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黒の魔王  作者: 菱影代理
第36章:最果ての欲望都市
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第721話 アッシュVS錆付き

「おい、こっちを向けよ錆野郎――お前の相手は、俺だ」

 挑発の台詞を叫びながら、心の底から間に合って良かったと安堵する。

 マジでありがとうピンク。

 また会えたら、できる限りの謝礼はするぞ。ついでに昔の俺ことも教えてくれたら、もっと弾んでやる。

 ざっと見た限り、どうにかレキもウルスラも無事なようだが、かなり際どいところだったようだ。

 二人に相対している、異様に錆付いた鎧兜の騎士は、明らかに尋常じゃない魔力の気配を発している。というか、コイツは本当に人間なのか? 気配的にはアンデッドモンスターといったほうがしっくりくる。

「クロノ様! 多分ソイツは呪いの装備で狂ってるけど、凄く強いの! 『狂化バサーク』が発動している上に、『白流砲ホワイトブレス』の直撃にも耐える防御魔法を持ってる!」

「分かった、ありがとうウルスラ。レキと一緒に下がってろ」

 視界の端で二人が校舎へと退避していくのを見送りながら、正面では錆野郎を捉え続ける。

 奴はまだ動かないが、完全に俺の方を向いている。ターゲットを俺だけに絞ったようだ。

「こうして睨まれると、凄いプレッシャーを感じるな」

狂化バサーク』によって力を上昇させていることを差し引いても、錆付いた騎士は凄まじい迫力がある。

 コイツはさっきまで戦ってきた奴らとは、格が違う。僅かでも隙を見せれば、容易く俺を斬り殺せるだけの力を持っているだろう。

 あの奴隷船で目覚めてから、これほどまでに脅威を感じる相手と戦うのは初めてとなる。

「参ったな、もう手足を失くしても治す奴はいないってのに」

 恐ろしい強敵は機動実験で何度も相手はしてきた。しかし、それは勝って生き残りさえすれば、俺の体はたとえ四肢を失おうが全快するという前提でのことだ。

 どんな重傷でも俺を治すマスク共に感謝の気持ちは欠片も抱かないが、それでも俺が強敵相手に戦う時、手足の犠牲も厭わない捨て身の作戦ができたのは強みの一つではあった。

 だが、今は回復手段といえばポーションくらい。俺が瀕死の重傷でアイツを倒せたとしても、治す手段がなくそのまま死亡では意味がない。

「下手は打てない。なら――」

 安全に戦う最適な手段は何か、と問われれば、まずは遠距離からの攻撃だろう。

 どんなに獰猛な肉食獣でも、その爪も牙も届かなければ意味はない。ハンターのように、相手のアウトレンジから一方的に攻撃を加えれば、安全確実に倒せるのは当然の帰結。

 だが、この錆付きは銃弾一発で倒れるほどヤワではない。

「――叩き潰せ、『大魔剣バスターソードアーツ』」

 5本全て、全力で叩きこむ。

 ウルスラの『白流砲ホワイトブレス』を防いだということは、魔法の防御に特化した可能性もある。物理攻撃はそれほど、という性能ならば楽ができるのだが――

「コォオオ……フッ!」

 俺が操る5本の大剣は、それぞれ重ならないよう別々の方向から錆付きへと迫るが、奴は手にしたその長剣一つで迎え撃つ。

 暗い赤色の剣閃を残しながら、ほとんど同時に剣一本で真っ向から大剣を弾き飛ばす。

 奴の剣は鎧と同じく錆塗れのくせに、遥かに大きな俺の大剣を弾いてヒビ一つ入った様子はない。見た目通りの強度ではないってことだが、どんだけ硬いんだ。

「しかし、普通に物理攻撃にも強いか」

 そのまま継続して、二度三度と『大魔剣バスターソードアーツ』で叩いてみるが、錆付きは鮮やかな剣捌きで軽々と凌いでいる。

 それに、問題は奴の剣の強さだけではない。

「なんだ、錆が移っているのか……?」

 俺の黒化によって大剣は黒一色に染まっているが、錆付きの剣で打ち払われた刀身には、ジワジワと赤茶けた錆のような色が付着していた。

「ちっ、戻れ!」

 攻撃を中断し、全ての大剣を影空間シャドウゲートへと戻す。

 空間魔法の中で再び黒化をかけてみれば、やはり赤茶けた錆が移った部分は、奴の魔力で侵蝕されていることが実感できる。

「アイツも黒化と同じような使い方をするのか」

 錆化とでもいうべきか。厄介な能力だ。

 あのまま錆に覆われれば、制御を奪われるだろう。俺のように剣を操れるかどうかは分からないが、こっちの制御が途切れれば無力化されることに変わりはない。

 大剣には魔力量をかなりつぎ込んでいるからこの程度で錆の侵蝕は済んだが、普通の黒化長剣なら一発で奪われるかもしれない。

魔剣ソードアーツ』は使わない方がいいだろう。

 だが大剣をひっこめれば、錆付きを止めるモノは何もない。奴は猛然と、いや、マジで速いな、脚力も相当だ――爆発的な踏み込みでもって、俺へ向かって急接近してきた。

 この速度、この間合い。遠距離攻撃を放つなら、あと一回が限界だろう。

 疑似属性のお蔭で、色々と新たな黒魔法を編み出しはしたが、あの錆付きに有効打を与えるには何を選ぶべきか。

 考える時間すらないのは、戦いでは当たり前のこと。

 すでに俺は、ほぼ反射的に黒魔法を完成させていた。

「――『魔弾バレットアーツ焼夷弾ナパーム』」

 一直線に向かってくる錆付きに対し、俺は疑似火属性たる『黒炎ヘルフレイム』を満載した焼夷弾をくれてやる。

 真正面から放たれた直線攻撃など、錆付きならば余裕で反応する。奴がとった対応は左腕に装着した小盾バックラーを構えることだった。

 錆だらけの小さな盾は如何にも頼りないが、錆の剣と同じく見た目通りの性能ではない。ウルスラの『白流砲ホワイトブレス』も防いだというし、防御には自信があると見た。

 そして、俺の『焼夷弾ナパーム』は錆付きのバックラーのど真ん中に命中し、そこに秘めた漆黒の火炎を解放した。

 俄かに噴き上がる黒々とした火炎の渦。錆付きの姿を完全に覆い尽くすほどの大きな炎が辺り一面に迸って行く。

「効果はイマイチか」

 燃え盛る黒炎を割って、剣を振り上げた錆付きが現れる。その全身に黒い炎を纏わせながらも、走る勢いは衰えない。

 すでに奴は、俺を剣の届く間合いに踏み込みかけている。

 対する俺は、武器どころか防具のローブすら失った半裸状態。流石に生身で、あの錆塗れの剣は受けたくないな。

「――『黒土防壁シールド・ディアース』」

 俺が立つ足元の黒化は「お前の相手は俺だ」と叫んだ段階から進めている。

 発動させた疑似土属性こと『黒土カースドソイル』による防御魔法、『黒土防壁シールド・ディアース』は瞬時に俺を守る壁として突き立つ。

 黒土と名付けはしたものの、黒々とした防壁は金属質な光沢を宿し、見た目通り鋼鉄の強度を誇る――と思うのだが、ギャリギャリと不穏な金属音を奏でながら、厚さ30センチはある壁が切り裂かれつつあった。

「どういう斬れ味してんだよ……」

 流石に一息で一刀両断とはいかなかったので、俺は余裕をもってその場の離脱に成功はした。

「クォオオオ……」

 再び距離をとった直後、完全に黒い防壁を切断しきった錆付きが、不気味な呼吸音を漏らす。

 その体はいまだ黒炎に包まれ火達磨と化しているのだが、まるで効いている様子は見られない。

「どうなってんだ、コイツも痛みを感じていない……それどころか、呼吸もままならないはずだが」

 『魔弾バレットアーツ焼夷弾ナパーム』の『榴弾砲撃グレネードバースト』との違いは、燃焼時間である。

 グレネードは単純に爆発力に特化させているが、ナパームの方は爆発力よりも長く燃え盛るようにしている。

 ポイントは、疑似水属性を利用して燃料をセットで作り出していることだ。弾が弾けた瞬間に、炎と同時に液状燃料もバラ撒かれ、付着した部分が燃え続ける。

 錆付きはほぼ全身に燃料も被った状態だから、しばらくは火達磨のままである。この燃料も試行錯誤を繰り返しながら調整したからな。少しばかり水をぶっかけた程度では鎮火できない。

 基本的に防御魔法は発動した瞬間が最も頑丈で、魔力密度も最大で強度が高い。一度出現した魔法の物質は、時間経過で空気中に魔力が拡散してゆくので、その耐久は徐々に下がって行き、一定の魔力密度を下回れば防御魔法そのものが崩れてしまう。

 だから、瞬間的な火力でブッ飛ばすよりも、時間経過を狙って継続的に炎が燃え続ける効果の方が有効な場合もあると思って、俺は『焼夷弾ナパーム』を編み出したし、この錆付きにもぶち込んだ。

 しかし、錆付きはどう見ても防御魔法の類で身を守っているようには見えない。

 ダイレクトに火炎の灼熱をその身に受けているはずなのに、まるで火などついていないかのような様子である。アンデッドモンスターのゾンビですら、火が付けば暴れるというのに……完全な火属性への耐性でも持っているのか。あるいは、弱点などない不死身の肉体なのか……

「ハァアアアアアアアアア――『最大狂化ファオアスト・バサーク』」

 その場で剣を構えた錆付きは、俺を厄介な相手と見たのか、さらなる力を解放してきた。

最大狂化ファオアスト・バサーク』は狂化バサーク系の上級魔法に位置する。元から『大魔剣バスターソードアーツ』を真っ向から弾けるパワーがあったというのに、さらに強くなるとは。

 禍々しい赤黒いオーラを全身から噴き出した錆付きは、いまだ燃料によって燃え続けている黒炎すら吹き飛ばす。

 完全に元通りとなった錆の騎士は、さきよりも倍するほどの脚力を持って、瞬時に間合いを侵略してくる。

「速いっ――」

 多分、俺よりも。伊達に上級の狂化でパワーアップしていないってところか。

 さらに強化された腕力も加味すれば、下手な防御魔法ではそのまま切り裂かれるだろう。かといって、さっきの『黒土防壁シールド・ディアース』を出すには、地面を黒化する仕込みもいる。

 ただ回避一辺倒では凌ぎきれない。今の俺に必要なのは、頼れる盾であった。

「ぐうっ!」

 再黒化を完了させた大剣を影から引き抜き、迫る錆の刃を防ぐ。

 ギィイインッ!! とけたたましい音と激しい火花を散らしながら、互いの剣が弾かれる。

 くっ、想像はしていたが、とんでもないパワーだ。真っ向から斬り合えば、力だけで強引に押し込まれかねない。

「これならどうだ――『封冷撃コールドシール』っ!」

 大剣の柄を握りながら、無手で氷属性の魔弾を放つ。

 殺傷力よりも、相手を凍らせて動きを封じる、簡単な封印系の黒魔法なのだが、

「クォオオオッ!」

 着弾と共に瞬時に凍結を始めた氷を、強引に砕いて動きながら、錆付きは俺へと肉薄する。

 奴の全身からギシギシと軋むような音が上がっているのは、ナパームを浴びて熱された金属鎧が、急速冷凍されたせいだろう。だからといって、その装甲にはヒビ一つ入りはしない。熱膨張の力にも、強引に耐えるだけの耐久度とは。

「次はコイツだ――『雷撃砲ショックバスター』」

 二撃、三撃、と錆付きの剣戟を凌ぎつつ、疑似雷属性の魔弾を叩きこむ。

 至近距離でバリバリと弾ける黒い雷光は錆付きの胴体に直撃。

 全身金属で覆われた奴には、雷撃の威力はよく通るはず。撃たれた瞬間に、ビクリ、と大きく体が痙攣するような反応を見せるが、

「コォアアアアッ!!」

 すぐに振り切って、苛烈な攻撃を再開する。

 どうやら氷も、雷も、決定的な弱点属性にはなりえないようだ。

「一瞬でも隙を作れるだけ、雷の方がマシか」

 大剣を盾として、雷撃で牽制。これで多少は奴の猛攻を凌ぐことはできそうだ。

「あと必要なのは、この頑丈な錆野郎をぶっ壊すだけの火力」

 ちょうどいい、試してみるか。

 俺は各属性の魔法の開発もしていたが、それとは別に力を入れていたのが、さらに威力の高い魔法、いわゆる一つの必殺技の探究だ。

 そう、あのサリエルのようなアンチマテリアルを素手で止める化け物相手でも、通用できるだけの威力が欲しい。

 俺は強い。だが、それ以上に強い奴ってのは確実に存在している。この錆付きも、パワーとスピードで俺を凌駕している強敵だ。

 サリエル以外にも、こんな奴らがゴロゴロいるなら、俺は今よりももっと強くならなければ、誰も守れはしないだろう。

「――術式演算開始」

 俺の黒魔法は基本、無詠唱だ。

 この世界における魔法の使い方としては、呪文をゴニョゴニョ唱えるのが基本形である。

 俺は機動実験という名の実戦にいきなり放り込まれただけで、魔法の使い方を教わったことは一度もないし、他の魔術士達が唱えている呪文詠唱を聞き取ることもできない。脳内に仕込まれた翻訳魔法の問題だとは思うが、それはこの際、どうでもいいだろう。

 重要なのは、詠唱をすることで確実に魔法の完成度は上がるという事実。

 勿論、戦場では呑気にフル詠唱などできるとも限らないので、詠唱の省略・短縮に完全な無詠唱。または、同時発動のための二重詠唱ダブルスペルなどの高等テクニックは数多く存在している。

 しかし、そういったテクを行使する一流の魔術士でも、究極的にはフル詠唱した魔法が最も威力が出ることに違いはない。

 俺に魔法詠唱の言語そのものが理解不能なので、発音だけ真似しても何の効果もないだろうが……自分だけのイメージを元にして、時間をかけてより強力な黒魔法を構築することはできる。

 だから、俺が口ずさむ言葉は、本来の詠唱としての効果はないが、ただ黙ってやるよりかは幾ばくかマシになると思っている。そもそも、喋れるくらいの余裕がなければ、高度な黒魔法を発動させるための演算に、脳がついていかない。

「弾核精製」

 まずは、威力の核となる部分から作り始める。

 いつもの魔弾なら、なんとなくの量と勢いで黒色魔力を押し固めて弾丸の完成だが、今回は可能な限りの量と密度で圧縮していく。

 腹の底から、あるいは、魂の奥だろうか、そういう魔力の源と感じる部分から力を引き出し、発射点となる右手へと収束する。

「クォオオ……フウッ!!」

 しかし、目の前から迫りくるのは、錆付きが繰り出す嵐のような連撃。

 大剣を握り、凄まじい威力で放たれる錆びた刃を受け、流し、弾く――痛ぇっ、今ちょっと脇腹にカスったぞ!

「混沌、融合……」

 奴の猛攻を凌ぎつつ、隙を見て『雷撃砲ショックバスター』を浴びせる。僅かな硬直が発生した隙に後退で距離をとりつつ、時間と余裕を稼ぐ。

 大剣と雷撃で防御しつつ、黒魔法の演算を進める。自分でも、かなり無茶な真似をしている自覚はある。魔術士ってのは本来、前衛に守ってもらいながら魔法を完成させるもんだしな。

 ソロの辛いところである。ああ、クソ、マジで頭が割れそうだ。

 剣を握る右手に魔力を集めながら、左手には『雷撃砲ショックバスター』を装填。自分で使っている黒色魔力の流れがごっちゃになりそうな感覚だが、落ち着け……

 弾核を作るための黒色魔力は、今の俺が扱える全ての疑似属性を使う。

黒炎ヘルフレイム

黒土カースドソイル

黒雷エンドボルト

黒氷ゼロフリーズ

黒風デスブラスト

黒水アビスドロップ

黒光アンチレイ

 これら七つの疑似属性へと変換した上で、最初に黒色魔力のみで圧縮した中へと混ぜ込んで行く。

 注ぐ量は慎重に、順番に。

 火、土、雷、氷、風、水、光。何故かこの順番でなければダメだった。一つでも順序を違えれば、構築中の魔力核は崩壊する。

 多大な精神力と集中力による制御が必要な演算箇所なのだが、錆付きには知ったことではない。容赦のない連撃で、徐々に俺を追いこんでゆく。

「砲弾外殻形成」

 綱渡りのような魔力圧縮の混沌融合を終えて、次はそれを覆う砲弾の形成。

 砲弾とはいうものの、その形状は真円になる。この形で覆わないと形成した核が安定しない。

 核を作り終えた後に暴発すると最悪だ。もしかすれば、俺の右腕ごと吹っ飛ぶかもしれない。

 この黒魔法を開発して、思えば初めて強力な魔法ってのは自分の身さえ滅ぼしかねないのだと実感したものだ。

「――『魔手バインドアーツ大蛇オロチ』」

 ここで発動するのは、拘束用の黒魔法だ。あの殺し屋女にも使ってやったが、錆付きを止めるにはそれなり以上の強度が求められる。

 俺はグラウンドを逃げ回りながら、最初に『黒土防壁シールド・ディアース』を張った地点まで奴を誘いこんだ。狂化バサークってのは異常なパワーをもたらすが、理性は失うという。目の前の相手を殺そうと追いかけるだけだから、奴は何の警戒もなく、自分が切り裂いた『黒土防壁シールド・ディアース』の残骸が転がる、この場所に踏み込んできた。

魔手バインドアーツ大蛇オロチ』は大蛇のように黒い鎖の魔手を編み込んで作る。

 鎖一本よりもずっと黒色魔力を必要とするが、防御魔法の残骸などを利用して補うことは可能だ。魔術士の中でも、防御魔法を張ってから、それを攻撃用に転じて使う者は多い。

 そうして、瞬時に形成された黒い鎖の大蛇は錆付きへと絡みつき、その動きを止める。

「クォオオオアアアアアッ!」

 唸りを上げる錆付き。奴の全身から赤黒いオーラが燃え盛る様に迸ると、見る見るうちに絡みつく大蛇が赤錆に染まって行く。

 やはり、黒化と同じ侵蝕能力。それも、かなり強力なものだ。大蛇の拘束とて、そう何秒も持ちはしない。

「もう一度ぶち込んでやる、『大魔剣バスターソードアーツ』っ!」

 右手に握る大剣をそのまま投げつけると同時に、影から残り4本の大剣も発射。

 身動きのとれない錆付きは、今度は剣だけで捌くことはできないが――奴にはまだ、自慢の盾が残っている。

「コォオオオオ」

 大蛇に絡みつかれながらも、高々と掲げた左腕のバックラーは、不気味な赤い輝きを発した瞬間、全身をドーム状に包み込む赤黒い光の結界を展開させた。

 直後、俺の大剣が殺到し――ギィンッ! と硬質な金属音を響かせながら、弾かれる。

 頑丈な防御魔法。だが、無傷では済まなったようだ。

 奴の結界はヒビが走り、もうひと押しで割れそうな様子。

 よし、ここまで削れば、いいだろう。

侵蝕弾頭エクリプス装填――」

 大剣を投げて無手となった右手を、真っ直ぐに錆付きへと向ける。

 この掌には、すでにお前を葬るだけの力が宿っている。

「クォオオオ……ォアアアアアアアアアアアッ!!」

 魔力の気配を奴も感じたのか、雄たけびを上げながら、ついに大蛇の拘束を振り切って動き出す。

 だが、一歩遅かったな。

「滅ぼせ――『虚砲ゼロカノン』」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ミアはクロノが魔王の加護の力を使いこなせるようになることを、狙っているのでしょうか。
[良い点] 剣士としてじゃなく黒魔法としての成長してる所 [気になる点] ゼロカノンを作る時何故貰った加護順なのか
[一言] リセットクロノの方が魔法使いしてる件w
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