

「オーライ!」

 一際大きく唸り声を上げながら、ボス岩亀の体が大きく傾くようによろめけば、ついに人が入り込めるだけの隙間ができた。

 足で潰されないようにだけ注意しながら、俺達はそこへ滑り込む。

 ふわり、とした浮遊感と共に、体が中空へと投げ出される。無事に縦穴に飛び込むことに成功した。

「よし、これで第二階層も突破だ」




「あー、大っきい亀だー」

 まったく無警戒に、第三階層へと続く縦穴を塞ぐボスモンスターの大岩亀を指さして、幼女リリィはキャッキャしている。

「リリィさん、危ないのでもう少し下がっててもらえますか」

「リリィ大丈夫だもーん」

 やたら上機嫌でクルクル回ってふざけているリリィに、やれやれ、とフィオナは溜息を吐いた。

 クロノはいないが、この大迷宮を進めば、必ずクロノと会える――その確信が幼女状態でもはっきり残っているようで、リリィは終始、ご機嫌であった。

「この調子では、第三階層も私達だけで突破するかなさそうですね」

「問題ありません。リリィ様の力を温存しておくのは適切な対応」

 第一階層は最高の相性があったので、リリィに頼って最速突破を果たしてきた。

 だが、リリィには今でも変身時間の制限はあるため、無限に力を使い続けることはできない。

 広大な階層が5つもある巨大なダンジョン『大迷宮』を踏破しようというならば、それ相応のスタミナ対策は必要だ。

 そのため、この第二階層からはリリィは幼女状態に戻り力の消費を抑え、攻略はフィオナとサリエルの二人に任せて、このボス部屋までやってきた。

「それでは、さっさと亀をどかすとしましょう」

「フィオナ様、この魔石を採り込んでいる大岩亀を動かすなら、上級攻撃魔法でも不可能です」

「まぁ、そうでしょうね。大きくて重くて硬い上に、自分自身に防御魔法もかけているようですし」

 岩山のような甲羅に点々と輝く魔石の結晶は、単なる偶然の結果で生成されたモノではなく、それそのものが大岩亀に魔力を与える外付け装置と化している。

 故に、通常以上の出力で、ただでさえ頑強な巨躯を、さらに硬い守りを誇る防御魔法が発動していた。

「フィオナ様の力なら、大岩亀を消滅させることも可能ですが、それを実行した場合、このエレバーターホール、通称ボス部屋そのものが崩壊する危険性がある」

「まさか、私が何の考えもなしに、この狭いところで『黄金太陽オール・ソレイユ』を撃つとでも思ったのですか?」

 思っていた。サリエルをして、真っ先にそう思っていた。

 でもサリエルは沈黙で答えた。

 サリエルは嘘をつけないが、黙っていることはできるのだから。

「私はこれでも『エレメントマスター』の中で最も冒険者としての経験があります。ソロでいつも適当に撃っているだけでは、ダンジョンで生き埋めになるだけですからね。こういう時の対策くらいは心得ていますよ」

 それは大変失礼いたしました、と言う代わりに、サリエルは深々と頭を下げた。

「それでは、フィオナ様にお任せします」

「ええ、任せてください。こういった、ただ大きなモンスターが入口を塞いでいる、というのはダンジョン攻略では、稀によくあることですから」

 珍しく冒険者の先輩らしい面を見せられる機会がやってきたことが楽しいのか、若干、ドヤ顔となりながら、フィオナは愛用の長杖『ワルプルギス』を構えた。

 封印装甲の花びらは、4分咲きといったところ。

 入口を塞ぐ不動のモンスターは、攻撃はしてこないので、倒す必要性はない。ただ、その場をどかせれば、それで十分。

「――『石盾テラ・シルド』」


ドゴゴゴゴゴォッ!!


 という轟音を立てて、土属性の下級防御魔法『石盾テラ・シルド』が発動した。

 人一人を覆い隠す程度の大きさで石壁が一枚、展開される程度の効果だが、フィオナが使えばそのサイズは倍以上となる。

 フィオナが発生させた石の壁は、高さこそ通常サイズの2メートルをやや越えるか、といった程度だが、厚さは何倍にもなっていた。それは最早、壁、というより正四面体のブロック石材といった方が正しいだろう。

 そんな巨石の塊が、地面から生える。土魔法は地面から生やすのが普通。

 それがたとえ、大岩亀が踏みしめている足の裏からでも。


 グゥウオオォオオオオオオ!


 大岩亀が吠えたのは、突如として右前脚付近が隆起し、大きく体が傾いたことに驚いたからだろう。

 ただでさえ超重量の巨躯を誇る大岩亀。その体が揺れ動くことなど滅多にはあるまい。

 困惑したような声をあげつつも、大岩亀はそれ以上は動くこともなかった。

「あまり長くは持ちませんから、早く通りましょう」

「はい、フィオナ様」

「クロノが待ってるから、早く行こ!」

 三人は大岩亀が『石盾テラ・シルド』で持ち上げられた隙間をさっさと通り抜け、何の苦労もなく第三階層へと降りて行くのだった。

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[良い点]  この作品に対する不満は多々ありますが、もう慣れたのか、この作品はこういうものなのだと、受け入れる事が出来きてしまえる様になってしまったみたいです。  確かに、盛り上がりに欠ける話が続い…
[良い点] クロノ達の方が早く3階へ行ったのか? リリィ達の方が早くダンジョンに潜ったのに? それともリリィ達が先なのだろうか。 文章はクロノ達が先に描写されていたけど時間軸はわからない。 別の岩…
[一言] 記憶喪失とかいう茶番が終われば面白くなんのかな さっさとネル姫をヤンデレハーレムに入れて欲しい。
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