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黒の魔王  作者: 菱影代理
第36章:最果ての欲望都市
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第708話 買い出し

 ヤクザゾンビの溜まり場こと『スラッシャーの館』を最上階から秘密の地下室までじっくり家探しし、目ぼしいモノは魔力に飽かせた大容量の『影空間シャドウゲート』へ片っ端から放り込む。

 いやぁ、大漁、大漁。流石はデカい屋敷だけあって、家具や調度品は勿論、生活に必要な物はなんでも揃う上に、人数分にも余裕がある。布団や枕が足りないからと、他の家を物色する必要はない。

 しかしながら、余計なモノも沢山あった。特に、屋敷の主の寝室とかな。

 ここだけ何故か、女のゾンビがいた。三体もいやがった。普通に服は着ていたが、バカデカいキングサイズのベッドの上には、派手な下着と、透けた下着と、危ない下着が散乱していた。

 俺はあえて気づかないフリをしていたが、ウルスラが興味津々で回収しようとしていから、仕方なく止めに入らざるを得なかった。

 残念だがウルスラ、ソイツはまだお前には早すぎる。ほら、サイズもあってないし、大人しく諦めよう、頼むよ、いい子だから、な?

 やけに粘るウルスラを説得したりしつつ、子供の教育に悪そうなモノは回収せず、生活に必要なモノと、金になりそうモノはしっかりいただいてきた。

 これで殺風景な学校の地下シェルターも、少しは住み心地がよくなるだろう。

「ああ、ついにみんながベッドで眠れる日が来たデース」

 ズラズラと並べられたベッドを眺めて、レキがしみじみと言っていた。

 奴隷商人から逃げ出してからは、十人の子供をずっと抱えたままの生活だから、常に人数分のベッドなどあるはずもなかった。馬車の旅は寝袋だし、アダマントリアで暮らしていた頃でも、布団はあるけどベッドまでは揃えきれなかったという。無論、カーラマーラのボロアパートでも、床に雑魚寝が基本である。

 しかし、今は一人一つでベッドを使える数を確保したし、それらを設置できるだけの広い部屋もある。

 とりあえず大広間はリビング兼食堂といった生活スペースとして、寝室は幾つかある小部屋に割り振った。男子子供部屋、女子子供部屋、レキとウルスラの部屋、クルスの部屋、俺の部屋。と、このように分けている。

 流石に、子供一人につき一部屋をあてられるほどの部屋数は地下シェルターにはない。そもそも、下は5歳のリリアンからいるのだ。誰かと一緒でなければいけない小さい子もいるし。俺も昔は姉貴と同じ部屋だったし、相部屋は子供の宿命と受け入れて欲しい。

 個人部屋は保護者となる俺とレキ、ウルスラ、クルスだけにさせてもらった。ある程度、年齢を重ねるとプライバシーとか気になって来るし、自分の部屋があるというだけで、ストレスも大いに軽減できる。

 レキとウルスラは二人一緒がいいというので、あえて同じ部屋になっている。クルスは自分も男子子供部屋に一緒でいいと言っていたが……彼の年齢は14歳。中学二年生の思春期まっただ中だ。

 そんな少年に自分一人だけになれる部屋がないというのは、ちょっとアレな意味でも酷だと思う。男子中学生ともなれば、男なら誰でもやっているけれど、絶対に誰にも見せられないコトってのもあるし。今の俺がクルスにできる、最大限の配慮だ。もしも大きなお世話だったら、ゴメン。

 ひとまず、これで寝床はしっかりと確保できた。

 寝具の他にも、持ってきたテーブルやら椅子やらもひとまず大広間に設置していくが、流石にどれもそのまま使うのは憚られる。みんなで家具を掃除しているだけで、早くも一日が終わろうとしていた。

 翌日。冥暗の月4日。

 今日の予定は、いよいよカーラマーラの街に出て、必要な物資の買い出しとなる。

「イェーイ! クロノ様とデート、デーッス!!」

「ぎぎぎ……」

「ウルスラ、そんなに睨まないでくれ」

 前に何気なく約束した結果、買い出しには俺とレキの二人で行くことになった。素直に浮かれまくるレキと、それを実に恨めし気な視線を向けるウルスラ。この二人は、本当に仲良しなのだろうか。地味に不安になるくらいの様子であった。

「つ、次はウルスラと一緒に行くから」

「絶対なの」

「次はみんなも一緒に連れて行きたいデス」

「ああ、それもそうだな」

「レキぃいい、余計なことをぉ……」

 子供達もずっとシェルターに引きこもりだったら嫌気がさすだろう。危険はあるが、ストレスの問題も馬鹿にはならない。外出の機会はどこかで確保してあげたい、と真面目な考えに基づく提案のはずなのだが、ウルスラの呪うような眼つきがレキを貫いている。

「安心しろ、ウルスラ。次はちゃんと二人で行くから」

 俺は余裕の彼女いない歴=年齢の男だ。女子の気持ちにこれといって詳しかったり、聡い自信というのはないのだが、そんな俺でもここまであからさまな好意を向けられれば、思うところはある。

 なにせレキとウルスラにとって、俺は命の恩人含め、色々と恩もあれば、大活躍を見せた男ということになっている。それが純粋な敬愛か、異性としての感情か、というのは分からないが、少なくとも並み以上の好意を抱いてくれていることは間違いない。

 要するに、ウルスラもデートしたいのだろう、と流石に察することは可能だった。

 そんな可愛らしい気持ちが嬉しくもあり、そういう思いを抱くキッカケとなった時の記憶が欠けてしまっている今の俺にとっては、複雑なところもあったりする。そんな記憶喪失の俺でも、彼女達が喜んでくれるなら、デートでも何でもしてあげよう。

「それじゃあ、行ってくる」

「みんな、ちゃんとお土産買ってくるデスよ!」

 子供達に満面の笑みで手をブンブン振りながら出発したレキは、ギャングとのいざこざをちゃんと覚えているのかどうか、ちょっと不安になる。けど、その辺は俺がフォローしてあげて、今の彼女には純粋にデートを楽しんでもらった方がいいかもしれないな。

 レキもウルスラもそれぞれ強力な戦闘能力を誇るが、年頃の少女であることに変わりはない。自分達も子供に過ぎないのに、さらに小さな子達を守り抜いてここまでやって来たのだ。俺自身も大人とは言い難い未成年だが、それでもずっと年長の俺がいる以上は、彼女達の負担は少しでも軽減してやりたい。

 いや、これからは俺が二人のことも、あの子達も守って行かねばならないのだ。

 気分は正に、父親だな……マジかよ、俺まだ女の子とキスすらしたことないのに。

 これ以上考えたらドツボにハマりそうな嫌な予感がしてきたので、気を取り直して目の前のことに集中。

 健脚なレキが相方なら、この廃墟の街をゾンビスルーのパルクールで駆け抜けていくのも順調だ。というか、人体実験で超人に改造済みな俺の足に普通についてこれるとか、レキの身体能力ってヤバくないか。

 そうして、何事もなく無事にダンジョンの出入り口となる魔法陣の施設へと到着。

 さて、ここでギャング共が待ち伏せしているかどうか。若干の緊張感を伴いながら、いよいよ街へと出る。

「――うぅーん、久しぶりのサンシャイニーが眩しいデス!」

「本当に街中だけ晴れているんだな」

 頭上には燦々と輝く太陽があり、雲一つない晴天が広がっている。

 しかし、それはカーラマーラという街の真上だけで、港から先は轟々と吹き荒れる砂嵐が壁のようにそそり立っていた。

 砂の大嵐を防ぐ結界とやらは、ドーム型ではなく円筒形をしているようだ。だから、街の上には晴れた空が広がっている。日光が差し込むだけで、明るさは段違い。この結界を作った奴も、そういう心理的な面を考えたのかもしれない。

 それにしても、大きな街を一つ覆うだけの結界とは、どういう魔法でどんな術式なのか。

 俺は機動実験でとりあえず黒魔法を我流で磨き上げてきたので、いわゆる魔力というエネルギーがどういった作用をするのかは感覚的に把握できている。だからこそ、この巨大な結界を構築するのがどれだけ高度なことか、何となく理解もできる。

「こういうのは、やっぱり魔道書とか読んで勉強すべきなのだろうか」

「クロノ様、早く早く! ハリー!」

 こんな出口で立ち尽くしていてもしょうがない。レキは笑顔で俺の手をとり、グイグイ引っ張ってくる。何となく、散歩に行きたくてしょうがない犬を連想してしまった。

「一応、俺達は狙われているはずだから、注意だけは忘れるな」

「変装もしてるし大丈夫デスよー」

 そりゃあ、幾らなんでも素顔丸出しで出てくるワケがない。

 俺はかつて司祭を名乗って開拓村にいた頃に利用していたという、瞳の色を変える眼鏡『カラーリングアイズ』という魔法の眼鏡をかけ、服装の方は『スラッシャーの館』から頂いてきたグレーのスーツのような服装に、帽子ハットを被っている。

 ズボンとシャツのラフな出で立ちしか見ていないギャングからすれば、パっと見では分からない程度には外観的な印象を変えている。なかなかに仕立ての良さそうなスーツと帽子から、まるで英国紳士のような姿となるが……分かってるよ、強面の俺が着れば、ただのヤクザにしか見えないってことはな。メガネをかけて高級スーツだから、インテリヤクザみたいな感じである。

「レキもフードは脱げないようにな」

「オーケー!」

 レキの方の変装は、シンプルに厚手のローブに深くフードを被って、顔を見えにくいようにしている。ちょっとあからさまでつけるかどうか悩んだが、口元を覆う布のマスクもつけている。

 魔術士の中には、詠唱を口ずさむのを見られて、発動する魔法を悟られるのを嫌う者もいるとのことで、別に風邪や花粉症でなくても、マスクをつけていてもそれほど違和感はないとのこと。

 そんなワケで、レキの変装コンセプトは、生粋の魔術士少女、ということになっている。

 どうやらこの異世界でも、魔法メインで戦う魔術士という者達は、フードを着用することがメジャーなようだ。これも『スラッシャーの館』から頂戴してきた、上質な魔術士っぽいローブをレキに着せている。

 ローブがそれらしいだけでなく、ダミーとして長杖スタッフも持たせてある。これも館産で、地下で鍵が掛けられていた武器庫から持ってきたモノだ。

 鍵のかかった地下室の扉を見て、お、これは鍵を探す展開だなと思ったら、ウルスラが「クロノ様、お願い」と言われ、腕力にものを言わせてこじ開けた。風情がないが、手っ取り早いのは確か。簡単に壊れる鍵の方が悪いということで。

 ともかく、今のレキは魔術士に見えるはずだ。これも普段の彼女の格好とは全く異なる印象を持つ服装。

 しかし、普段のレキって、シャツにホットパンツと露出の高い涼しい格好だから、ローブを被ってもらってた方が落ち着く。子供とはいえ男の目もあることだし、無自覚に色気を振りまくような真似は慎んだ方がいいだろう。

 俺だって、そういう格好のレキが全く気にならないといえば、嘘になるし。俺だって健全な男子高校生。非道な人体実験を受けて改造人間と化しているが、性欲が消えたワケではないのだ。

 だが、それを抑え込む自制心はあると信じて、魔術士ファッションのレキと手を繋いで、いよいよ街へと繰り出す。

「改めて見ると、本当にデカい街だな」

「レキも、こんなにいっぱい人がいるところは初めてデスよ」

 大迷宮への入り口となる施設にも、冒険者が集まりそれなりの賑わいはあったのだが、商店の立ち並ぶ表通りまで来れば、その比ではない混雑ぶりとなる。

 車道と歩道の分け方もあるようで、大きな表通りは四車線道路ほどの幅があり、ひっきりなしに貨物を満載した馬車や、四足歩行のドラゴンが引く竜車や、デカいトカゲのようなカエルのような、ズングリした奴が引く荷車が行きかっていた。

「アレはガマルっていうデスよ。ブサイクだけどちょっと可愛いデスよネ」

 ガマル貨車、というのが正式名称らしい。この砂漠地方特有の種なのだとか。

 そんな風に様々な荷車が通りの中央を走っているので、必然的に徒歩の者は端によることとなる。俺とレキは人の波に乗るようにして、自然に歩き続ける。

「街並みは近代的だが、マジで異世界だなぁ……」

 こうして、普通に街中を歩くと、ひしひしと実感してくる。日本では絶対にお目にかかれない、多種多様な人種。それどころか、人間と全く異なる種族の者達が、当たり前のように出歩き、それが日常の風景と化しているのだ。

 道行く人々の中には、俺が機動実験で戦ったこともある、ゴブリンやらオークやら、というような姿をした凶暴な人型モンスターとソックリな奴らもいるのだが、彼らも普通に衣服を着て歩いているし、店の中では店員として忙しなく働いている。

 一体この世界において、モンスターと人の違いってなんなのだろうか。とりあえず、モンスター的な風貌をしているからといって、いきなり魔弾を撃つのはやめよう。

「レキも初めて見た時は、モンスターだと思ったデスよ」

「シンクレア、だったか。そこは人間の国だったんだよな」

「イエス、人間だけの、ううん、人間しか認めない国だったから、他の種族の人は誰もいなかったデス」

 それが十字教の持つ恐ろしさだ。徹底した排他主義は、留まるところの知らない侵略戦争を続ける理由となっている。

 二人から聞いた話と、俺自身が経験したことを照らし合わせれば、どうやら俺はこのパンドラ大陸を征服するための尖兵として作られたらしいことが分かる。

 もし、逃げ出すことが出来ずに、あのまま実験が続いていたら……

「そういう国に住んでたのに、レキもウルスラも普通にしてるよな」

「うーん、最初はちょっと怖かったデスけど……話してみれば分かるデス。魔族と呼んでも、人間と何も違いはない。悪い人もいたけど、いい人だっていっぱいデスから!」

 旅の中で、人間と異なる種族の人々に助けられたことや、世話になったことが沢山あったとレキは話してくれた。

 人の上半身と馬の下半身を持つケンタウロスの遊牧民はみんないい人だったと。髭モジャのドワーフは怖い顔をしているけど、みんな優しくて、よくしてくれたと。

 盗賊やら奴隷商人やら、悪意を持った連中に狙われることもあったというが……それでも、人の悪い面だけに絶望せず、ちゃんと良い面を見ることのできるレキは、凄く良い子だと思う。

 いや、違うな、ここまでの経験に裏打ちされた上での主張ならば、立派に善良な一人の人間というべきだろう。子供扱いすべきではない。大人だって、彼女のような経験をしてきた者は少ないだろう。

「凄いな、レキは」

「ええっ、な、何がデスか?」

「俺はまだ、目の前のモノが全て敵になるんじゃないかと、不安ばっかりだよ」

 記憶喪失となっている俺では、あの地獄の実験施設を脱出したばかりで、右も左も分からない余所者に過ぎない。

 なまじ嫌な記憶しか残っていないせいで、不安と不信感ばかりが募る。

「ノン、クロノ様の方が凄いデス……だって、全部忘れていても、またレキ達を助けてくれた」

 そりゃあ、小さい子を人質にするという、これ以上ないほど分かりやすい悪役を見てしまったからな。それでいて、俺にはその場を解決できる力を持ち合わせていた。出来るからやった、それだけに過ぎない。

「何も覚えてないのは悲しいデス。けど、それでもまた、こうして一緒にいてくれて嬉しいデス。凄く、すっごく!」

「そうか、ありがとう。俺も、何も分からない時に、レキ達に出会えて良かったよ」

「く、クロノ様ぁ……うぅー、ぎゅーっ!」

 と、感極まったかのように、思いっきり抱き着いてくるレキ。

 そのストレートな気持ちは嬉しいけど、天下の往来でやるにはちょっと。

「あー、こういうトコで、あんまり目立つ行動はしないように」

「えへへ、ソーリー」

 全く悪気のない笑顔で言うレキは、無邪気な可愛らしさで溢れていた。思わずこっちから抱きしめてやりたくなるような魅力だが、流石に俺の方からはマズいだろうな、色々と。

 これで、もしレキが同い年だったら……などとちょっと思ってしまう俺は、不純だろうか。

 所詮、俺も普通の男だ。守らなければいけない彼女達の前では格好つけるが、本心を知られたら幻滅されそうだな。

 なんて、ちょっとネガティブなことを考えなら、レキと歩き続けるのだった。




 まず、俺達が向かったのは魔法具マジックアイテムを扱う店だ。欲しいモノは、より充実した変装用の道具。

 俺達を狙う者がいる以上、変装は必須。大嵐が過ぎるまでの潜伏生活の間でも、今回のように街へ出ることもあるだろうし、脱出する時は全員で必ず出ることにもなる。

 完全に姿を消せる、ステルス迷彩のようなモノがあれば最高だったのだが……残念ながら、そんな凄い性能の装備はそうそうないようだ。『プレデターコート』という光属性の魔法を扱える者しか使えない、透明化マントがあったくらい。しかも、かなり高かった。

「やっぱり、髪の色と目の色を誤魔化すのがせいぜいか」

「ヘイヘイ、クロノ様どうデス? 似合うデスか?」

 早速、髪と瞳の色を変えるアイテムを装着したレキが聞いてくる。

「おお、髪の色が変わったら大分印象変わるな。パっと見では分からないぞ、多分」

 輝くような金髪が、ややくすんだ灰色となり、瞳も青くなっているレキは、まるで2Pカラーのようだ。

 髪の色は『単色変化の髪留め・グレー』というシンプルなカチューシャ型の魔法具で。目の色の方は、俺がかけていた『カラーリングアイズ』を流用してみた。

「意外と眼鏡も似合うな、レキ。ちょっと新鮮で可愛いぞ」

「えへへ、で、デスかー?」

 活発な印象のレキに眼鏡ってどうかと思えば、まぁ、そもそも美少女なら何をやっても可愛いワケで。そんな子が素直に照れたりしていると、尚更に可愛かったりする。

「クロノ様も、サングラスがクールデス!」

 ありがとう、と世辞を受け取りながらも、俺はグラサンかけてさらにヤクザ感の増した自分の姿に若干、凹む。

 だがしかし、目の色だけでなく、目元そのものを隠せるサングラスが俺の変装には最も適しているアイテムだ。

 やはり俺の顔で最も特徴的なのは、この無駄に鋭すぎる目だ。いくら目の色を変えても、眼つきをみれば「コイツがクロノで間違いねぇ」と思われる可能性は高い。

 だがサングラスをかけていれば、この眼つきを隠せるので安心だ。

 髪の毛の方は、魔法具としては一番安かったワックスタイプのもので灰色に染める。印象を変えるために、前髪を全部上げてオールバックにしてみた。これも地味に、さらなるヤクザ感アップに繋がっているが、もうここまでくればどうとでもなれ。

「髪の色も同じだし、兄妹のように見えればいいんだけど」

「イェア、ブラザー!」

 レキも満更ではなさそうな反応。というワケで、今日は兄妹設定で行くか。

「変装の方はこんなもんだろう。それじゃあ、本格的な買い出しをしよう」

「まずはどこから行くデス?」

「うーん、そうだな――」

 と、地図と睨めっこしながら、ファンタジーそのものな異世界の街をレキと一緒に歩くのは、思わず今の危険な境遇を忘れてしまうほどには、楽しく感じてしまうのだった。

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― 新着の感想 ―
・・・そういえばフィオナが捕まえてきた妖精ヴィヴィアンがいるから、妖精族の固有魔法(エクストラ)で光魔法を使用してプレデターコート使えるのか。
>『プレデターコート』という光属性の魔法を扱える者しか使えない、透明化マントがあったくらい。 デスティニーランドで黒色魔力しか使えないクロノと魔法使えないシモンが2人で使ってませんでした???
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