第709話 灰色のオリジナルモノリス
カーラマーラ中心部、人通りの多い表通りを、リリィは一人歩く。
風になびく白金のロングヘアと、身に纏った水色のエプロンドレスが可憐に翻る。そして何より目立つのが、その背に揺れる淡く虹色に輝く羽。
等身大の妖精、という希少な姿と、なによりもその美しい少女の美貌が、道行く人々を男女問わず振り向かせている。
その殺到する視線に気づかないはずもないが、それでも尚、まるで素知らぬように優雅に歩き続ける堂々たる姿が、より一層に彼女の魅力と気品とを引き立てていた。
そんな深窓の令嬢でも太刀打ちできない優雅な雰囲気を纏うリリィだが、その内心はとても穏やかとは言えない、複雑に乱れたものであった。
「これがカーラマーラのオリジナルモノリス……確かに、不安になるほど無防備に晒されているわね」
カーラマーラの中央に突き立つ、象徴的な高層建築『テメンニグル』の一階エントランスには、ただのオブジェのように灰色一色に染まったオリジナルモノリスが鎮座している。
昨晩、自らが提案した通り、まずは当初の目的であるカーラマーラのオリジナルモノリスを確保すべく、リリィはここまでやって来た。
今回の長旅の最大の目標。道中、色々とトラブルもあったが、ついにここまで辿り着いた。
しかし、その心に達成感などあるはずもない。
ここに立つのは、リリィ一人。クロノが隣にいない。ただそれだけで、あらゆる事象に意味は失われてしまう。
胸に穴が空いてしまったような、どうしようもない寂しさを感じつつも、リリィはそれらの感傷を合理主義で塞ぎ、自分が今成すべきことに集中する。
「……特に見張りも、結界もない。この街の人にとって、本当にモノリスはただのオブジェに過ぎないってこと」
リリィはまず、慎重にエントランス周囲の様子を探った。
モノリスの価値を知っている、あるいは、そうでなくても、これまでの国々のように厳重な保管が伝統となっていれば、ここまで無防備にオリジナルを晒すはずがない。
だというに、これらを守るモノが何も存在しないということは、やはり、そういうことなのであろう。
このエントランスは、ただテメンニグルの入り口というだけではない。どちらかといえば、大迷宮への入り口として有名だ。
かつてカーラマーラの大迷宮が発見されたばかりの頃、入り口はここ一か所だけであった。
鎮座するオリジナルモノリスを中心に、大きく描かれた円形の魔法陣が、大迷宮への入り口となる転移の効果を発している。
現在では他にも沢山の入り口が発見されているので、利用頻度は最盛期よりも減ったが、このテメンニグル・エントランスはランク4以上の高ランク冒険者専用として、より象徴的な存在となっていた。
今のエントランスにはそれほど利用者はいないものの、そこにいるのは誰もが質の良い装備に身を包んだ、ハイレベルな冒険者達である。
目立つリリィの姿に一瞥くらいはするが、特に気にかけた様子は彼らにはない。
誰も彼も、自分の仕事に忙しいようで、リリィは勿論、モノリスに全く感心を抱いていないことは明らかだ。
ここにいる人々にとって、この灰色の石版は単なる日常風景に過ぎない。
少なくとも、十字教の思想を持つ者が、オリジナルを狙ってここへ辿り着いていることもないようだった。
「なら、遠慮せずにもらいましょうか」
そうして、リリィは誰に止められることもなく、小さな白い掌をオリジナルモノリスの表面に触れた。
すでに、リリィはモノリスの操作を習熟している。そもそも、自分よりも優れた者を一人も見たことがない。
『審判の矢』の教祖などは、たまたま起動に成功しただけの幸運な素人も同然。
だが、リリィはあの教祖のように、唯一無二の絶対的な力を手に入れたという慢心はない。
パンドラ大陸にはいなくとも、アーク大陸にはいる。
ガラハド戦争で投入されたエンシェントゴーレム、もとい、人型重機『タウルス』。アレを実戦投入できるだけの技術力が一体どれほどのものであるか、リリィはよく理解している。
十字軍が持つ古代遺跡の技術力に比べれば、パンドラ側は致命的なまでに遅れている。恐らく、次に大きな戦争が起こった際には、さらなる改良を経たタウルスが現れるだろうし、最悪の場合、量産化という可能性もありうる。
現代の魔法技術を遥かに上回る古代の力。ただでさえ遅れをとっている上に、その土地に決定的な影響力をおよぼすオリジナルモノリスまで向こうの手に落ちれば、パンドラ大陸は成す術もなく蹂躙されるであろう。
誰よりも優れた古代の知識を有するが故に、誰よりもその危険性を認識している。
だからこそ、リリィは手慣れた操作にすぎないオリジウナルモノリスの黒化作業にも、一分の油断もなく決行する。
異常は一切ない。ファーレンを除く全ての箇所でオリジナルモノリスに触れてきたリリィは、これまでと何も変わらず、順調に進んでいることを実感していた。
灰色と化しているのは初めてだが、これも、いつもより大目に魔力を流すだけで済むだけの問題のようだ。この停止状態にあるオリジナルモノリスが再起動をするに必要な黒色魔力を満たしさえすれば、後はいつもと同じのように操作を完了する――はずだった。
「これは、なに……どこか、地下深くに繋がっている……?」
つぶやきと共に、パッチリと目を開いたリリィの目の前には、すでに黒く染まったオリジナルモノリスがあった。
感覚的にも視覚的にも、黒化は成功している。
だが、これまでと決定的に異なる点にも、同時に気づく。
「どういうことなの。これは間違いなくオリジナルモノリスだけど……中枢部は地下にある」
オリジナルモノリスの機能はおおよそ確認済み。
本来なら、これだけでいまだ機能が生きているカーラマーラという古代遺跡の全てを支配することが可能のはず。
しかし、このオリジナルが効果を及ぼすのは、どうやらカーラマーラの地表、街の外周部のみ。
中心部から地下深くにある大迷宮にかけての管理は、その機能が完全に隔絶されていた。
そして、古代遺跡カーラマーラの全ての機能を統括する真の中枢部は、どうやら大迷宮の最深部に位置しているらしい。
このオリジナルは、最深部の中枢機関から遺跡のコントロール権限の一部を委譲されている状態に過ぎない。
「この街を支配するなら、そこまで行かなきゃダメってこと」
ならば、ランク5冒険者の実力をもって、このカーラマーラの大迷宮を最深部まで攻略してみせるか――という考えは、直後に別な閃きによって遮られる。
「いいえ、都市機能を管理する程度なら、オリジナルだけで十分のはず」
すでに支配下に置いた黒染めのオリジナルモノリスを操り、リリィは中枢部に関する情報を探る。
当然、情報権限は中枢部の方が上であるため、アクセスは軒並み遮断され、得られる情報は断片的なものだけだったが、明確に分かることが一つだけあった。
「なに、この莫大なエーテル消費量は……一体何に使っているの?」
アトラス大砂漠に走る幾本もの大地脈、その合流地点となる巨龍穴が、カーラマーラの立地である。古代遺跡は、そもそもこの自然の魔力を利用するための施設であるのだが……現役稼働中のカーラマーラでは、巨龍穴に満ちる桁外れのエーテルを何かに使用しているらしい。
こんな反応は、これまで見てきたどのオリジナルにもない。
他とは違う、このカーラマーラにだけ、莫大な量のエーテルをつぎ込んで発動している何らかの機能がある。
果たして、それは一体何なのか。
「あまり、良い予感はしないわね」
「――その通り、アレは君達が触れるべきモノじゃあないよ」
聞きなれない、その声を耳にした瞬間、リリィは『メテオストライカー』を抜いていた。
無言で引き抜いた銃を向けたその先に立つのは、一人の子供だった。
「はじめまして、と言うべきかな。イリスの娘、妖精姫リリィ」
「黒髪赤目の子供……そう、貴方が古の魔王ミア・エルロード」
その子供は、クロノから聞いていた通りの出で立ちである。
艶やかな黒い髪に、輝く真っ赤な瞳。少年とも少女ともとれる、中性的な幼い容貌。
そして何より、いつの間にか黒いオリジナルモノリスに描かれていた真紅の魔法陣と、今この場に存在しているという状況が、疑いなくリリィに確信をもたらした。
「いいよ、そんなにかしこまらないで」
パンドラで最も有名な伝説の魔王の神を前にして、銃口を向けたこと、跪かないこと。そのどれも、ミアは気にしないとリリィの動きを制した。
「……何故ここに」
「君のお蔭で、やっとカーラマーラに来れるようになったからね」
オリジナルモノリスを黒く染めたことで、この場所に映し身を顕現できるようになったとの意味だが、リリィが問うたのはそんな分かり切った事情ではない。
「答える気は、ないということね」
「安心してよ、これは僕らの事情だから。君達にはあまり関係がない、こともないけれど……えーと、こういう時はアレだよね、時が来れば分かる、という感じ?」
「それは、クロノが私の下へ帰ってくるまで、ということかしら」
「あー、そういうところイリスにソックリだよ」
参ったな、とばかりに苦笑を浮かべるミア。
天然なのか、それともわざと口を滑らせたのか。その身ぶりからは、無防備なただの子供だとしか見えないが。
「それじゃあ、僕はこれで。僕のことは、忘れてくれると助かるよ」
そうして、黒い衣装に、身の丈に合わない異様に巨大な漆黒のマントを翻し、ミアはリリィに背を向ける。
その直後、吹き抜ける突風に、リリィは思わず目を閉じ――
「……ん」
目を開いた時には、そこに小さな魔王の姿はどこにもなかった。
「ふふふ、精神魔法が苦手だったというのは、本当みたいね」
魔王ミアが現れた。
そのことを、リリィははっきりと覚えていた。
「レジストはギリギリで成功……女王陛下の加護に感謝ね」
何となく、魔王ミアと妖精女王イリスの仲が良好ではないことを察している。
だからこそ、自分との出会いの記憶を消そうと、何らかの精神魔法を行使したミアに対し、リリィは重要な情報を消されるまいと、全力で精神防護を発動させていた。
普通ならば、神の魔法行使にいまだ人の身にあるリリィが対抗できうるはずもないのだが……そこは、同じ神であるイリスが助力してくれたのだと、リリィは感じていた。
「ともかく、余計な騒ぎが起こらないのは、助かったわ」
リリィは改めて、黒く染まったオリジナルモノリスを振り返り見る。
それから、周囲の人通りが元に戻っていたことも確認する。
ミアが現れた瞬間から、ここは神域と化していた。他の者は存在しない、切り離された空間だった。
ミアがこの場を去ったことで、全てが元通りに戻っている。
そしてリリィは、最後の確認をするべく、近くの冒険者に声をかけた。
「ねぇ、あの石版って、あんな色でしたっけ?」
「え? 前から黒かったですけど、何か違って見えます?」
何を当たり前のことを聞いているのだろう、という表情を浮かべる、治癒術士(プリ-スト)らしき女性の反応が、全てを物語っていた。
「失礼、私の勘違いだったみたい」
あまりに眩しいリリィの可憐な笑顔に、女性は変な質問をされたことなど全く気にせず、そのまま仲間達と共に、大迷宮へと転移していった。
「記憶改竄か認識阻害か……何にせよ、誰もオリジナルが黒くなったことに気づかないのは、これからやりやすくて助かるわ」
その日の晩、リリィ、フィオナ、サリエルの三人は、カーラマーラの地図を囲んで顔を突き合わせた。
「とりあえず、簡単に人探しの依頼はギルドに出しておきましたよ」
「ですが、あまり期待はできない」
まずは、フィオナとサリエルが今日一日の成果を報告する。
リリィと別行動をとっていた二人の仕事は、勿論、クロノの捜索活動である。
すでにクロノがカーラマーラに辿り着き、この街のいずこかに潜伏していることは、リリィの直感により確信している。今は大嵐の時期に入り、街から出ることもない。ならば、あとは探すだけ。
人探しの依頼を出すなら、まずは冒険者ギルド。しかし、その活躍にフィオナ達ははなから期待してはいなかった。
「この街の冒険者はあまり頼りになりそうもないですね」
「カーラマーラはギャングの勢力が非常に大きい。低ランク冒険者の大半は、ギャングの構成員でもある。また、高ランク冒険者は大迷宮の攻略に集中している」
「つまり、つまらない人探しの依頼など、真面目に受ける者はいないということね」
国や場所によって、冒険者ギルドでもそこにいる冒険者の質は大きく異なる。そういう点でいえば、ギャングが強い力を持つカーラマーラの冒険者の質は最低といっても良いだろう。
もしも彼らを効果的に扱うならば、ギャングそのものと関係を持ち、ある程度の地位を得なければならない。
「直接探してくれるよりも、情報屋に聞く方が確実でしょう。人が多い街だけあって、その辺は充実していますから」
「マスターの消息に関して、有力な情報を掴んでいます」
どうやら、思ったよりも幸先の良いスタートを切れたようだ。しかし、フィオナの冷めた表情から、あまり良いニュースではなさそうだとリリィは察しながら、話してちょうだい、とサリエルへ先を促した。
「ギャング『シルヴァリアン・ファミリア』に所属する奴隷商船、ホワイトウィッシュ四号船がカーラマーラの裏港へ帰港した際、襲撃を受け、奴隷二名が船長を殺害し逃走」
「あっ、何かもう嫌な予感がしてきたわ」
「この襲撃者に情報提供しつつ、ギャングに襲撃情報を横流ししていた情報屋と出会えたのはツイていましたよ」
「詳しく聞きたくないけど、聞いてあげる」
すでにげんなりとした表情を浮かべるリリィだが、サリエルは淡々と報告を続けた。
「襲撃者はランク3冒険者の少女二名。船長が購入した子供の奴隷を救出するために、襲撃を行ったそうです」
しかし、自分達が襲撃計画のための情報を仕入れた情報屋は、最初からシルヴァリアン・ファミリアについていた。情報屋は詳しい襲撃情報を、ターゲットである船長本人に流している。
結果的に、情報屋は襲撃者とターゲットの双方から金を貰えるという寸法だ。
欲をかいた多少危険な真似ではあるが、上手く事が運んだのは彼にとって幸いだったろう。しかし、そもそもこの一件に関わったことが不運であることに、彼は今日の昼間に初めて気づいたのだった。
「よく素直に吐いたわね」
「サリエルは拷問上手ですから」
「いえ、私は基礎的な技能しか習得していません。専門外です」
痛めつけられてベラベラ喋ってくれる者は楽だ。リリィがテレパシーで記憶を強引に引き出す確認作業も必要はないであろう。
「それで、奴隷として船に拾われていたクロノが、可哀想な彼女達を助けて一緒に逃亡したと」
「船長は子供を人質にとり、冒険者少女の両名を脅したそうです」
「クロノの前でやるには、最悪の外道行為ね」
義憤に駆られた彼が、後先考えずに助けに飛び出す姿が目に浮かぶ。
「それから、どうなったの?」
「船長はギャングの役員会の一員であったため、即座に報復に動いた。その日の晩には、潜伏先のアパートを襲撃」
引き連れて行ったのは、人数ばかりの下っ端構成員ばかり。それから、冒険者ランク3から4の用心棒が数人程度。
怒り狂ったクロノを前にその程度の戦力では、いたずらに犠牲者を増やす結果にしかならない。
「マスターはアパートに匿われていた他の子供を含む十数名を連れて、ギャングの包囲網を突破。数十人を殺傷しつつ、大迷宮の中へと逃れて行ったそうです」
「そこから先は?」
「不明です。いまだ、『シルヴァリアン・ファミリア』はマスター達を探しています」
「懸賞金がかけられていましたよ。100万ぽっちでしたけど」
「それはまた、随分と割に合わない仕事ね」
どの程度まで記憶を失っているか定かではないが、クロノの肉体はランク5冒険者としても上位の能力を秘めている。少なくとも、ランク5モンスターの討伐に、わずか100万クランの報酬額がつけられることはありえない。桁が三つは足りていない。
「ギャングの追手や賞金稼ぎ程度でクロノがどうにかなる心配はないけれど……面倒事になっているのは確かね」
僅か100万クランの懸賞額からして、ギャングはクロノの実力をまだ正確に測れていない。これからクロノが追手を返り討ちにして被害が増えて行けば、徐々にその危険度を認識していくことになるだろう。
その時に、割に合わないとギャングが手を引けば良いが……面子にこだわり、躍起になってクロノ殺しに挑み始めれば厄介である。金に任せて、汚い仕事も請け負えるランク5冒険者を雇うことも、この街のギャングなら不可能ではないだろう。
「では、潰しに行きますか?」
「大嵐が止むまでは滞在しなきゃいけないんだから、あまり派手な揉め事は起こすものじゃないわよ」
短絡的な解決策を真顔で言うフィオナに、呆れ顔でリリィが釘を刺す。黙っていたら、本当にギャングの本部を燃やしにいきそうである。
「かといって、見逃してやるほど甘くする気はないわ」
「リリィ様、何か策が」
「カーラマーラのギャングは、大きく分けて三つの勢力がある」
リリィはテーブルに広げられた地図を指す。
オリジナルモノリスを確保した後、リリィも自ら情報収集を行っている。すでに彼女の頭には、カーラマーラについての勢力情報が、ある程度の裏事情まで含めて入っている。
「まずは、この邪魔くさい『シルヴァリアン・ファミリア』。カーラマーラの北西部を支配下に置いている。三つのギャングの中でも最大派閥ね」
カーラマーラで活動する最も古いギャングであり、今も最大の勢力を誇っている。その構成員は主に人間で、特に現在の首領、アンナマリー・シルヴァリアンは亜人嫌いとして有名である。
「次に、南部を支配する『カオスレギオン』」
シルヴァリアンに次ぐ勢力が、この『カオスレギオン』である。
首領は悪魔の中でも珍しいディアボロス族の、ジョセフ・ロドリゲス。
同じ悪魔系の種族は勿論、ゴブリンやオークなどカーラマーラでは少数派の亜人種で構成されたギャング団でもある。
「最後に、東部を支配する『極狼会』」
ここ数十年の内に台頭してきた新興勢力。中小の雑多な組織がしのぎを削っていた東部地域を、やってくるなり瞬く間に平らげ、三大ギャングと呼ばれる一角を形成した。
首領はアンドレイ・リベルタス。
その特徴的な黒装束の出で立ちから、パンドラ西部の大国、ラグナ公国からやって来たことが分かる。噂では、国を追放された元貴族であるとか。
「ギャング如き、私達が手を煩わせる必要はないわ。シルヴァリアンには、身の丈にあった相応しい喧嘩相手を用意すれば事足りる」
「では、『カオスレギオン』か『極狼会』のいずれかを焚きつけると? そんなに上手くいくんですか?」
「そのための、オリジナルモノリスよ」
フィオナの素朴な質問に、リリィは幼い顔に浮かべた笑顔で応えた。
「謎の中枢部の存在によって、今、カーラマーラを治めるザナドゥ財閥から支配権を奪うことはできないけれど……大迷宮と中心部以外の都市外周は、すでに私のモノよ」